(19)地脈について
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地脈を流れる膨大な魔力は、プレイヤーが扱うにはあまりにも大きすぎる。
一部の職業についているプレイヤーの中には地脈を扱うようなスキルもあるのだけれど、それはあくまでも少しばかりの魔力を扱っているだけで地脈そのものを利用しているとはいいがたい。
逆にいえば地脈の力をそのまま扱うことができれば、星そのものの力を扱っているともいえる――とさえ主張するプレイヤーもいるくらいだ。
それだけに地脈の力は強大で、扱うことが難しいともいえる。
問題なのはそれだけの力をプレイヤーが扱うことが出来るようになるのか、ということだろうか。
「――地脈の力か……」
「おや。何か思い当ることでも?」
「いや。そっちじゃなくてね。地脈に関連して、掲示板でよくささやかれていることをちょっと思い出した」
「地脈に……? ああ。運営の目的ですか。キラさんは、あの意見を支持されるのですか?」
「いや、どうだろう。ただ以前は懐疑的だったけれど、今はあり得なくはないとも考えているかな」
「そうですか」
地脈の膨大な力について語られる時に、必ずといってもいいタイミングで浮上してくるとある説がある。
まあ、説といっても特定の人物が「絶対にそうだ」と言い張っている話で、大半は眉唾物だとほとんど相手にもしていないことではあるが。
それが何かといえば、運営は今いる星か、あるいは世界そのものをプレイヤーに管理させようとしているのではないかということだ。
管理というのはもっと俗物的な考えで言ってしまうと、神様的な立ち位置に立たせてしまおうという話である。
正直なところマナと魔力の関係にさえつまずいている現状で何を言っているのか――という意見が大半だったりするのだけれど、当初は鼻で笑われる勢いだったその説も今では真面目に考えるプレイヤーが増えてきている。
「――私たちに神のような力を持たせて、何をさせたいのでしょうね」
「さあね。あの上司だったら『面白そうだから』の一言でやりそうな気もするけれど?」
「それは……ないとは言えませんね」
「だよね。俺たちに世界を管理させることで、世界の数を増やしたかったとか、後付けの理由ならいくらでも思いつきそうだけれど、第一の目的はやっぱりそれだと思うな。
――いや。そもそもプレイヤーを世界の管理者にすることが目的かどうかわからないんだけれどね」
「ありそうな話だけに、否定する材料が見つからないところがやっかいなところですね」
「本当に」
苦笑しながらのハートの主張に、こちらとしても頷きを返すことしかできなかった。
上司に関しては、普段が普段だけに全く否定できる材料がないところが辛い。
そもそも運営がプレイヤーを星か世界の管理者にしようとしている話は、あくまでも想像か妄想の範疇でしかない。
それにも関わらず厄介者扱いされる上司だけれど、普段の行動が行動だけにかばう気は一切起きない。
それに乗っかってこの世界を満喫しているプレイヤーたちもどっこいどっこいだと言えるのかもしれないが、そこはそれである。
基本的にプレイヤーは厄介を押し付けられる側なので、多少の愚痴くらい言っても罰は当たらないだろう。
「管理者云々は横に置いておくとして、今は歪みの話でしたね」
「そうだった。あとは地脈――――」
地脈の話もしていたと言おうとしたところで、魚の骨が喉に刺さった時のような何とも言えない感覚に襲われた。
「キラさん……?」
突然押し黙った俺を見てハートさんは首を傾げていたが、何かを察して黙ってくれていた。
それに感謝しつつ何を思いつこうとしていたのかしばらく考えていたが、ようやくその違和感に気付いてスッキリした気分になれた。
「よくよく考えてみると、地脈の流れに近いところだと歪みが発生していないと思うんだけれど、どう思う?」
俺がそう問いかけると、ハートはハッとした表情になっていた。
「言われてみれば、確かに……? きちんと情報を確認しないと何とも言えませんが、恐らく間違いないと思います」
「だよね。だとするとそれに意味があると考えたほうがいいと思わないかな?」
「思いますね。あくまでも前提が正しいことが条件ですが」
「うん。そこはきちんと確認しないと駄目だね。でもそれが正しいとなると……」
「何か突破口が見つかるかもしれない……ですか」
少なくとも掲示板を含むプレイヤーの間では、地脈と歪みの関係については全く触れられたことがなかったはずだ。
それに気づいたところで何か新しいことが分かるかどうかは不明だけれど、少なくとも新しい発見であることには違いない。
「――やはりキラさんと話をして正解でしたか」
「いやいや。偶然だからね。それに、そもそも地脈の話が出て無かったら思いつかなかっただろうしね。あっちの世界にいても同じだったよ」
「確かに。プレイヤー同士だったからこそ思いつけた着眼点というわけですか」
「そういうこと。といってもまずは『地脈付近には歪みはない』という前提条件が正しいかを確認しないといけないね」
「それは掲示板に話を上げるだけでも十分でしょう。皆さん、しっかりと調べてくれるはずです。勿論、私たちも」
「そうだね。それじゃあ、早速上げに行こうか。――ちゃんと頼んだものは食べてから」
流石に、注文した食事を放置したまま店を出て行く勇気はない。
これで突然腹痛が起こったとかなら話は別なのだけれど、すこぶる快調なのでちゃんと出されたモノは食べておくに限る。
『もったいな』という思いはハートも同じだったのか、すぐに同意してきて途中になっていた食事を再開してしっかりと最後まで食してからお別れとなった。
まずは掲示板に今思いついたことを書いて、他のプレイヤーの反応を見ようということになったのだ。
その間に幾つかの推論も考えておいたのだけれど、それは考えの押し付けになりかねないということで、まずは前提条件の確認だけを掲示板に載せようということになった。
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『地脈そのものか、もしくは地脈近辺には歪みはできない』
この推測を掲示板に載せると、すぐに他のプレイヤーからの反応があった。
その反応のほとんどはこの推測は間違っておらず、地脈の近くで歪みは見たことがないというものだった。
ただしこれには落とし穴になりそうな点もあって、そもそも地脈の力が分かるプレイヤーが少ないということがある。
地脈の力を探るには、どうしても魔力の扱いに長けている必要があって、そこを避けて通っているプレイヤーは確認することすらできないという問題があった。
とはいえ既に解放者になっているプレイヤーはある程度魔力操作ができることが前提になっているので、不完全でも地脈の流れを辿ることができるようにはなっている。
あとはその流れに沿って、歪みが発生していないことを確認すればいいだけである。
この推測を前提条件にして幾つかの新しい推論も議論の対象になっていたが、それはまた別の話となる。
今は新しい推測が正しいことを確認することが一番の目的ということで、各プレイヤーは動き始めている。
もっともそこはある程度好き勝手に書き込める掲示板であるため、地脈に関する新しい説も次々に書き込まれている。
それらの情報をもとにまた新しい法則なりが見つかっていくことになるはずなので、それを止めようとする動きは出ていない。
いずれにしても自分たちが生活している星の活動で、地脈という大きな現象が歪み関連で大きな関わりがあると分かったプレイヤーたちは、それに関する調査を開始することになる。
そして長い間停滞気味だった空気のなかで新しい目標ができた時のプレイヤーは、細かいことを含めて様々なことを発見していく……はずだ。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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