(2)ご挨拶と依頼
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結局ダークエルフを交えた初の合同探索は、二十三層まで行ったところで戻ることになった。
さらに奥に進む余裕もあったのだけれど、そこまで無理に行く必要もないだろうという話になったためだ。
それにダークエルフたちが、初めての探索だったので町に戻って色々と整理をしたいと言ってきたということもある。
それまでは言われるがままに進んでいた彼らが主張してきたことだったので、それを受け入れたというわけだ。
彼らにしてみれば初めて多種族と組んでのダンジョン探索だったわけで、一気に進むよりも重要だろうと判断した。
そもそも既に探索で得られた素材を中心にして十分すぎるほどの稼ぎは得ているので、無理をする必要がないということも大きい。
それもこれも戦闘以外のことをこなすサポーターという存在が日に日に大きくなっているお陰で、それもまたクランにとっては大きな収穫だと言える。
サポーターの動きについては『朝霧の梟』の面々も驚いていたほどで、相互交流させるためにも後々ヘディンでの探索も行う必要があるだろうと考えている。
ダンジョンで手に入れた採取物に関しては、代表者がギルドで換金することになっている。
ただし今回は初めて第二十三層に着いたメンバーもいるので、その人たちはギルドの情報を更新するために出向く必要があった。
当然来たばかりの四人のダークエルフたちも同じで、彼らの発行したばかりのカードにはマキムクダンジョンの攻略情報が載せられることとなった。
ちなみにギルドカードに載せられる情報というのは、あくまでも代表的なものですべてが表示されるわけではない。
情報の数が増えてくれば内部に記録されているものが増えてきて、表で確認できるのは一部ということになる。
表で見ることができる情報も本人の希望が優先されるため、当人にとって必要なものしか表示されない。
そんな高度な技術がいつどうやって開発されたのか気になるところだけれど、これに関しては運営が関わっていると睨んでいる。
一応歴史的には、過去の遺物を掘り出してネットワークが作られていると言われているが、本当のところは怪しいところだ。
そんな怪しさ満載の冒険者ギルドにある魔道具の話は置いておくとして、ダンジョンから戻った俺はいつもの眷属だけを連れてルファの所へ向かった。
今後は第三十層を目指すことになり、もしかするとルファの生活圏に入り込む可能性があると考えてのことだ。
ただし会ってからそのことを話すと、好きにするといいという答えが笑いと共に返ってきた。
今のマキムクダンジョンは俺が知る階層よりもさらに深く作られているようで、五十層を超えてもルファの生活圏には入らないらしい。
「――まあ、ぶっちゃけると第六十層以降は眷属たちの住処になっているんじゃが」
「あら。それは言っちゃうんだ」
「お主相手に隠したところで意味はないじゃろう?」
飄々とした顔のまま出されたお茶を口に含んでからそう返してきたのは、マキムクダンジョンの主であるルファだ。
ちなみにこのお茶を出したのはルファの眷属の一人で、何故か執事・侍女的なスキルを持っているらしい。
執事と侍女で性別が一致していないのは、単に性別が固定される種族ではないからだ。
敢えて詳しくは聞かなかったけれど、必要となれば性別を選べるようになるらしくスライムのような存在なのかもしれない。
どの種族にしてもルファが傍に置いている以上は信頼されていることの証となるので、こちらとしてはそれ以上の情報は必要ない。
「ところで、ダンジョンの攻略は望むところとして、お主に少し手伝ってもらいたいことがあるんじゃが?」
「はて? 今の自分に出来ることなど少ないと思うんですがね?」
「何を言う。お主はいるだけでユグホウラを動かせるであろう。ただまあ、今回はそっちではなくお主自身の力を借りたいのだがの」
「おや。どういうこと?」
「何、そんなに難しいことではない。私の眷属たちと少しばかり戦ってほしいだけじゃ」
「……俺に死ねと?」
「何故にそうなる。それに前に会った時と違って、今のお主はそうそう簡単に倒れぬであろう?」
流石のダンジョンマスターというべきか、ルファはしっかりと俺が地脈の力を使えるようになっていることに気が付いているらしい。
魔物でも地脈の力を使えるようになる存在はほとんどいない……というよりも以前の生でも会ったことはなかった。
それでも人族を大幅に上回る力を持つことができるのが魔物ではあるのだけれど、どちらかといえばそれは
主が強くなるからこそもらえる魔力が強化されて、それに伴って眷属たちもより強くなっていくと。
あとは進化の存在も大きいとは思うが、それもやはり主自身が強くならないと意味がないことではある。
もっとも主の強さというのも単に戦闘力だけではなく、他の要素が色々と絡んでくるのだけれど。
それはともかく、ルファに今の俺の状態を隠しても意味がないことは分かっているので、素直に頷いた。
「そうかも知れないけれど……手加減した状態でそちらが戦ってもあまり意味がないのでは?」
「そんなことはない。昔のお主を知る者はいいのだが……のちに生まれた者の中には増長する者も出ていておっての」
「おっとそれはまた……」
順調そうに見えるマキムクダンジョンの運営も、あまりよくない傾向が出ているようだった。
もっとも周りに敵らしい敵がいないともなれば、そういう輩が出て来るのも分からなくはない。
……のだけれど、少し疑問が湧かなったわけではない。
「ここにはたまに眷属たちが来ているって聞いたけれど?」
「うむ。その通りなのだが、どうもそういう奴らに限って都合のいい考え方をするようでな。『ユグホウラは別』という考えが当たり前になっているらしい」
「ああ~。なるほど。それはルファがいくら言っても聞かないわけだ」
「そういうことだ。今のお主は一応ユグホウラの一員ではあるが、ヒューマンでもある。できる限り目を覚まさせてやって欲しいの」
「言いたいことは分かったからやるだけやってみるけれど……どこまで上手く行くかは分からないよ?」
「気にするな。後のフォローはこっちでやっておく」
微妙に話がずれている気がしたが、ここで訂正しても意味がないことは分かっていたので素直に頷いておいた。
こちらとしては上手く戦えるか分からないという言意味で言ったのだけれど、ルファはへこませすぎる可能性を見越してのフォローという意味で言っていた。
それだけこちらの実力があると見込んでくれているのは嬉しい限りのだが、信頼が重すぎると思わなくもない。
ヒューマンに転生したが故の弱さも当然あるのだけれど……と思ってみても、恐らくそんなことは承知の上で言っているのだと理解することにした。
「まあ、いいか。ところで、こちらの仲間に見学させても?」
「ほう。いいのか? こちらは全く構わないが」
「別に実力を完全に隠しているわけじゃないからね。というよりも、見せてもいいメンバーしか連れてこないつもりだし」
「なるほどの。どちらにしてもこちらは構わないぞ。愚か者に変な手出しをしないようにもしておこう」
しっかりと護衛を付けてくれる約束までしてもらったので、あとは話が早かった。
一両日中には連絡をするというルファからのお言葉を頂いて、あっさりと話が決まってしまった。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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