(2)情報の整理
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世界樹の魔力が集まった存在が眷属たちということを思いついたのはいいけれど、どうすれば知的生命体といえる自ら思考する存在を作れるかは全く分からない。
そこで一気に眷属のような存在を作るのではなく、いわゆる精神体の塊といっても過言ではない精霊とは何ぞやということを考えることにした。
精霊と言われて一番身近だったのは、当然というべきか一周目の時の自分自身だった世界樹の精霊だ。
あれは世界樹の魔力そのものに俺自身の精神が宿ったことによりできた存在だと考えている。
その考えが正解だとすると、魔力そのものは魔力珠を使えばどうにかなるとして、問題になるのは精神の部分になる。
いきなり新しい精神を作り出すことができるはずもなく、思考の途中でそこが大きな壁となった。
そもそも第一世代の眷属も勝手に生まれてきていたので、俺が作り出したというわけではない。
どうすれば新しい
「――思いついた時は上手く行くと思ったんだけれどなあ……」
若干落ち込みながらリビングに移動すると、大人組が集まってこちらに注目してきた。
「あ、あれ? 今日は自由日だから何もないと思ったんだけれど、何か起こった?」
「そうじゃないわよ。ずっと部屋に引きこもっていたから心配していただけ。大丈夫だって言ったのだけれどね」
「あ、あれ? 今までもあったと思うんだけれど……心配かけて、ごめん?」
集中して考え事をすると数時間部屋に引きこもりっぱなしというのは、割とよくある事だった。
それが当然だと思っていたので今回の気にせず籠っていたのだけれど、どうやらそれが心配をかける要因になってしまったらしい。
前にも似たようなことをやっていたと思い込んでいたが、それでも心配は心配だとハロルドに言われてしまった。
特に今回はほとんど物音もさせずに考え込んでいたので、余計に心配させてしまったようだ。
考えてみれば、何か長時間悩む時には大体チームから離れて行動していた(ホームに行くなど)ので、早に籠りっぱなしというのはなかったかもしれない。
「それで、引き籠った甲斐はあったのかしら? その様子を見る限りでは、あまり芳しくはないように見えるけれど」
「アンネリ、正解。いっそのこと精霊とか宿すことができれば、なんて考えたけれどあまり意味がないことに気付いて止めておいた」
「無駄ですの? 出来たら便利だと思いますが?」
「きちんとこっちの言うことを聞くんだったらいいんだけれど、それだったらそもそも普通に精霊と契約なんなりしてしまった方が良いと思い直したんだよ」
不思議そうな顔をして聞いてきたアイリだったが、そもそもの根本的な問題を聞いて納得した様子で頷いていた。
「確かにキラ様には眷属の皆さまがいらっしゃいますからね」
「そういうこと」
アイリの言う通り、この場にいるラックやクインを始めとした眷属がいるので、なんでも(?)言うことを聞いてくれる立ち位置の存在は今更必要としていない。
ヒューマンとして生まれ変わった身で眷属という存在が作れるのかということには興味があるけれど、少なくとも魔力珠に新たに加える機能としては求めていない。
そこまで考えた時に、だとするとAIと知的思考する存在との違いは一体なんぞやということにまで考えが及んだところで思考停止してしまっていた。
そんな究極の命題に答えがあるのなら、どこかのお偉いさんがとっくに導きだしているだろう。
少なくとも俺自身で思いつけるとは思えない。
とはいえ部屋に引きこもる前に閃いた思い付きには、何かしらの答えがあるのだろうとも考えている。
それが何か分からずにモヤモヤしているのは、恐らく自分の中か外の近くに答えがあるからなのだろうと思う。
その答え探しを諦めたわけではないのだけれど、ずっと引きこもっていても仕方ないと気分転換するために外に出て来たというわけだった。
そんな言い訳めいた俺の話を聞いて、真っ先に反応したのはアンネリだった。
「そうやって一人で考え込んで思いつくのもいいところだけれど、たまには誰かに相談してみると良いと思うわよ。例えば眷属の皆さんとか」
「そうなんだよね。さっき部屋でそれを言われたから、次はちょっとホームに行ってみようかなと」
「あら。ごめんなさい。余計なアドバイスだったわね」
「いや。謝ってもらうようなことじゃないよ。むしろありがたいと思う。俺やラックたちもそう考えているよ」
俺の言葉にラックとクインが頷いたのを見て、アンネリの顔が若干ホッとした様子になっていた。
彼女の心の中で少し出しゃばり過ぎたと考えたのかもしれないが、そんなことに気を使う必要はないので、これからもどんどんとアドバイスしてほしい。
とはいえアンネリにしてもアイリにしても眷属たちに対してどこか気を使っているところがあるので、同じような関係は続くのかもしれないとも考えているが。
「そう。そう言ってもらえると嬉しいわ。――それよりもすぐにホームに行くのかしら?」
「いや? 折角、少し休む気になったからね。皆に時間があったら町に繰り出して食べ歩きなんかしようかと思って。どうかな?」
「いいわね。私は、時間はあるから行きましょう」
「私も大丈夫ですわ」
アンネリとアイリから大丈夫だと言われ、その後他の面々にも確認を取ったらすぐに了承が取れた。
時間的にはちょうどお昼を取るかどうかといった時間だったので、屋台の食べ歩きというのも悪くないだろう。
ヘディンは冒険者で成り立っている町でもあるので、他の町や村に比べて屋台が多いのも特徴だったりする。
皆とそうした屋台を巡りなら久しぶりのちょっとした休暇を楽しむことができたので、かなりいい気分転換にすることができた。
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屋台巡りを楽しんだ翌日は、アイと話をするためにホームを訪ねていた。
そこで魔力珠に追加する機能について悩んでいることを打ち明けてみた。
「――そもそもご主人様は、どんなものを作りたいのかを考えた方が良いと思う。眷属のような完全に自立した存在なのか機械的に反応するだけの存在なのか。色々な方向で考えることができるのはご主人様の良いところだけれど、広げすぎると迷いが出る」
「うーん。そうか。そもそもの目標を考えないと駄目ってことか。確かに、手を広げすぎるのも問題だよな」
「そう。それから眷属とAIの違いだけれど、単に魂があるかどうかで考えればいい」
「やっぱそれだよねえ。科学技術の発展した世界で生きて来たせいか、どうしても避けて考える傾向があるからなあ」
「
「ハハ。これは手厳しい。でも確かにその通りだね。となると結局のところ、魔力珠の活用に魂を関わらせるかどうかの問題になるというわけか。単純化して分かりやすいね」
「そう。あとは二つの方向性で考えていけばいい。そしてどっちを優先するかで時間配分をすれば、迷うことも少なくなる」
「要するに最初から分けて考えないと取っ散らかってしまうってことね」
「場合によっては混ぜて考える必要がある場面も出て来るけれど、最初から考えるとややこしくなる」
アイからのアドバイスに「なるほどね」と返した。
アイと話をしたおかげで、色々と複雑に考え過ぎていたことが纏めることができそうだ。
ついでにアイに言われた通り、魂のある場合とない場合に分けてしっかり紙か何かに書き記して分類しておくと分かりやすくなるかもしれない。
そう考えた俺は、早速ホームに用意されている執務室で色々考えて来た情報を整理するのであった。
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普段は出来ているのに時々(?)迷子になる主人公でした。
是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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