(10)色々依頼

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 長の選定の元で選ばれたダークエルフを連れてマキムクに向かう……前に、とある相談をしたくて研究室に籠っているアイを訪ねた。

「――呼んでくれれば行ったのに」

「たまにはここで話をするのもいいかと思ってね。わざとラックとかには言わないようにお願いしておいたんだ」

「ご主人様らしい」

 諦めたようにため息を吐いたアイだったが、特に怒った様子はなかった。

 一周目の時も、こうしていきなり研究室を訪ねるということをしていたので慣れているのだ。

「それでちょっと魔道具関連で相談があってきたんだけれどね」

「聞く」


 アイにとって俺が提案する魔道具は興味深いのか、いつも楽しそうに話を聞いてくれる。

 それは今回も同じだったのか、身を乗り出すようにしていた。

 ただし話を聞き終わったアイは、若干呆れた様子で首を左右に振っていた。

 ただの思い付きだったので出来るかどうかわからずに話したのだけれど、どうやらかなり無茶な要求だったらしい。

 

「――どうかな? 出来るかどうかは別にして、チャレンジし甲斐はあると思うんだけれどね」

「考えたことはなかったけれど、確かにやってみる価値はあると思う。あとを参考すればどうにかできるかも」

 アイの種族は大まかに括れば人形族なので、俺が頼んだ『無茶』も確かにクリアできるかもしれない。

「なるほどね。とりあえずやってみて。それでできなかったとしても別に構わないから」


 俺の言葉に、アイも分かったと頷いた。

 今回アイに頼んだのは、アバターのように魂を移して稼働できる人形のようなものの作成だった。

 本来の肉体は別の場所で保管なり保存なりをしておいて、人形のような体で動き回ることができないかと思いついたのだ。

 できる限り人の身体に近い人形の身体で動き回っておいて、いざという時にやられることがあっても魂だけ逃げて本題に戻るようにするわけだ。

 

 何故そんなことを思いついたかといえば、単に不意打ちなどで死んでしまうことを防ぐだけではなく、地脈の魔力を扱うためにやりやすい体になるためだった。

 人族――特にヒューマン(?)――の身体だと膨大な地脈の魔力に耐えきれなくなることは、今までの訓練でなんとなくわかっている。

 地脈の魔力に耐えることができる体を得るためにどうすればいいのかを考えた結果、アイにアバター的な体を作ってもらえないかと思いついた。

 当然ながらかなりの無茶を言っていることは理解しているので、ゆっくりと研究してくれればいいと考えている。――たとえ今世に間に合わなかったとしても。

 

「一応確認だけれど、表面はヒューマンに近い方がいい?」

「というかそれが条件かな。そうじゃなかったら、今のままで動き回っても構わないんだし。やっぱり難しいよね」

「表面だけを人に近づけるのはそこまで難しくはない。それよりも魂を入れるための器を作るほうが難しい。そこから各器官に命令を出せるようにすることも」

「あら、そうなんだ。かなり無茶なことを言っていることは自覚しているから慌てなくてもいいよ。ちゃんと次点の方法も考えているから」

「次点の方法?」

「そう。肉体を変えるのが無理なら、外でそれを補えるようにすればいいんじゃないかなってね」


 地脈の魔力が多すぎて肉体が耐えられないのであれば、それを外に貯めて使えるようにすればいい――というのが二つ目の考えた方法だった。

 何故これが二番目かといえば、今のままの肉体だと本体がやられてしまえば幾ら膨大な魔力があっても意味がないからだ。

 魔力を外に貯めておく方法は、幾つか思いてついていることがある。

 まず最初にパッと思いついたのは、水晶的な球体の何かにため込んでおいてそれを使う方法になる。

 それを複数用意して魔力を使う時には体の周辺に浮かべておけばいい――というどこかで見たことのあるような光景が浮かんだ。

 

「それって、要は魔石では?」

「あっ、そうか。地脈の魔力を貯めることだけに集中していたから思いつかなかったけれど、確かに魔石だね。ただ簡単に取り出して使えるというのが違っているけれど」

「補助なしに魔石から魔力を取り出して使うのは難しい」

「そういうこと。それに対して地脈の魔力を貯めておく方法は、一度自分用にカスタマイズされているからね。使いやすい……はず」


 これもまだまだ構想段階で実際にやってみないと分からないけれど、魔石をそのまま使おうとするよりは上手く行くという確信がある。

 さらに魔力を貯めておくための魔道具を使い捨てにしなければ、いつでも補充可能な蓄電池的な存在になることも大きいだろう。

 魔石は使い捨てのアイテムなので、もしサブ電源ならぬサブ魔力的な扱いで持ち歩くとするとかなりの数を用意しないといけなくなる。

 それに対して今思いついているのはいつでも畜魔力(?)出来るので、そこまで多くの数を持ち歩かなくても済むという利点もある。

 

「そっちは作らなくてもいいの?」

「任せるけれど、たまには自分でも試してみようかなって思ってね。他のプレイヤーにも頼んでみるつもりだし」

「子眷属に頼んでもいい?」

「それは構わないけれど、忙しいんじゃないの?」

「心配ない。それに私がいなくても新しい道具の開発は続けていたから」

「そう。余裕がならやってもらっても構わないよ。無理だけはさせないように」


 一応念を押しておくと、アイはすぐに「わかった」と頷いていた。

 俺からの「お願い」だと時に無茶をする眷属たちだが、この辺りの機微はアイが一番理解してくれるので心配はしていない。

 それよりも自分自身と子眷属、そして他のプレイヤーに頼んでできた魔道具がどういう形になって出来上がるか楽しみでもある。

 どうせだったら三者三様で、それぞれ違った形になって出来上がるのも面白いと思う。

 

 ――なんてことを今のところは妄想してみるけれど、どうなるかは分からない。

 どちらにしても二つ目の案についてはそこまで時間がかからずにできそうなので、楽しみに待つことにした。

 

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 広場に行って魔道具作成のスキルを持っているプレイヤーに話をするとすぐに「面白そうだ(ね)」と食いついてきた。

 一応『地脈に触れる』ことはクリアしているプレイヤーなので、問題なく意図は理解してくれた。

 眷属たちよりも漫画やら書籍からのイメージは共有できてやすいので、もしかすると出来上がるものは被るかも知れないが、それはそれでいいと考えている。

 魔道具作成に関しては俺自身がまだまだ未熟なので、プロの彼らがどういうものを作るかも興味深いところだ。

 

 そんなこんなで広場から戻ってホームで一泊したあとは、予定通りにダークエルフを連れてマキムクの拠点に向かった。

 今回連れて来たダークエルフは、最初にダンジョン探索を一緒に行ったアーロたちになった。

 この四人になったのは何となく長の意図を感じたけれど、少なくとも実力的には全く問題ないので有難く引き受けた。

 彼(彼女)らの行動次第で今後どうなるかが決まるので、是非とも色々なものを吸収してほしいと考えている。

 

 そしてアーロたちを連れてマキムクの拠点に着くと、いきなりダークエルフを連れて来たのを見て驚かれることになった。

 アンネリも最初は驚ていたけれど、すぐに納得した顔になっていたのは以前一緒に里を訪ねたことがあるだろう。

 ちなみにマキムクでは、ダークエルフ自体はそこまで珍しい存在ではなく、ただ単に俺がいきなり連れて来たことに驚いたとのことだった。




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m(__)m

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