(25)今後の予定

§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§




 地脈に触れるためには魂の状態にならないといけないというのは、ガイア(端末)から直接聞いた話になる。

 ということは、もし人の姿で地脈の力を使おうとするのであれば、いちいち幽体離脱的なことをしなければならない――のかと考えたのだけれど、実際にはそんな必要はなかった。

 どうやら魂の状態になって触れる必要があるのは初回の時だけで、二回目以降は魔力の鞭を伸ばせば触れることができた。

 ちなみにこれまでは便宜上で魔力の鞭と考えていたけれど、イメージ的には電気を運んでいる電線というイメージの方が正しいと思えてきた。

 どうも魔力の線を地脈に伸ばすと、その線を伝って魔力が伝って来るらしい。

 電線の場合はそこを電気が通ることになるのだけれど、魔力の鞭改め魔線(仮名)は魔力を通すことになる。

 一言で言ってしまえば、その線を通して膨大な魔力を使うことができるようになったわけだ。

 ただし人一人の力で使える量はたかが知れていると思われるけれど、調子に乗ると以前の世界での化石燃料(原油)のように、いつかは枯渇するか星に多大な影響を与えてしまうような気がしてならない。

 もしかするとガイア(端末)が接触してきたのは、地脈の力を無駄に使わないようにするための監視的な理由があるのかもしれない。

 もっとも人の姿で触ってみた感じでは、とても使いきれるような量ではないという感覚も得ているのだが。

 

 とにかく何日かかけて訓練した結果、どうにか多少なりとも地脈から直接魔力を取り出すことができるようにはなかった。

 ただし、まだまだ魔力操作が未熟なのか、使えるのは微々たるもので体から失った魔力を充電するような使い方もできていない。

 今のところ出来ているのは、あくまでも地脈から魔力を取り出してその力をそのまま魔法として転換する方法だけだ。

 イメージ的には他人の魔力を無理やり引っ張ってきて、その力を使って魔法の発現をしているようなものなので難しいと感じるのも無理はない。

 それでも体内にある魔力を使わずに魔法の発現ができるというのは、魔法が得意な種族に比べて比較的少ないと言われているヒューマンにとっては凄まじいメリットがある。

 

 これからどうやって地脈の力を使って行くのかは課題の一つとして、とりあえず自分自身が魔線の一部になることができるということはわかった。

 あとは魔力操作という魔法を使う上での基本の技術向上が必要ということが分かっただけでも大収穫だろう。

 ――というわけで、一通りの実験と訓練を終えた俺は、久しぶりにスッキリした気分で広場にあるお風呂へと向かうことにした。

 本来であれば掲示板に『地脈に触れる』ことができたことを書いた方が良いのかもしれないけれど、今はまだ沈黙期間は過ぎていない。

 とりあえず触れたことくらいは書いてもいいような気もするけれど、まずは他のプレイヤーに話して感触を確認してからの方が良いだろうと考えたのだ。

 勿論、風呂に入りたかったという理由もあるのだけれど。

 

 風呂に向かうと、そこには既に数人のプレイヤーがお湯に浸かっていた。

 その中に特に親しくしているプレイヤーの姿が見えたので近づいて行くと、すぐに相手も気付いたようでこちらを見て話しかけてきた。

「――おや、キラか。何日か来ていなかったみたいだけれど、やっぱり地脈関係かい?」

「まあね。どうせヒロシも同じことをやっていたんだよね?」

「それはね。折角今の状況を打開できそうなヒントらしきものが出てきたんだ。試さないわけにはいかないだろう?」

「皆、考えることは同じということかな」

「全員が全員試しているわけではないだろうが……それにしてもこのタイミングで来たってことは、もしかするともしかするのかい?」

 魔導士のヒロシがそう問いかけてくると、同じく湯に浸かっていた他のプレイヤーの視線が集まってきた。

 とはいえ掲示板書き込むわけでもなく、隠すつもりもなかったので素直に頷いた。

 

「うん。はっきり言ってしまえば、地脈に触れることは成功したよ」

「「おおっ!」」

「ただどこまで掲示板に書き込んだものかと悩んでいてね」

 俺の答えに一瞬男性プレイヤーたちが騒めいたけれども、すぐに落ち着きを取り戻していた。

 彼らも今の掲示板での『暗黙の了解』のことは分かっているだけに、こちらの悩みもすぐに理解してくれたのだ。

「それは確かに悩みどころだね。――掲示板に地脈の話が出てから大体五日ほどか。これほどの速さで解決するキラはさすがだと思うけれど、確かに少し早すぎるか」

「だよね。だからどうしようかと思ってね。案外似たような悩みを抱えているプレイヤーもいるかもしれないからこっちに来てみたんだ」

「そういうことか。たださすがに今の段階で成功した他のプレイヤーがいるかどうかは……」

 ヒロシがそう言いながら周囲に視線を向けたが、少なくとも今この場にいるプレイヤーは誰も成功していないようだった。

 

「とりあえず成功したことだけは書き込んで、それ以外は当分伏せておこうかと考えているんだけれど……」

「どっちにしても不満を言うプレイヤーは出てくるだろうね。情報を隠しているとかもっと情報をよこせとか……さすがにそれは言い過ぎか」

 正直なところ百名のプレイヤーは、これまでの月日でほとんど親戚のような付き合いの仕方になっている。

 そのため一応の匿名掲示板であっても、誰が書き込んだのかある程度特定できてしまうためそこまで極端な言い方をするようなプレイヤーはいないだろう。

 とはいえ議論の中で両極端に分かれて喧々諤々の状態になるのは、珍しいことではない。

 まただからこそ『人』だとも言えるのだろうけれど。

 

「まあね。だからここに来てとりあえず話だけでもしておこうかと思ってね」

「広場での噂が良い具合に緩衝材になってくれれば……ってところか。そういうことなら喜んで広めさせてもらうよ。とりあえず地脈に触れることに成功したってことでいいかな?」

「そうだね。こっちは……一応一日待ってから書き込むことにするよ。方法については当面封印かな」

「それがいいだろうね。ところで、ここだけの秘密ってことで教えてもらうことは――」

「止めておいたほうがいいだろうね。正直に言ってしまうと……やめておこう。これ以上言うと墓穴を掘りそうだから」

「それだけでも大分ヒントになっている気もするけれどね。まあ確かに、これ以上聞くのはやめておこうか」

「そうしてもらえると助かるよ」


 ヒントになるかどうかわからないようなギリギリを攻めて答えてみたけれど、しっかりとその思惑は伝わってくれたみたいだ。

 もったいぶっていると言われるかとも考えていたけれど、幸いにしてこの場にはそんなことを言って来るプレイヤーはいなかった。

 掲示板の雰囲気が「自分の力で見つける」という方向で動いているので、当然かもしれないけれどね。

 抜け駆けしてどうにかできたところで、プレイヤーは基本的には違う世界で生きているのであまり意味がないという考えも働いているのかもしれない。

 

 各個人のプレイヤーの思惑はともかくとして、俺自身については今話に出た通りに行動することにした。

 掲示板に書くのはあくまでも地脈に触れることに成功したことだけ。

 それ以外のガイア(端末)と会話したことや新しい能力については他のプレイヤーの動向を見て書き込むことになる。

 別にそれらのことを書き込んでも本気で怒るプレイヤーはいないだろうけれど、折角新しい目標ができて皆が楽しんでいるらしいのでそれを潰す必要もないだろう。




§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§


是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る