(17)話し合いの結果
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結局国王との話し合いでは、以前に考えていた妥協点のところで決着がついた。
こちらが譲れない一点はサポーターの扱いについてで、国王――というよりも王国としては他国の影響がないようにしたいという点になる。
こちら側のサポーターの扱いについてはあくまでも主観的な見方になってしまうので、やはり自前でクランを作って一定数は管理できるようにするのがいいだろうということになった。
いくら法律があるとはいえ、あまり国の介入を許すと冒険者の活動自体が自粛されてしまう可能性があるからね。
どこぞの日本でもサブカルに国が関与するとろくなことにならないという話があったけれど、それと同じようなものだろう。
王国側の要求である他国の影響の排除については、しばらくこのままで様子見することになった。
そもそも他国の影響といっても、基本的に冒険者は他国間の移動が保証されている。
そのため他の国の指示を受けて冒険者なりクランなりが丸ごとこの国に来たとしても、表立ってそれを防ぐことはできない。
ただしそれはお互いに同じ条件であるため、相互に影響(監視?)しあっている状態ともいえる。
その状態はここ最近そうなったというわけではなく長年そうだったわけで、今更だといえば今更になるだろう。
だとすると何が問題なのかといえば、王国の本音としてはユグホウラとそれをある程度自在に動かせる(と王国は考えている)俺の存在が気になると言ったところなのだろう。
しかもユグホウラの影響を排除したいのではなく、むしろ自国に有利な取引なりなんなりをしたいといったところか。
さすがにそんな調子のいい話はないのできっぱりと断っておいたけれど、商取引でユグホウラが欲しがるようなものがあるなら取引してもいいとは言っておいた。
ユグホウラは基本的に多くが眷属で構成されているが、エゾにいるダークエルフをはじめとして人族が全くいないわけではない。
そうなると欲しがるような物もあるはずで、ちょっとした交易なら始められるはずだ。
もっともエゾにいる人族は基本的にヒノモトと交易をしているので、敢えてノスフィン王国と交易をするかどうかは分からないと付け加えておいた。
ちなみにユグホウラと交易を始めることで王国に有利なようにも見えるが、実際のところはそんなことはない。
別にユグホウラが交易しているのはノスフィン王国だけに限らず、他でも色々と行っているからだ。
逆にいえばノスフィン王国がユグホウラが欲しがるようなものを提示できなければ、交易はできないということになる。
そんなことまで話はしなかったけれども、敢えて言う必要もないと考えている。
ちなみに、
それだと辺境伯家だけが割を食う形になるので、ユグホウラとの交易の窓口を請け負ってもらうことになっている。
話だけを聞けば辺境伯家が大きな利を得ることになりそうにも思えるけれど、はっきり言ってしまえばユグホウラが欲しがる交易品を見つけるのは中々難しいと考えている。
最初の内は嗜好品なんかを細々とをやり取りするだけになるだろう。
「――というわけだから、予定通りにクランを作ってもらうことになったよ」
「いや。何がどうなって『というわけ』なんだが分からないいんだが?」
脳内整理していた内容を一言で済まそうと考えて言った言葉だったけれども、カールに呆れ気味に反論されてしまった。
さすがに国王と直接交渉をしたなんてことは言えるはずもなくそうなったのだけれど、やっぱり伝わらなかったらしい。
「それもそうか。とにかくクランを作っていいって伝えたかっただけ」
「あったくよ。それならそうと最初から言ってくれれば良かったのに」
「カール、諦めろ。これが俺たちのリーダーだ」
カールと一緒の呼ばれて拠点に来ていたラウが、首を振りながらそう言った。
二人の中で俺の評価がどうなっているのか、一度覗いてみたい気もするな。
「……まあ、いいか。ところでクラン拠点の準備なんかも進んでいるんだろう?」
「ああ。金に糸目を付けなくていいと言ったからかなりの値段になりそうなんだが、本当にいいんだろうな?」
「構わないよ。名義は俺のものということになるけれどね」
「さすがに資金の全部を出してもらうことになるんだからそうなるだろうな」
本来クラン拠点は、一パーティの乗っ取りを防ぐためにもクランで所持することが通例となっている。
ただしそれだと内部分裂を起こしやすかったり色々と問題が出てくるので、いっそのこと個人で買ったものを使おうという話になっている。
形式上はクランが借り住まいするということになるが、主力メンバーとなる『大樹の頂』『朝霧の梟』『夜狼』は既に独自でパーティ拠点を持っているので問題ないはずだ。
クラン拠点にも生活スペースを設けるつもりだけれど、そちらは新規参入者でホテル生活をしていたり冒険者になりたての者に格安で貸し出すことになる。
そうした細々した事務処理をする者が既に頼んであるユグホウラの眷属になるので、金銭的に大きな問題は起こらないだろう。
「このままでいくと当面は倉庫として活用することになりそうな気もするがね」
「俺たちは、だろう? ちゃんと生活するメンバーも出て来るだろうさ」
「あれ? 他に参入する人たちは使わないんだ」
「奴らは奴らで拠点を持っているからな。使うとすれば今まで個人で動いていた奴らじゃないか?」
「なるほどね~。やっぱりパーティ単位で動いていると、拠点を持っていたほうがいいということかな」
「そういうことだな。ヘディンはそういった商売をしている奴らが多いから、長居すると決めた奴らはさっさと自前を拠点を持ってしまうな。むしろパーティ用の拠点になりそうな建屋はまだ余っているんじゃないか?」
「まだまだ冒険者を受け入れる余地はあるってことだね」
「冒険者でもっている町だからな」
冒険者という職業は、割と簡単なギルド登録さえしてしまえばなれるというお手軽さがある反面、ちょっとしたことで失敗するとすぐに命に結び付くという怖さもある。
それため人の出入りが激しく、中々簡単に数を増やすということにはならないようだ。
それにしたってもう少し全体のレベルが上がってもいいんじゃないかと思わなくもないが、そこまで考える必要はないか。
――いや。魔力の循環という意味を考えれば、冒険者を増やして魔物の討伐数を増やした方が良いのかもしれない。
ふと浮かんできた思い付きだったけれども、マナと魔力の関係性を考えるとあり得ないことではないと思う。
もしかしたら掲示板で似たような話がされているかもしれないので、後で戻って確認する必要があるだろう。
もしこの思い付きが正しければ、停滞している攻略状況も進められる可能性がある。
問題はそれをどうやって検証していくかだけれど、そこはプレイヤーの知恵に期待したいところだ。
少し思考が逸れてしまったが、とにかくクランを作ることになるのは決定した。
あとは、事前に準備していた通りに進めて行くだけになる。
具体的に動き始めるのはもう少し先にだろうけれど、作るかどうかも分からなかった状態で進めていた時よりも早く進めることもあるはずだ。
その辺りはカールとラウに任せてしまっているけれども、話を聞いている限りでは問題ないだろう。
その二人からは、既に加入を決めているメンバーにいずれあってほしいと言われているけれど、こうなってくるとすぐにでも会うべきだろう。
そのことをカールとラウに伝えると、すぐに話をしておくと言っていた。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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