(19)世界樹の〇〇

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 巫女の修行場で見つけた世界樹に関する異変というのは、ホーム周辺で見つかる歪みの数の増加だった。

 巫女の数が増えたりホーム周辺を観察する機会が増えたというのであればそうなるのも当然だけれど、アイリに聞いた限りではそのようなことはない。

 となると何かの原因で歪みの数が増えたのか、もしくは世界樹に異変があったと考えるのが妥当だろう。

 歪みの数が勝手に増えるというのは今までの傾向からいって考えづらく、世界樹の異変の方が可能性が高い。

 この段階ではあくまでも予想でしかないが、ラックから確認した内容と合わせるとかなり後者の方が確立が高いと予想している。

 簡単に言ってしまえば、ユグホウラの魔力的な支配領域が増えたことによりホーム周辺で発生する歪みの数が増えて、世界樹の処理能力を超えてしまったというわけだ。

 あくまでも予想でしかないので絶対ではないのだけれど、この予想が当たっているとかなり確信をもっている。

 それに加えて、もしかすると世界樹は『次の段階』へ向かおうとしているのかもしれないと考えている。

 

 その『次の段階』というのは、世界樹の進化のことだ。

 俺が一周目を終えたときには世界樹(大樹)という種族だったのだけれど、それが今の状況に合わなくなっていると考えるのが自然……な気がしている。

 それが正解かどうかはわからないが、恐らく間違っていないだろうという変な確信があった。

 何故と問われると首を傾げることしかできないけれども、全く同じだという魔力の繋がりが第六感的な何かを知らせているのかもしれない。

 

 いずれにしても直接確認してみないと分からないことなので、すぐに世界樹の元へと向かった。

「――それにしても以前の時には分からなかったのでしょうか?」

「それね。見逃していた、というのは簡単だけれども、もしかすると俺自身の強さに関係しているのかもしれないね。もっと具体的にいえば、魔力操作のレベルとかね」

「なるほど。主の能力が不足していたから分からなかったと」

「あくまでも予想だけれどね。それに前の時は、どちらかといえばイレギュラーな入り方だったから分からないようになっていたのかもしれないし。そもそも今回も上手く行くかどうかは分からないからね」

「私としては上手く行って欲しいものですが」

「本当にね。もし駄目だったとしても、全力でどうにかする手段を探すけれど……手間を考えると今回で上手く行って欲しいな。――いや。今の予想が正しいのかもわかっていないんだけれどね」

「私たちに気付けなかったことに気付かれたのです。恐らく間違っていないのでしょう」

 ラックはそう言って励まして(?)くれているが、予想の積み重ねだけで動いているという事実は変わらない。

 

 そんな会話をしつつ転移装置からすぐに世界樹に向かうと、こちらの様子に気付いたシルクやアイが近寄ってきた。

 ラックの様子を見て、ただ事ではないことが起こっていると分かったようだ。

 それに加えて俺が一緒にいるので何があったのかと考えて近寄って来るのは当然だろう。

 二人が近づいて来てから世界樹までは歩いて五分程度の距離があったので、軽く説明しながら大樹の麓にまで話を続けながら進んでいった。

 

 世界樹の麓に着いたところで、俺以外の眷属たちは少し離れた場所で見守ることしたのか間を開けた場所で立ち止まっていた。

 そんな彼らの視線を感じつつそっと右手で世界樹に触れると、普通の木と変わらない感触が伝わってきた。

 もしかすると前回と同じようにいきなり中に引っ張られることがあるかもしれないと予想していたけれど、そんなことはなかった。

 触れただけでは何も起こらないということも予想のうちの一つだったので、次はしっかりと魔力操作してから手を通して世界樹へと伝える。

 

 すると今度は、こちらの意図が伝わったのかあるいは最初からそういうシステムになっているのかは不明だけれど、一周目の時と同じように世界樹の中に入れるという感覚が伝わって来る。

 その感覚に従って以前のように分体を解除したときのように自分の魔力を世界樹へと伝えていった。

 その魔力に自身の意識を乗せるように世界樹の中へ入るイメージを伝えると、次の瞬間には一周目の世界樹の精霊だった時と同じように見事に中に入ることができた。

 もしかすると以前の時と同じようにもう一人の自分と会うこともあるかも知れないと考えていたけれど、残念ながらそんなことは起きなかった。

 

 ある意味久しぶりで懐かしいとも思える感覚の中、もし中に入れたら真っ先に確認しておこうと考えていたことを実行する。

 そのやっておきたかったことというのは、世界樹のステータスが確認できるかということだ。

 もしかすると世界樹ではなく人族としてのステータスが開く可能性もあるので、こればかりはやってみないと分からない。

 そして確認してみた結果は、見事に人族としてのステータスと共に世界樹のものも同時に開いていた。

 

 二つのステータス画面はPCの中で二つのウインドウを開いている感じで、別々に移動して見ることができるようになっている。

 今回に関しては人族としてのステータスは使用しないので、世界樹のステータスだけ確認できる状態にだけしておいた。

 そして世界樹のステータスを確認してみれば、一つの可能性として立てていた予想が見事に当たっていた。

 それを確認してから眷属に伝えることがあるため、一度世界樹の外へと出て行くことにした。

 

 世界樹の中に入っていた意識を体に戻すと、動いたことが分かったのか眷属たちが近寄ってきた。

「いかがでしたか?」

「ラックに話した通りだったよ。進化できる状態で止まっていた」

「ということは、このまま進化されるということでしょうか」

「そうなるね。ただその前に色々確認しておかないといけないことがあるけれどね」

 そう前置きしてからすぐにたった今、世界樹の中に入っていた時の身体の状態がどうだったかを確認すると、立って木に触れていたままの状態だったことがわかった。

 それは予想の範疇だったので構わないのだけれど、それだと少し困ったことになる。

 以前の経験を踏まえると、進化には数日から下手をすると半月以上かかる可能性もあるので、体をそのままの状態にはしておけない。

 せめて座っているか寝ているかの状態にしておきたいので、その状態で世界樹の中に入ることができるかを確認しないといけなかった。

 

 そして色々と試した結果、世界樹の中に入るために寝た状態でもどうにかできるようにすることにはできた。

 ただし寝た状態で中に入るには、かなり近くで寝ていないと駄目なことがわかったので、仕方なしに根元にまでベッドを運んでもらうことにした。

 さらに寝たままの状態で世界樹の中に入った場合、体が自動的に寝返りを打ってくれるか分からなかったので、定期的に体を動かしてもらうように頼んだ。

 長期間寝た状態でいた時に床ずれが起こることを警戒したわけだが、本当に必要かどうかはよくわからない。

 

 とにかくそれらの準備を済ませて、ダークエルフの里にいたままのアンネリとアイリに伝言を頼んだうえで、予定通りに世界樹の進化を行った。

 進化そのものについては既に慣れたもので、戸惑うようなことはなかった。

 もしかすると人族ヒューマンに転生していることで何かしらの違いが出るかもと思っていたが、そんなこともなく以前と同じような流れで進化することができた。

 世界樹の中に精神だけでいると時間的な感覚が違っていると分かるのは進化した後のことになるのだけれど、進化中はそんなことは全く思い浮かばずに以前の時と同じように世界樹の中で硬化している魔力を元の状態の戻す作業をひたすらに行うのであった。

 

『世界樹が進化いたしました。<世界樹(大樹)→世界樹(伝説)>』




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m(__)m

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