(24)地脈に触れた結果

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 声が機械音声っぽい相手との会話は、体感で十五分ほど続いた。

 結論から言ってしまえば、その相手はガイア(星そのもの)であることに間違いないらしい。

 ただし話をしているのはガイアとしてのごく一部であって、全体は常の通りに星全体の管理を続けているとか。

 話をきいてもいまいちよく理解できなかったのだけれど、こうして一個人と話の相手をしているのはシステム全体を管理しているうちの端末の一つ……らしい?

 ガイア(一部)はきちんと説明してくれていたのだけれど、はっきり言ってしまえば理解することができなかった。

 一言で言ってしまえば「全にして個、個にして全」ということになるのかもしれないが、それで正しいのかどうかも分からなかったので完全に理解するのは諦めたといったところだ。

 

 ガイアの内情を理解するのは諦めたけれども、それ以外に知りたかったことはある程度聞くことができた。

 何よりも一番知りたかったのは、何故地脈ヘノ接触に成功したのかということだった。

 その答えとしては、要するに肉体から離れた魂の状態での接触が必要だったとのこと。

 俺の場合は世界樹の中に入って接触するという方法を取ることで、偶然にも魂の状態になったために成功したらしい。

 世界樹の中に入っることを意識を移しているとか考えていたけれど、魂の状態でいるのだと言われてみればなるほどと納得できる。

 問題なのは他のプレイヤーがこのことに気付けるかどうかだけれど……正直人の身体で幽体離脱を実践しているプレイヤーがいるかどうかは分からないので、何とも言えない。

 

 一番の疑問が解決したとも幾つか質問をしたけれど、期待していたほどの明確な回答は返ってこなかった。

 これは隠しているというよりも、答えたところで理解するのが難しいといったほうがいいのかもしれない。

 ガイアの有り方自体話を聞いても理解しがたかったので、さらに込み入った話になると混乱するだけになる。

 一応説明らしきものはしてくれたものの、こちらが理解できないのでどうしようもないといったところだろう。

 

 当たり前といえば当たり前だけれど、ガイアはしっかりと運営もしくは上司との繋がりも理解していた。

 もっとも上司についてはガイアも接触したことはなく、立場的には下位の運営とやり取りをしたことがあるといったところだった。

 ガイアにとってみれば運営は自らを作ってくれた創造神そのものといっても過言ではないので、言われるがままに行動しているといったところか。

 ガイアにはガイアとしての目的が設定われているらしく、その目的にプレイヤーの存在は必要らしい。

 

 ガイアにはガイアの目的があって、プレイヤーにはプレイヤーの目的がある。

 当然の話ではあるけれど、場合によっては敵対することもあるのだろう。

 もっともそれについても軽く話をしたが、星そのものを滅ぼすようなことをしなければ明確な敵として認識することはないそうだ。

 話の種に聞いてみたところによると、たとえ核の攻撃で生物全体に大ダメージを負わせたとしても、星そのものにダメージを与えるかといえば疑問なのだそうだ。

 

 星にとっては生命がいることも大切だけれど、それ以上に存続し続けることのほうが大切だということなのだろう。

 それに確かに核兵器での攻撃は地上に大ダメージを負わせることになるが、全ての生命を滅ぼすことができるかといわれると疑問なところがある。

 地上に住んでいる生命には大きなダメージを与えても、微生物やバクテリアに至るまで殺すことはできないだろうと言われると黙る事しかできなかった。

 星にとって知的生命体に至るまでの過程もほんの一瞬のことで、また新しい知的生命体が誕生するまで待てばそれでいいのかもしれない。

 

 ガイアが相手だっただけに持ち出した話だったけれど、予想以上に淡白な回答が来たので逆にこちらが慌ててしまった。

 俺個人としてそんなことをするつもりは全くないので問題ないのだけれど。

 逆にいえば、星が破壊されるほどの大きなダメージを与えるとガイアそのものが敵になるともいえる。

 ガイアそのものが『怒り』という感情を持つかは分からないが、星の上に住んでいる以上は当たり前ではあるけれどあまり怒らせていい相手ではない。

 

 ちなみにプレイヤーの間で出ていた話で、星もしくは世界の管理者としての役目を負わせようとしているのではないかという疑問に関しては短く『不明』としか返ってこなかった。

 さすがにガイアであっても運営の目的というか目標は分からないらしく、プレイヤーについての情報もあまり持っていなかった。

 それでいてガイアと接触できる条件としてプレイヤーであることが含まれている時点で、何かしらの思惑があると言っているようなものだが。

 余談ではあるけれど地脈に触れることとガイアと会話できるようになることは似て非なるもので、今のところガイアと会話できるようになるのはプレイヤーだけらしい。

 要するに今この星にいる声明では俺だけがその条件を満たしているということになるわけで、これも運営の何かしらの目標に含まれているということだろう。

 その割には地脈に接触した時に出てきたメッセージ以外のことは何も起こっていないので、あとは自ら探せということなのかもしれない。

 とにかくプレイヤーが地脈に直接触れることは運営の思惑の一つであることは間違いないわけで、これでまた何かしらの進展がある……といいなと思う。

 

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 星の内部でのガイアとの会話を終えたあとは、世界樹の麓に用意された小屋――の中に置かれたベッドの上でしばらく考え事をしていた。

 その時間がしばらく続いて少し心配になったのか、世話人として傍にいたらしいアイが話しかけてきた。

「――目的は果たせたみたいだけれど、何かあった?」

「まあね。正直なところ今もまだ混乱したままだから上手く話せないかな。……話していいかどうかも分からないし」

 ガイアという存在がいることについて、眷属に話をしてもいいのかどうか判断がつかない。

 話してしまったところで問題はなさそうだけれど、どうせ話すのであれば全員いるところで話をした方がいいだろう。

 

 そんな考えを見抜いたのかどうかは分からないけれども、アイは不満を見せるようなこともなく頷いていた。

「ご主人様が話せると判断したことだけ話してくれればいい。それよりも体は大丈夫?」

「そういえば……思ったよりも固くなっていないね。あまり長くは寝ていなかった?」

「半日どころか数時間も経っていない」

 ガイアと話をしていた時間は数十分といったところだけれど、地脈に接するまでにそれなりに時間がかかっている。

 そう考えていたのだが、どうやらそこまで時間はかからなかったようだ。

 思った以上に短い時間で済んでいたことで、逆に驚いてしまった。

 

 ベッドから身を起こして立ってみたが、普通に寝ていた時と変わらずにすぐに動くことができた。

 これならばすぐにでもムサシに戻ることはできるけれど、さすがにすぐに戻るつもりはない。

 そもそもの目的である地脈に触れることができたので、それで何ができるのかを確認しないといけない。

 色々と新しいことを試すのには、やはり人族が出入りすることのないホーム周辺で試すのが一番だからだ。

 

 地脈に触れてガイアとの会話ができたことは予定外のことだったので、まずは地脈の力を使って何ができるのかを確認しないといけない。

 そもそも地脈に触れたからといってその力を利用できるのかの確認をしなければならないので、まだまだ道半ばといっても過言ではない。




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m(__)m

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