(2)訓練の続きと再会
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人族や魔物などが使っている魔力を血液に例えると、体の中を循環させるための技術が魔力操作ということになる。
魔力も血流のように不具合(病気)になれば滞るし、悪化すると止まることもある。
それを治癒する方法もあるのだけれど、それはまた別の話になるので今回は割愛する。
体内を循環している魔力は自分自身のものなので、普通に生きているだけだと決まった状態で巡っている。
魔法を使う場合には、その循環を早めたりしてから魔力を変化させて魔法という現象を表に起こす。
魔法を使う際に魔力を変化させる部分を無意識化で行っているわけだが、これができないと魔法の才能がないと言われたりする。
もっとも生きていくのに魔法が必須のこの世界では、意識のしないところで魔力の変化を起こしているので絶対に出来ないというわけではない。
才能云々は、あくまでも職業魔法使いとして生きていくうえでの力が足りないということになる。
それで、地脈の訓練で問題になって来るのは一番大事な「魔力の変化」を起こすという部分。
自分の魔力であれば当たり前のように出来るのだけれど、生の地脈の力を使うとそう上手くはいかない。
これは何度か地脈に触れていて分かったことだが、どうも地脈はより根源的な力に感じられる。
感覚的な問題なので言葉にするのは難しいのだけれど、どんな生物にも適応できるようになっている魔力というべきか……。
魔物も含めて魔力が個々で違っているというのは周知の事実ではあるが、それは基本的に他人の魔力は混ざらないということに基づいている。
ただし世界樹の下にいる眷属たちのように、契約や生まれでそのものの魔力を流用(?)して生きている生物もいる。
地脈に魔力はそうした様々な魔力の元になっているようなもので、変化させればどの生物であっても利用できるようになっている……と思われる。
ここではっきり言えないのは、未だにその『変化』の部分が上手く行っていないから。
というわけで、訓練のメインはその変化を上手くできるようにすることになる。
初めて地脈に触れてからアンネリやアイリを始めとして、魔法を使うことを職業としている人たちから魔力量が変わったと言われるようになった。
それは明らかに地脈に触れたからで、その原因は地脈の魔力を体内に取り込んだと考えている。
地脈の魔力を変化させることができると考えているのは、そのことがあるからだ。
もし地脈の魔力を変化させることができないのであれば、自分自身の魔力が増えるなんて現象は起こるわけがない。
今体内にある魔力は間違いなく自分自身のもので、それは地脈に触れた時に取り込んだ魔力が変化したということになる。
だからこそ地脈の魔力は変化させることができると考えているわけだが、そうそう上手くはいかないということだ。
いっそのこと変化させることなくそのまま魔法としての現象を起こそうとしたこともあるが、これも上手くはいかなかった。
「まさか変化させることができないなんてことは――ない、と思いたいけれどねえ……」
正直なところ地脈の魔力が体の中で変化したということも、あくまで予想でしかないので絶対に合っているという保証はない。
「いっそのことそれだけでも誰かに確認できれば……いや待てよ。思い当る存在が一人だけいるか。答えがもらえるかどうかは分からないけれど」
運営はこの世界を生きていくためのヒントのようなものさえもらえない中々もらえないことは周知の事実なので、最初から除外している。
そうなってくると地脈の魔力について知っていそうな存在は限られてくる――というよりも、一人(?)しか知らない。
何しろ地脈に触れることで会えた存在なので、恐らくある程度の答えも持っているはずだと考えられる。
勿論その存在とは、妙に機械的な声で話しかけて来るガイアのことだ。
どうにもお堅い印象があって答えがもらえるかは分からないけれど、試しに聞いてみるくらいはいいだろう。……そもそも会うことができるかどうかは別にして。
問題があるとすれば、ガイアが会ってくれるかどうかなんだけれど……こればかりは行ってみないとわからない。
ガイアに会いに行く方法は今のところ一つしか知らないので、それで試してみる。
それが駄目ならお手上げになるけれど、何もしないで今の状態を続けるのも時間の無駄だと思えてきた。
折角ヒントになりそうな足掛かりがあるのだから、試してみようという気になってきた。
――というわけで、早速試してみようと世界樹の下へ。
今の世界樹の根元には、以前使った簡易宿舎が設置されたままになっている。
どうせまた同じように根元で寝たままの状態になることもあるだろうと眷属たちが考えた結果、残されたままになっている。
勿論残されたままというだけではなく、いずれ俺が使うかもしれないということでいつの間にか装飾もされているところが眷属たちらしいというべきだろう。
護衛代わりの眷属たちに少し世界樹に戻ることを告げてから簡易宿舎に入った。
この辺りは眷属たちも慣れたもので、どれくらいの期間かだけ聞いてきた。
正直なところどれくらいの時間がかかるのか分からないのでそのまま素直に話すと、眷属たちも納得した様子で頷いていた。
もし長引くようであれば、ラックか女性陣の誰かがアンネリたちに伝えに行ってくれるだろう。
全ての準備を整えたので、簡易宿舎に入ったあとは心置きなくベッドの上に寝ころんで世界樹の中に入った。
この作業自体は慣れたものなので、スムーズに入ることができた。
後は世界樹から直接地脈のところにまで行けばいい……はずなのだけれど、これで駄目なら計画が無駄になってしまう。
また一から考え直す必要があるのだけれど、幸いその心配は杞憂に終わった。
『接触確認』
「おー。良かった。ちゃんと会えましたね」
『世界樹、可能』
世界樹からなら会うことが可能ということかな?
何か前に会った時よりも機械語(?)的な話し方がより顕著になっている気もするけれど、そこは気にしても仕方ないだろう。
「幾つか聞きたいことが会ってきたんだけれど、答えはもらえますか?」
『敬語、不要。質問、可』
「あー。敬語についてはわかり……わかったよ。それで質問だけれど、こうやって世界樹を通ってこないままに地脈の力を人族用に変化するって可能なのかな?」
『可能。修練必要』
そこからさらにどんな訓練が必要なのかと来てみたけれど、個人個人によって感覚は違うから分からないというありがたいお言葉を頂いた。
少なくとも変化することは出来ることが分かったので、それで良しとしよう。
さらについでとばかりに、歪みについても幾つか聞いてみた。
ただしガイアであっても答えられないことはあるようで、それらの問いについてはしっかりと『不可』とだけ返ってきた。
結局ガイアへの問いで分かったことは、これまで推測の状態だったことがほぼ確定になったということくらいだろうか。
ガイアが答えられないのか、もしくは答えを知らないのかまでは分からなかったが、何かしらの制約がありそうな感じは受けた。
その制約がガイア自らかけているのか、あるいは運営の関与があるのかは分からなかったが、特に知る必要もないかと考えている。
あとは今回の件でなんとなくガイアとの仲が良くなった気がするので、それは良かったことだと思っている。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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