閑話15 大事な話し合い?

§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§




 < Side:第三者(神視点) >

 

 プレイヤーが集が『広場』には、かつて彼らが生活していた日本を思わせるような施設が幾つかある。

 それらは、プレイヤーの趣味趣向によって提案されたモノを生産組が組み立てていったものになる。

 多くの建物は魔石の支払いによってダンジョンマスターたちが建てているが、中には一から作り上げた建築物もある。

 プレイヤーの過去を思い願う強さのためなのか、通常ではありえないほどの速度でそうした建物は作られている。

 それもこれもスキルという恩恵がある世界だからなのだが、一応こちらの世界でもパッとスキルを取得してパッと技術が使えるようになるわけではない。

 それなりの基礎があって初めて使えるようになるので、やはりプレイヤーの努力は凄まじいものがあると言えるのかもしれない。……たとえそれが自分たちの趣味趣向を満たすためのものであるとはいえ。

 

 プレイヤーがそれぞれの拠点としている建物のうち、ダンジョンマスターが用意したものは基本的に統一された建物となっている。

 それらの建物は、世界観に合うように大体が現代日本の一軒家的な建築様式で作られていて一つの区画に纏めて建てられている。

 プレイヤーの数は減ることはあっても増えることはないので、建物自体が大きくなることはあっても数が増えることはない。

 そのため一度決まった区画が広がることは滅多になく、プレイヤーの拠点となっている建物は広場の中で中央と呼ばれる場所にまとめられている。

 

 そして、便宜上中央区と呼ばれているのがプレイヤー拠点の集まりだとすると、その外側はさらに様々なものが用意されていた。

 農業系プレイヤーが用意している畑や畜産関係の場所は勿論のこと、広場が作られた当初から存在している温泉地区、そして建築系プレイヤーが建築訓練地区と称して様々な建物を作っている場所まで。

 最後の建築訓練地区では、日本家屋から西欧風、果ては東南アジア系から中東まで、統一された基準など全くない状態で色々と建てられているので見た目にはカオスな状態になっている。

 あくまでも訓練として建てられているので実際に使われている建屋は少なく、むしろ建築と解体が繰り返されているような状態だったりする。

 

 そんな建築訓練地区と中央を挟んで正反対の位置には、プレイヤーたちが何かしらの目的で使われる建物が幾つか建てられている多目的区域と呼ばれる場所がある。

 プレイヤーが以前生活していた日本でいえば、公民館的な場所といえばいいだろうか。

 幾人かのプレイヤーが集まって話し合いをしたり、レクレーション的な目的で使われている場所になる。

 プレイヤーはそこに集まって、かつて生活していた日本で行われていた様々な遊びに興じて普段の生活の疲れを癒していたりする。

 

 そんな多目的区域の中には、神社を模した建物が幾つか建てられている。

 その建物の一つで、十名ほどのプレイヤーが集まって話し合いが行われていた。

 集まっているプレイヤーに共通しているのは、何かしらの生産技術を持っているということ。

 要するに、生産職たちが技術の向上のためという目的で集まって話し合いがされているのである。

 

「――キラやエレンが魔力珠を作れるようになってしばらく経つが、他に同じようなものを作れたプレイヤーはいるか?」

 集まったプレイヤーの中で一番に声を発したのは、今回の会の発起人である鍛冶師のハルだった。

「残念ながら私はまだ。キラさんにも色々と助言をもらっているのだけれどね。やっぱりマナを扱うというのが皆目見当もつかないわ」

「だよなー。そもそもマナという存在自体ほとんど知られていないから調べようがない」

 魔道具士であるアリサに続いて同意したのは、錬金術師であるサンドだった。

 その二人に続いて、他に集まったプレイヤーも似たり寄ったりのことを発言し出した。

 それらの言葉に共通しているのは、魔力珠や精霊珠に代わるような魔道具は未だに作れていないということだった。

 

「そもそもの話、キラのところのダンジョンマスターが魔力珠の元となるものを作ったということだが、ラッシュは駄目なのか?」

「全くダメだね。そもそも龍の身体だとちまちまとした作業が難しい……らしい」

「種族の差か。いや土竜モグラが細かい作業が得意という話も聞いたことはないがな」

「あっちはなあ。そもそも数百年単位で魔法を開発したとか言っていたから、努力の成果もあるんじゃないか」

「……そうか。キラが二周目で一周目から五百年以上経っているということを忘れていたな」

「キラからは、魔力操作を頑張ればなんとかなると言われているが、それが一番の難関だからな」


 龍なダンジョンマスターであるラッシュの言葉に、ほとんどの者が頷いていた。

 キラが同じサーバー内にいるプレイヤーの中で一番魔力操作に長けていて、それに及ぶ者がいないというのは皆が知るところなのだ。

 魔力操作という言葉だけで聞くと簡単そうに思えるが、実際のところはそうそう簡単にマスターできるような技術ではない。

 というよりもキラでさえ「まだまだやることは沢山ある」と言っているくらいだったりする。

 

「魔力操作が重要ということは以前から分かっていたからいいとして、問題はどうやって直接マナに働きかけるかということか」

「ダンジョンマスターや爵位持ちはそれこそシステム的に勝手にマナを扱っているが、それは自由に使えているわけではないと」

「もう一つ付け加えるとすれば、キラから聞いた話だと例の土竜なダンジョンマスターは、複数のダンジョンは扱っていないようだ。敢えて扱っていないということも考えられるが、キラの話ではそうではないだろう」

「それがなにか?」

「俺たちの感覚からすれば、爵位持ちでいうところの格下なんだよな。その土竜。だとするとダンジョンの格が問題になっているというわけではなさそうだ」

「そういうこと。とすると爵位持ちも同じことが言える……かもしれないね。キラさんが作れたとなると、分体生成ができるようになればいい、とか?」

「それもあるが、そもそもマナとは何ぞやという問題が解決しないと駄目だと思うがな」

「キラやエレンだってそんなこと知らずに作れたんだから関係ないんじゃないかな?」

「そうだな。理屈から入りたいということは理解するが、そこは重要じゃないだろう」


 等々。その後もしばらくの間、様々な意見が飛び交い続けた。

 結局のところ明確な答えは出ないまま会の最後を迎えるのだが、参加者たちは特にガッカリした様子はなかった。

 そもそも会の目的は生産に関する話をして今後に役立てようということなので、結果を出すことが目的ではなく話をすること自体が目的なのである。

 常に結果だけを求められる現代日本ではありえないことだが、プレイヤーは個人個人に責任があるので別にまとまりとしての結果は必要としていない。

 

 とにかくこうした会は生産者たちに限らずたびたび開かれていて、主にプレイヤーたちのストレス発散に役立っていたりする。

 それを無駄とするか、必要なことだと考えるかは、それこそ個人個人で考えるべきことだろう。

 そうした考えがこのサーバーでは根付いているので、特に文句の声を上げるプレイヤーもなく、途切れることなく様々な趣向の下で集まって話し合いが行われているのであった。




§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§


※これにて第15章は終わりです。

第16章開始は二日空けて3/2からの更新になります。


是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る