(17)感傷
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< Side:キラ >
是行の問題を解決したことで、関東の歪みの発生状況を確認することができるようになった。
当主からの許可が得られた後はあっさりと閲覧することができて、アンネリやアイリと共に資料の整理に追われていた。
そんな中で是行に対する処分が決まったという連絡ももらったのだけれど、そちらは一度の報告を受けただけでそれ以上の報告はしなくてもいいと言ってある。
正直なところその報告自体もいらなったのだが、さすがにあれだけ関わった以上、一切の報告がいらないというわけにもいかない。
結果としては是行本人の命が取られるようなこともなく、領地内での軽い軟禁状態ということになったらしい。
御家のタマモに対する態度を考えると前者の結果もあり得るとは思っていたのだけれど、そこまではいかなかったようだ。
こうして是行の処分については一回にまとめられて報告されたわけだが、一つだけ今までと変わったことが起こっていた。
それが何かといえば、俺たちに護衛が付けられているということだ。
ただしこれに関してはあくまでもこちらの観察結果から分かったことで、清定側から報告を受けたわけではない。
律儀に報告に来なくていいという約束(?)を守ろうとしているのか、あるいは報告するまでもないと考えているのは分からないけれど、常に何人かの武人らしき人間がついて回るようになっていた。
正直なところ歪みに関する資料の整理だけではなく、冒険者としてフィールドワークをする俺たちに護衛を付ける意味があるのかは分からない。
町から離れた場所で活動して襲われた場合に、どうやって守るのか中々難しいからだ。
とはいえ折角守ってくれているのに止めてくれとお願いするのも間違っていると考えているので、敢えてそのままで放置している。
清定が何を考えて護衛を付けてくれているのかは不明だけれど、それで心の平穏が保てるのであれば好きにすればいいと思う。
それよりも今は歪みの調査でわかったことを纏めることの方が重要だ。
「――やはりムサシでは少しだけ発生件数が多いようですわね」
「やっぱりそうなるか。予想通りといえば予想通りなのかな?」
「そうなのですか?」
「まあね。それぞれの土地を守る魔物がいるかいないかで発生状況が変わるという予想だったから」
アイリの疑問に答えながら歪みの発生状況を頭の中で整理した。
今のところ分かっているのは、歪みは『世界樹周辺』→『タマモの領地』→『精霊樹周辺』→『何もなし』という順番で発生が減っていくことが分かっている。
シーオのようにユグホウラが関わっていない爵位持ち魔物周辺がこれに加わるとどうなるのかは興味深いところだけれど、残念ながら資料がないので比較のしようがない。
シーオもヒノモトと同じように巫女たちのような存在がいればわかることもあったのかもしれないが、残念ながらアンネリ曰くそんな活動をしているとは聞いたことがない、らしい。
ユグホウラの影響力がシーオにも直接及んでいた時には、巫女と同じような聖職者もいたのだが彼女たちがどうなったのかはよくわかっていない。
……わけではなく、時の流れと共に数を減らしていったことはユグホウラの調査で分かっている。
眷属たちも敢えてユグホウラから離れることを選んだ地域で彼女たちを追い続けるようなことはしなかったので、今現在どうなっているかは分からないということだ。
もしかすると似たような存在として残っている可能性はあるけれども、そこまでして探し出す必要があるとも考えていないので放置したままにしている。
ただ歪みの発生状況がより詳細に分かってきたのは良いのだけれど、ある意味で一番大事な『何故歪みが発生するのか』という根本的な問題は全く分からない。
まあ、発生している歪みのパターンを見るだけで理由が分かるとは思ってはいなかったのでそれは良いのだが、見事にヒントになるようなものは何もなかった。
ここでもしかするとと考えたのは、多くの歪みがパターン化して発生しているので、それ以外の歪みを見つけられれば答えかヒントになるようなものがあるのではないかということだった。
もっともそう考えたところで、何がパターンから外れている歪みなのかが分からなかったのでそれ以上の推測も検証も全く進まなかったのだけれど。
結局、資料の確認をしていて答えに行き詰まってしまったので、一旦資料整理は休止して気分転換することにした。
気分転換といってもいつものようにギルドの依頼を受けるわけでもなく、完全自由にして町の散策なりをすればいいとアンネリとアイリには伝えておいた。
そして俺自身は何をしたかといえば、当然のように(?)広場に向かって温泉にゆっくり浸かることにした。
今の俺にとっては町の観光よりも入浴の方がリフレッシュできるので、完全に別行動を取ることになった。
――というわけで早速広場に向かって、いつものように温泉へと浸かった。(一回目)
流石に午前中ということもあってか、一人も入っていない温泉は静かで、それはそれでのんびりできてよかった。
お陰で歪みに関しても全く頭をよぎることなく、完璧な休憩になっていた。
一回目の入浴のあとは広場も軽く散策したが、プレイヤーの姿は見えずに見方によっては廃墟寸前の町のようにも見えるほどだった。
流石にそれだと寂しすぎるので中央にあるデパートに向かうと、数件の店は開いていた。
とはいえやはり午前中から店に出入りするプレイヤーは少ないようで、ほとんど開店休業状態になっていた。
ちなみに店番はプレイヤー本人がすることもあるけれど、大抵は運営が用意した『人材』を置いている場合もある。
かなり前に用意されたこの『人材』は、しっかりと受け答えもできてごく普通の人のように見えるが、テンプレから外れるような言動をさせようとすると『フリーズ』してしまうことがある。
この『フリーズ』はしっかりと原因が突き止められて修理費用が請求されることになるので、下手に手を出そうとするプレイヤーはいなくなっている。
用意された当初は、見た目の良さから男女ともに色々な意味で手を出そうとしたプレイヤーもいたのだけれど。
運営に借金をして逃げ続けることは不可能なので、今では人が来ない時間帯はこの『人材』に店や家の管理を任せるプレイヤーが多くなっているというわけだ。
細かい注文なんかを受け付けることはできないが伝言なんかはできるようになっているので、いないときはそれで十分だと今ではプレイヤーが少ない時間帯は『人材』が店番をすることが当たり前にもなっている。
そんな静かな午前中を過ごして、やがて午後になってくると広場にもプレイヤーが増えて来る。
まずはデパートに店を持っているプレイヤーが店番をするようになり、それに合わせてプレイヤーも出入りする感じだ。
とはいってもプレイヤーの数自体が限られているので、そこまで多くの人でにぎわうということにはならないのだけれど。
そんな状態で経済が成り立っているのかといえば、はっきり言ってしまうと成り立っていないといっても間違いではない。そもそも広場で全ての資源が取れるわけではないので当然ではあるのだが。
温泉に入ったり広場の散策をしたりしていると、プレイヤーもそれぞれ自分の目的に沿って動いていることがよくわかる。
だから何だと言われればそれまでなんだけれど、同じ目的に向かって動いている『仲間たち』が動いているのが分かるこの空間は今の俺にとってのお気に入りの一つだ。
――なんてことを考えて備え付けられているベンチに座って景色を眺めていると、一人のプレイヤーに話しかけられることとなった。
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※感傷に浸っていますが特に意味はありません。作者の気分です。
是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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