(23)世界樹から

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 結論からいえば、一回目の地脈への接触は上手く行かなかった。

 ある程度のところまで魔力の鞭を近づけると何かで防がれたかのように、途中で止まってしまうのである。

 人と人の接触でいえば、握手しようと手を伸ばしても手と手が触れる直前に透明な何かで防がれてしまうというべきか。

 とにかく、魔力の鞭を使って地脈と直接つながるという試みは失敗したということになる。

 もっともたった一回の接触で諦めたわけではない。

 言葉通りに手の届く範囲にまで鞭を伸ばすことができたのだから、あとは地脈に到達するまでの『壁』をどうにかすればいい。

 ――そう考えて、魔力の鞭を使いながら色々と試してから早三日。

 どうにも根本的なところが駄目なようで、魔力の鞭で地脈に触れるという計画は全く進まなくなっていた。

 

「発想自体は悪くなかったと思うんだけれどなあ……。感覚的に正規ルートじゃないと弾かれている感じ」

 別に地脈の『何か』と会話できているわけではないけれど、鞭で触れようとする直前にある壁が明確に拒絶を示している気がしている。

 あくまでも感覚的な問題でそれがあっているのかは分からないけれど。

 一応理屈的な理由を付ければ、俺個人の魔力と星の魔力である地脈(仮定)は交わることができないと考えられなくはない。

 

 ただそうなるとプレイヤーが試している『地脈に触れる』ということは、絶対に出来ないということになってしまう。

 さすがにここまで来てそんなことがまかり通るかといわれると、少し首を傾げざるを得ない。

 というよりもあの上司が、そんな不完全なシステム(環境?)を作るとは思えない。

 もしできないならできないで、最初から地脈の存在を明かすようなことすらしなかっただろうと思う。

 

 相変わらず変に上司への信頼があるからこその分析だけれど、大きく外れてはいないと思う。

 となると何かしらの方法で地脈に触れることができるとなるわけで、逆にいえば今のやり方が間違っているということでもある。

「――仕方ない。とりあえず今のやり方はきっぱり諦めて、次の方法を試してみるか」

 何も事前に考えていた方法は魔力の鞭を伸ばす方法だけではないので、今はきっぱりとその方法は諦めて別の方法で試すことに決めた。

 

 次点で用意していた策というのは、世界樹の中から地脈に触れに行くという方法だ。

 何故この方法が次点になったかといえば、人族の身体からだけでも出来ることを確認したかったこととそもそも世界樹を介する方法が正しいのかわからなかったからである。

 とはいえ世界樹の中に入るということは肉体を捨てて魔力的に動きやすい状態になるともいえるので、魔力の塊ともいえる地脈に触れるのにはやりやすいのではないかという推測も立てている。

 問題は意識を世界樹に移したところで、その後にどうやって地脈まで魔力の『手』を伸ばすのかということになるのだけれど……とりあえずはやってみようの精神で試すことにする。

 

 前回の進化の時と同じように、アイたちが用意してくれた寝台の上に寝てから世界樹の中へと精神こころを送った。

 ちなみにこの寝台は前回よりもバージョンアップしていて、長い眠りでも耐えられる造りになっている。

 より具体的にいえば、ベッドだけではなく周囲に小さな小屋のようなものができていて、雨露を防ぐどころか寝ている体を世話することも簡単に出来るしてある。

 当然のように小屋は世界樹の生育に邪魔にならないように魔力的な造りになっていて、よほどのことがない限り潰れたりすることはないという。

 

 はっきり言ってしまえば、素材一つとってもとんでもないくらいにお金がかかっている代物といえるのだけれど、作ったアイからすればまだまだ不満らしい。

「ご主人様の寝所としては全くふさわしくない」らしいけれど、正直なことを言えば大げさすぎる気もしなくもない。

 もっとも張り切って作ったと分かるアイに、そんなことは言えないのだけれど。

 ついでにいえば現在の人族の価値観でいえばとんでもない金額がかかっているのだけれど、ユグホウラで見ればそこまで希少な材料を使っているとは言えないこともストップできなかった要因の一つになっている。

 

 一応初めて使うのできちんと世界樹の中に入れることを確認してから、そんな豪奢な寝台に横たわって本格的に実験を開始した。

 意識を世界樹へと移してからそのまま木の中を移動して、地下にある根の先端に向かう。

 ちなみに木の中で意識を移動させるといっても、物理的に移動しているのかどうかはよくわかっていない。

 そもそも意識がどこにあるかなんて、あちらの世界でも永遠に解けない命題のようなものだったはずなのでここで考えても答えなどでないだろう。

 

 地下まで移動したあとにやることは、これまでしてきたことと変わらない。

 世界樹の魔力を使って地中にさらに深く魔力の鞭を伸ばして、地脈に触れるようにするだけだ。

 世界樹の魔力と人族である今の俺自身の魔力は全く同じなので、どちらの魔力を使っても結果は変わらないはずだ。

 そう考えて世界樹から接触することにしたことと、こちらの方が大きな魔力を持っているので何かの違いが出ると考えてのことだ。

 

 とにかく、ここから先はこれまでやってきたことと変わらない。

 魔力の鞭を地脈のあるところまで伸ばして、接触を試みるだけだ。

 他のプレイヤーが見ていれば前の方法と何が違うのかと突っ込まれそうだが、見られていないので問題ないだろう。

 やっている俺自身も物は試しという気分で行っているので、成功する確率は五分五分もないだろうと思っている。

 

 ……そんなことを考えて魔力を伸ばしていたのだけれど、人族の姿のまま行っていた時とは違ってすんなり地脈に触れることができた。

『――えっ!? うそっ。こんな方法で……って!?』

 世界樹の中からなので声は出せないが、気分的に思わず声を出してしまった。

 ただ問題はそこではなく、続いて起こった現象にあった。

 

<地脈への接続が確認されたました。これより条件の確認が行われます>


 久しぶりにシステム的なメッセージが流れて来たかと思った次の瞬間には、これまでしっかりとあった意識が途切れることとなる。

 そして次に目覚めた(?)時には、初めて聞く『声』が聞こえて来た。

 

『固体名きらノ意識覚醒確認。コレヨリ接触開始』

「あ、えーと? もしかしなくても会話できる? あれ? これって俺はどうやって声を出しているんだろうか?」

『是。ココハ星内部。魂ノミデ存在』

「うん。まあ、よくわからないことがわかった。とりあえずここが星の内側で、俺自身が魂で存在していることもね。あとは声に関してだけれど……あまり気にしても意味はないか」

 きちんと自分の声も『音』として認識していることが不思議だったけれど、そもそも今の状態が不思議の塊なので突っ込んでも仕方ないだろう。

「――それで、これってどんな状態?」

『キラノ地脈ヘノ接触確認。条件適合ニヨリ中心ヘ導キ、適正チェック済』

「そうか。地脈への接触は上手く行ったのか。条件適合ってのがよく分からないけれど」

『地脈ヘノ接触ハ、魂デ行ウコト。条件ハ秘匿情報』


 後半は何となくそんな感じがしたので別の良いのだけれど、問題は前半の魂の状態で地脈への接触をすることだ。

 どうやら世界樹の中に入って接触が上手く行ったのは、肉体から離れて魂(意識)の状態で行ったから良かったらしい。

 言われてみれば納得できる条件ではあるけれど、これは他のプレイヤーが見つけるのはかなり難しいのではないかと思う。

 それに加えて、今現在会話が行っている相手が誰なのかも気になるところだ。

 何となく予想がつくけれども、一応確認しておかなくてはならないだろう。

 そう決断した俺は、再び口を開くのであった。




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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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