(20)地脈の情報

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 プレイヤーの間で注目を集め始めた地脈だが、別に今新しく見つかったわけではない。

 むしろ以前からあることが知られていたけれども、扱いが難しすぎて放置されていただけである。

 現地住人と一線を画す実力者が揃っているプレイヤーでも扱いが難しいとはどういうことだと言われそうだが、そもそも地脈は星の力そのものと解釈すれば当然だという考えもある。

 そんな地脈は、プレイヤーだけではなく一般的にもそれなりに知られた存在となっている。

 というのも昔から神社や神殿などの大切な建物は、地脈の上に作られていたりする。

 そもそも魔法があって魔力が当たり前のように認識されている世界では、魔力の流れそのものと言われている地脈もまた、当然のように利用されている。

 もっとも利用するといっても地脈の力は人族が扱うには大きすぎて、上に建物を建てるなどしてその恩恵に授かるという使われ方が一般的となっている。

 地脈の力そのものを取り出して利用するという考え自体はあるものの、今のところ『神の力』として手を出すことすらできない存在と認識されているようだ。

 

 地脈が以前から認知されていたことはいいとして、問題なのは歪みとの関係だ。

 既に地脈を認識できるプレイヤーが確認したこともあって、予想の通りに周辺には歪みがないことは分かっている。

 というよりもそれ以上の収穫があって、なんと歪みが発生しても地脈の流れに流されるように消えていくことが確認されていた。

 始めてそれを発見したプレイヤーは偶然だと言っていたが、一度発見報告があれば後はいくつもの報告がされていったので間違いないだろう。

 

 この情報に合わせて以前から知られていた知識を合わせると見えて来ることがある。

 その以前から知られていた知識というのは、各地で生まれて来る爵位持ちの魔物が地脈に沿って生まれているという事実だ。

 そもそも爵位持ちが生まれる条件になっている領土は、地脈に合わせて作られているということも既に確認されていることになる。

 当然のように世界樹も地脈の傍に立っている――というよりも複数の地脈が交差する重要地点(?)にある。

 

 歪みが地脈の流れに流されているということと爵位持ち魔物が地脈の流れに合わせて誕生していることを合わせて考えると、とある仮説が出てきた。

 それはそもそも爵位持ちが魔力を加工して魔石を作れるというのは、歪みが関係しているのではないかということだ。

 もっとはっきり言ってしまうと、歪みは魔石の元になっているということになる。

 それは少し飛躍した仮説と言えなくもないが、あり得ない話ではないだけにプレイヤー間でも賛否分かれて議論する話になっている。

 

「一つ物事が進めば一気に進むのは、いつものことか」

 掲示板での話を確認してからいつものように温泉に向かうと、そこで会ったラッシュがいきなりそう言ってきた。

「本当に。それだけ新しい情報に飢えているとも言えるけれど……」

「どうした?」

「それだけに、今まで地脈に全く注目が集まっていなかったことが不自然に思えてきてね」

「言いたいことはわからなくはないが、運営の介入はないと思うぞ? そのことは掲示板でも言われていたからわかっていると思うけれどな」

「まあね。さすがに運営の介入があったとは思わないよ。ただ星そのものはどうかな?」

「ガイア理論か」

 ガイア理論というのは地球そのものを一つの生命体と考える理論のことだ。

 

「地脈の力をそのまま使われると星として困ったことになる。だからこそ力がつくまで待っていた――と考えると自然な気もするけれど、それだと説明がつかないこともあるんだよね」

「ほう。それはなんだ?」

「簡単な話。プレイヤーが暮らしている星は、それぞれ連携が取れていないはずということ」

 プレイヤーがそれぞれ暮らしている世界は全く別の世界なので、そこに存在している星が連携を取れているとは思えない。

 そう考えての言葉だったのだけれど、ラッシュは少し面白そうな顔になっていた。

「どうかな? もしかすると俺たちプレイヤーが繋がっているように、ガイヤ同士も何らかの連絡手段を持っていてもおかしくはないんじゃないか?」

「あ~。ここで上司の悪戯好きが発揮されるわけね。それを言われると反論でき無くなるなあ」

「どこまで行っても想像でしかないけれどな。そもそもガイア理論がこの世界に当てはまっているかどうかすら分かっていないしな」

「それは確かに」


 そもそもガイアというものが存在するのであれば、この世界で神として君臨していてもおかしくはないはず。

 太陽や月、星々をそれぞれ神の一柱として祀っている宗教もあるので、自ら住まう大地もまた神の一柱として祀っていてもおかしくはないだろう。

 ところがプレイヤーの間では、そうした話は全く聞いたことがなかった。

 今考えると不自然なくらいに、ガイアを神として祀っている宗教は存在していなかったりする。

 

「――敢えて意識に登らないように抑えているのか……? いや。そんなことを考えても仕方ないか」

「何のためにそんなことをしているのかという問題もあるからな。そこを突き詰めていくといくら時間が合っても足りな……くもないか。考え方に寄っちゃ、俺たちには時間は無限にあるともいえるし」

「かかる時間は膨大であったとしても、いくらでも復活できるからねえ……。あまりとりたくはない手段ではあるけれど」

「確かに。それに、ガイアがどうこうと考えても仕方ないともいえるか」

「そうだね。多分だけれど、本当にガイアがいたとしてもこちらの実力が上がればどうにかできることはわかったからね」

「それは……ああ。今回の件で分かったってことか」

 ガイアが何かしらの情報統制をしていたとしても、今こうしてプレイヤーの間で情報のやり取りがされるようになったということは、何かしらのロックが解除された可能性もある。

「そういうこと。――なんてことを決めつけで話していても仕方ないか。そもそもガイア理論が正しいかもわかっていないんだし」

「本当にな。一応、四方山話の一つとして頭の片隅にでも入れておくことにしようか」


 どちらかといえば、今のところ妄想の類と取られてもおかしくないくらいに飛躍した話になってしまっている。

 時にはこうして突飛な話をしてもいいだろうし、実際に正しかった場合にはあの時にこんな話をしたことがあると笑い話にすることもできるだろう。

 今の段階でガイア理論は少し突き抜きすぎているので、とりあえずは地脈について確認していかなければならないだろう。

 それに折角なのでラッシュに確認しておきたいこともある。

 

「そういえば、ダンジョンと地脈の関係はどうなっているの?」

「ダンジョンは動かないからなあ。爵位持ち魔物以上に、地脈に影響を受けていそうだな」

「ということは、やっぱり地脈の近くにあるわけか」

「というか、入口が真上に出来ているな。このこと自体は以前から知られていたんだが……ダンジョンマスター以外はあまり気にされていなかった話になるか」

「やっぱりここでも情報が止まっているのか。ここまで不自然すぎると、やっぱり情報統制を疑いたくなってくるね」

「本当だな。いっそのこと解放者のときみたいに、運営側で知らせる形にしてくれたほうが……ああ。これもヒントになっているのか」

「言われてみればその通りだね。これだけで運営が関わっていないという証拠の一つになるということか。決めつけるには早すぎる気もするけれどね」


 まるで誰かに隠されていたかのように、これまであった地脈の情報がピックアップされて結びついていく。

 それが何のために、誰のためになのかと言われても分からないが、ここまで来るとわざと隠していたとしか思えなくなってくる。

 恐らく他のプレイヤーもそのことに気付いていくはずなので、いずれは何かしらの答えが見つかるかもしれない。




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m(__)m

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