第13章

(1)新規加入

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 魔道具関連はすぐに出来るわけではないので、話をした次の日にはダークエルフたちを伴ってマキムクの拠点に向かった。

 ダークエルフは取引をするため日常的に転移装置を利用しているので、特に驚くことなく普通に使っていた。

 ただしここまでの長距離移動は初めてだったので、その点は感心していたが。

 移動に関しては誰からも驚かれることはなかったのだが、ちょっとした騒ぎになったのはダークエルフを連れて来たことだった。

 エルフ種というのは、ヒューマンに比べてさほど数は多くない。

 前の世界のイメージ通りに一か所に引きこもっているということもあるのだけれど、そもそも多種族と交流するということを積極的にしていないためだ。

 とにかくそんな種族であるために、大きな町であっても見かけるのは数人ということも珍しくない。

 そんな種族の片割れであるダークエルフをいきなり四人、しかも今後も継続的に連れて来ると話して驚かれるのは当然のことかもしれない。

 

 とはいえ冒険者をやっていれば数の少ない多種族に会うことも珍しくはないので、拒否感があったというわけではなくすぐに受け入れられていた。

 ちなみにアーロたちには、俺はユグホウラと繋がりのあるというふんわりとした関係がある知人とするように伝えている。

 正直なところ世界樹の精霊が転生したヒューマンとして知られても構わなくなっているのだけれど、そこは濁したままでいこうと考えている。

 どこかの勘違いした権力者(?)辺りが、転生の秘術を求めてやって来るなんて事態になるのは面倒でしかない。

 

 転生の秘術なんてものは知らないのだけれど、そういうモノを求める者たちはこちらが何を言っても話が通じないことが多い(偏見?)。

 ましてやプレイヤーと運営の関係性の話を持ち出したところで、信じてくれる可能性は皆無だろう。

 というわけで、元世界樹の精霊であるなんてことを表に出すつもりはなく、信じてもらえそうな相手にだけ小出ししていく予定だ。

 いつかどこかで転生していることが広まるかも知れないけれど、場当たり的だと言われてもいいので、その時はその時に対応していく。

 

 とにかく転生云々の話は控えつつダークエルフ四人組を紹介して、その日は終わった。

 アーロたちはもともとセプトやノースに行ったことがあるらしく、里の外の町には慣れていたのでそこまで驚きはしなかったらしい。

 それでもマキムクは御家の一つのお膝元の町であるために規模が大きいので、そのことには驚いていたが。

 それに加えて冒険者ギルドで登録した際に、話を聞いたダンジョンの違いにも驚いてはいた。

 

 まずは新しいダンジョンに慣れてもらうことも含めて、浅層といわれる第十層までは四人だけで潜って貰った。

 彼らの実力であれば第十層に出て来る敵は余裕をもって倒せるはずなので、新しいダンジョンに慣れてもらうためにはちょうどいい。

 それでも、やはり全然違う雰囲気に戸惑ったりしていたが。

 さらに一週間ほどで第十層までをクリアしたという報告を受けたので、次は今いるメンバー全員で長期探索を行うことにした。

 

 そして第十層はとっくに超えて、現在の階層は第十五層まで来ていた。

 馬車を使っての遠征で、今は御者台の隣に『朝霧の梟』のカールが座っている。

「――やっぱり前衛が増えると安定感が違うね」

「前衛だけだと詰むけどな」

「この辺りならまだ大丈夫じゃないかな? でもまあ、何だかんだレベルが高いからだろうけれど」

「それは思うな。よくもまあ、こんな人材見つけて来るよ」

「たまたま話の流れでそうなったんだけれどね。当人たちもやる気が出ているみたいでよかった」

「あれで張り切りすぎじゃないところがな。確実に俺よりも強いんじゃないか? 自信なくすぜ」

 ヘディンでは若手有望株の一人として知られているカールだけに、アーロたちの実力も気になるようだった。

 

 アーロたちの戦いを見て感心するカールの一方で、その隣に座っているエルゼが別のことを言いだした。

「私としては弓を使っていないほうが気になるわね。魔法のレベルも高いし」

「弓に関してはあれじゃないかな。単に彼らの住んでいる里だと色々な武器が手に入るから。外との交易もやっているから色々な種類の装備が手に入るんだよね」

「そういうことね。魔法については……それこそ魔法種族といわれる面目躍如というところかしら」

「そうなのかな? ヒューマンよりは適正が高いらしいけれど、どちらかといえばちゃんと使えるように訓練していることのほうが大きいんじゃない?」

「それはそうよ。そうじゃなかったら私たちの立場がないわ」

 いかに魔法適正が高い種族であってもきちんとした研鑽を積まないと、しっかりと訓練している本職には勝つことは出来ない。

 それは、エルフ種とヒューマンという関係性においても同じことが言えるようだった。

 もっともエルフ種の場合は、魔法適正が高いというよりもその長い寿命で経験と知識を補っているだけという見方もあるようだが。

 

「あれだけ連携ができているんだったら、俺たちと絡んでも大丈夫そうだな。次からは行くか?」

「それは任せるけれど……どっちがいいと思う?」

「この辺りから徐々に慣れていって、二十層を超えるのもありだろう。この分だと数日もかからずに行けそうだしな」

「そうか。だったらそう伝えようか。馬車を守りながらになるのは……今更か」

 マキムクダンジョンの第十五層からは、ほとんどの魔物が群れを作って攻撃してくるので、より意識して馬車を守る必要がある。

 とはいえこれまでも慣れてもらうために馬車は常に意識してもらっていたので、今更というカールの言葉はただしい。

「それはいいとして、お前は出ないのか?」

「出てもいいけれど……必要ある? ダークエルフたちは俺の戦い方を知っているから、今さら見せる必要はない……というか、ついこの間も一緒に潜ったからね」

「そうなのか。そう考えるとむしろ必要になるのは俺たちになりそうだな。――まあ、何とかなるか」


 少し考えるような表情になったカールだったけれど、すぐに大丈夫かと頭を切り替えたようだった。

 俺の基本的な戦い方は、皆が戦っているところの邪魔にならないように魔法を使うか、出オチで使うかだけなので、そもそも連携が必要にならない場面が多い。

 連携が必要になる時というのは、今まで見たことのないような強い魔物が出てきた時なのであまり連携をする必要がないともいえる。

 さらにいえば地脈の力を得てさらに枝根動可が強くなっているために出オチで縛れない相手が出てきた時というのは、とても彼らだけでは倒せる相手ではなかったりする。

 

 いずれにしても俺自身が本気を出してしまうと訓練にすらならなくなるので、余程のことが無い限りは手を出すことはない。

 ダンジョンを甘く見ていると思われるかもしれないけれど、それだけこの世界の人族の戦闘能力が低いということの証左でもある。

 今のメンバーだとマキムクダンジョンだと三十層後半に行ければ良い方で、世界最高クラスで見ても四十層前半に踏み込めるくらいだろう。

 逆にいえば今いるメンバーがそれだけ強いともいえるのだけれど。

 

 とにかく今は身近にいる者たちの成長を助けることが目的の一つなので、彼らには頑張ってもらいたいところ。

 これは各プレイヤーに共通した課題でもあるので、どうにかして全体で技術のブレイクスルーができないかと試行錯誤している最中だ。

 ただあまりに焦り過ぎるとなくすのが仲間の命ということになりかねないので、その辺りは油断するつもりはない。

 そういう意味では緊張感のあるダンジョン探索なので、気を抜けないことには違いない。




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m(__)m

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