(3)マキムクダンジョンの様子
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
サカイの港町からマキムクへは陸路で向かう。
港に入ると大勢の町人が集まっていたけれど、これはサカイがいかに大きな港であったとしてもユグホウラの船が来ることが珍しいからだった。
船から降りて来た俺たちを見て多くの人々の注目が集まっていたけれど、その視線は驚きというよりは戸惑いのほうが大きいような感じを受けた。
基本的にユグホウラが多くの魔物の眷属で構成されていることは知られており、獣人よりも魔物要素(見た目)の少ない人族だったことがその要因になっているのだろう。
実際にはラックとクインという魔物もいるのだけれど、彼らの見た目は完全に人族のものなので余程感覚の鋭い者でない限りは眷属だとは分からないはずだ。
集まった人々の中には、もしかするとユグホウラの品々を売ってくれるのではないかと期待している商人も混ざっていたが、当然そうした品物は積んでいない。
まさか『大樹の頂』のメンバーだけを乗せるためだけに、これほど大きな船を動かしているとは誰も考えないはずだ。
敢えて訂正するつもりもないので、彼らにはできる限り誤解したままでいて欲しいと思う。
サカイでは特に何も起こらずに、そのままマキムクへと向かった。
マキムクへの道中では魔物に襲われたりもしたけれど、特に問題なく処理しつつ先へと進んだ。
ここで一つ嬉しいことがあったとすれば、その戦闘時に子供たちが積極的に参戦することができたということだろうか。
これから向かう予定のマキムクダンジョンで攻略を進めると知っているからか、皆が子供たちをサポートして動けていたと思う。
少し急ぎめで歩いたお陰か、マキムクには陽が沈む前には到着できていた。
宿を探して取ることもできたので、予定としては順調に進んだといえる。
明日以降はダンジョンの情報も含めて、ゆっくり町の中を歩き回るつもりでいる。
マキムクに到着したその日は、宿で出される夕飯を食べてからそのまま就寝となった。
そして次の日は、予定通りにまずはギルドに向かってダンジョンの情報を購入した。
ダンジョンが近くにあるギルドでは、ある程度集まった情報が売られている。
始めて来た冒険者はそうした情報をもとに、攻略を進めることになる。
もっとも言葉通りにダンジョンは生き物と言われているように、その情報通りになっていない場合もあり得るので油断は禁物だ。
ギルドでダンジョンの情報を仕入れたあとは消耗品などを買い集めつつ、町の雰囲気も見て回った。
マキムクの町は、マキムクダンジョンが近くにあることで有名であり、その上にアシカガ領を治めているアシカガ家の本拠地があることでも知られている。
とはいえ今回の旅では、足利家と関わり合うことはないと思う。
……そんなことを旅の途中で話をすると、アンネリが「どうせいつもみたいに何かしら起こるのでは?」と突っ込んできたが、出来れば今回こそは何事も起こらずにいて欲しいと思う。
とはいえ何かが起これば対処しなければならないので、絶対に何も起こらないとはいえない。
たとえば道端で怪我している人がいれば、状況によっては助けることもあり得るしそれによって何かしらの事件に巻き込まれることもあるということだ。
もっとも普通はそんな簡単に事件に巻き込まれたりはしないのだけれど。
もしかするとルファに会ったことで何かしらが起こる可能性はあり得るけれど、その時はその時に対処するつもりだ。
というわけでマキムクについてから三日ほどは、ダンジョンに潜るための準備期間として終わった。
ギルドで買ったダンジョンの情報もしっかりと頭に入れて、四日目の朝にはダンジョンの入口に立っていた。
この辺りではダンジョンに子供を連れて行くということがないのでそこそこ注目を集めていたけれど、特に声をかけられるようなことはなかった。
トムはともかくオトとクファは奴隷ではなく、扱いも親戚か知り合いの子供という感じなので虐待のような扱いをされているわけではないと分かっているのだろう。
マキムクダンジョンの入口は、馬車がすれ違いで出入りできるくらいの大きさがある。
ダンジョンは生き物という言葉はその通りで、マキムクダンジョンも見つかってから今までの間に何度もその姿を変えている。
俺が知っているマキムクダンジョンは、入口自体もここまで大きくなかった。
この五百年の間に何度か変更を加えた結果、ここまでの大きさになったのだろう。
ヒノモト一の難易度といわれるダンジョンだけあって、人の出入りも多くある。
そんな人の流れに沿って坂のようになっているダンジョンを下って行った。
マキムクダンジョンの第一層は、洞窟タイプになっていて土壁で仕切りがされている。
もっとも土壁といってもあくまでも見た目だけであって、裏技的にスコップで掘ったりつるはしで壁を崩したりはできないようになっている。
ユグホウラの眷属である蟻種が地下に作っている通路の壁でさえ簡単に壊すことはできないので、この世の不思議の一つとされているダンジョンになると当然なのだろう。
とにかく慣れた様子でダンジョンの中を進んでいくけれども、同じタイミングで入ってきた冒険者たちが別の道に分かれていく様子はほとんどなかった。
マキムクダンジョンの第一層は駆け出し冒険者でも簡単に攻略できると言われていて、お小遣い稼ぎ位しか稼ぐことができない。
そのため多くの冒険者はさらに下の層を目指しているので、必然的に多くの冒険者が連なって歩くことになる。
今回の探索は遠征をするつもりはなかったので馬車を使ってはいないけれど、他の冒険者の中には馬車を数台連れてクラン単位で行動している者たちもいる。
より多くの稼ぎを得るために馬車を引き連れていくのはマキムクダンジョンでは当たり前になっているのか、前後を見れば多くの馬車が通っているのが分かる。
行きだけではなく帰りも同じようにいくつもの馬車が見えるので、それだけ馬車を使って探索するメリットがあるというわけだろう。
ムツにあるダンジョンは勿論のこと、ヘディンのダンジョンでさえもここまで多くの馬車が行き交うようすな見られなかったので、特にトムなんかは興味深そうにあたりを見回していた。
その様子を見る限りでは飲まれているというよりも、興奮しているという感情のほうが大きいように見える。
トムはヘディンにいるときに何度もダンジョンに潜った経験があるので、ダンジョンそのものには慣れているのだろう。
それに対するように、オトとクファはこれから実戦が待っているので少し緊張しているといったところか。
一応二人ともサポーターとしてダンジョンには潜っているけれど、戦闘要員として動くことになるのは初めてなので緊張するのは当然のことと思う。
とはいえ今回二人がメインとなって戦闘をするのは、第二層からになる。
第二層のメインの通りを外れると冒険者の数も減って、二人にとってはちょうどいいバランスで戦闘ができる……と見込んでいる。
実際には戦ってみないとどうなるかは分からないけれど、大きく外れることはないだろう。
ちなみにオトはともかくクファは巫女として修行をしているが、ある程度の戦闘も行えるように訓練している。
魔法を使っての戦闘になるので遠距離になるけれど、巫女だからといって全く戦えないわけではない。
どちらかといえばアイリも多少の戦闘はこなすので、その影響も大いに受けているのだろう。
とにかくオトとクファが戦闘に慣れてもらうことが目標なので、大きな事故が起こらないようにしっかりと見守っていきたいと思う。
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます