(13)対応策

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 王都への諜報の結果の情報が入ってきた。

 結論から言ってしまえば国王とその側近による画策だったようで、より詳細にいえば他国の介入を懸念してのことだったらしい。

 懸念というよりも、実際にヘディンに対する他国の工作は常に入っていて、そこから俺のことが漏れるのではないかと考えているようだ。

 例の男爵についても直接的ではないが、他国の関与も多少なりとも認められるとのこと。

 それらの報告を聞いた第一印象としては、だからどうしたんだというところだ。

 ノスフィン王国としては俺を繋ぎとめておきたいのだろうけれど、そんなものに縛られて生きていくつもりはない。

 好きなタイミングで旅にも出るだろうし、場合によってはヨーロッパ方面を出てヒノモトに向かうこともあるだろう。

 たまたま二周目のスタートがノスフィン王国だっただけで、この国にこだわるつもりは全くない。

 

 国王に対しては、今後どうするべきかなどは特に言わなかったらしいけれど、それで特に問題ないと考えている。

 この先も辺境伯家を使って余計な介入をしてくるようであれば、サポーター問題が落ち着いたところで国を出ることを考えてもいいかも知れない。

 ただその場合はアンネリのことがあるので、先に相談しておく必要はあるだろう。

 それにトムやハロルドは奴隷の主人としての義務が生じているので連れて行くけれども、オトとクファについても考えなければならない。

 

「――というわけで、やっぱりというか王家の介入があったみたいだね」

 俺のその報告に、アンネリは深いため息を吐いていた。

「そう。となるとこれからもお母様は言ったとおりに動く可能性があるのね?」

「どうだろうね。これから先、国王がどう対応してくるか分からないけれど……もしかすると手を引く可能性もあるかな」

「手を引く……? 何をしたのよ!?」

「こっちは特に何かしたつもりはなかったらしいんだけれどね。向こうが脅されていると感じ取った可能性はあるらしいよ?」

「あるらしいって……国王を脅してどうするのよ」

「今更どうしようもないかな。そんな大事にはならない……と思うよ。たぶん」

 楽観的に言った俺を少し睨んだアンネリだったが、すぐに諦めた様子で肩を落としていた。

 

「もういいわ。それよりも、これからどうするつもりよ?」

「それもあって相談したいんだけれどね。とりあえずカールとかラウ次第だけれど、結果次第ではこの国を出るのもありかなって」

「相談ってそういうことね。勿論私も着いて行く……と言いたいけれど、さすがにすぐに答えは出せないわね。ヘリのこともあるし」

「だろうね。こっちもオトとクファのことがあるから、今すぐ決めるわけじゃないしね。そもそもヒルダさんの出方次第だろうから、まだまだどうなるかは分からないよ」


 辺境伯を通して国王が変わらず男爵の問題に手を入れようとするのであれば、必ずサポーターは巻き込まれることになる。

 それが良い結果になったとしても悪い結果になったとしても、これ以上この国にいても良いことはないだろうとも思えてくる。

 ほとぼりを冷ますためにも、一度世界樹を経由してからヒノモトを巡っても面白いかもしれない。

 今はまだ五百年たってヒノモトがどう変わったか敢えて詳しくは聞いていないので、楽しんで見ることができるものはたくさんあるだろう。

 

 少し結論を急ぎ過ぎてしまったけれども、とにかく今はヘディンの町にいるサポーターがどうなるのかある程度まで見守っていくつもりではある。

 さすがにこのままの状態で放り出していくつもりは全くない。

 そのためにも、まずはカールやラウと話をするべきだと考えている。

 

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 カールとラウに来てもらってすぐに、アンネリに話したことと同じことをそっくりそのまま二人に話した。

 国王から直接情報を仕入れるルートがあると知った二人は驚いていたが、それ以上に王命に近い形でヒルダさんが動いていると知って頭を抱えていた。

 ヘディンの町にいる孤児たちの間では未だにヒルダさんが伝説のように語られていることもあって、本格的にサポーターを使ったクランの設立がされることになると懸念しているらしい。

 

「――だが、考えようによってはちょうどいいともいえるか」

「どういうことだ、ラウ」

「どのみちサポーターがこのまま中途半端な存在でいては駄目だと、前から言っていただろう? 『激流』の手が入ったクランができるのであれば、悪いようにはならない……と期待したい」

「おいおい。お前だって前科があることを知らないわけじゃないんだろう?」

「……そうなんだがね」


 カールとラウの会話に、俺とアンネリは顔を見合わせてから首を傾げた。

「ちょっと待った。カール、ラウ。ヒルダさんの前科って何?」

「なんだ、二人は知らなかったのか? 前に『激流』と子爵の間でちょっとしたいざこざがあったことは知っているか?」

「それなら多少のことは」

「実はそれがサポーターに絡んでのことでな。詳しいことは俺たちにまで知らされていないが、結果として子爵はサポーターに手を入れるのを諦めて『激流』は町を出ることになったそうだ」

「あ~。なんだろう。実に怪しい話だね」

「そうだろう? もっとも男爵みたいにサポーターの扱いが悪くなるようなことではなかったらしいが……それ以上のことは俺たちも知らないな」

 子爵とヒルダさんの間で当時何があったのかは極秘扱いになっているらしく、当時のことを詳しい冒険者たちも口を閉ざしているらしい。

 

 二人の懸念はもっともだと納得した俺たちを見ながら、今度はラウが何かを思いついたような顔になってこんなことを言い出した。

「いっそのこと俺たちでクランを作ってしまったほうが早いかも知れないな。それなら全員は無理でも一部は今まで通りの扱いになるだろう?」

「おいおい。言いたいことは分かるが、それが無理だったから今があるんだろう?」

「わかってる。俺とお前じゃそりが合わないことも多いからな。どっちかが上に立つのは無理だろう。だが、今は状況が違うだろう?」

 ラウは、そう言いながら何故か俺を見てきた。

「まさか、キラを上に立たせるってか? 無茶を言うな。こいつはヘディンに根を下ろすような奴じゃないぞ」

「そんなことはわかっているさ。だが、たまに俺とお前の仲裁をするくらいなら出来るんじゃないか? 遠距離にいて連絡を取る手段もあるんだろう?」

「お前な……。いや。言われてみれば確かに」

 ラウの言葉に説得されかかっているカールが、期待の混じった視線でこちらを見てくる。

 

 予想外の展開に一瞬戸惑ってしまったけれども、よくよく考えてみるとそれも有りかと思えてきた。

 これでヘディンに縛り付けられる案を提示されたら速攻で断っただろうけれど、ラウが提案した程度なら確かにできなくはない。

 場合によっては転移装置を使ったりレオの背に乗って移動すれば、そこまで日数をかけずにどこへでも往復することも可能だろう。

 問題はカールとルフがそれを良しとするのかどうかだけれど、当人たちがそれで良さそうな顔をしているのでいいのだろう。

 

 とはいえさすがにすぐに結露を出すほど考えなしではないので、一応前向きに検討するというどこかの政治家的な返答をしてその場は躱しておいた。

 ただしより細かい話も色々と意見を交換したので、こちらが本気で検討していることは理解されただろう。

 それにカールやラウもパーティ仲間の意見を統一しなければならないこともあって、どちらにしても今この場で結論をだすわけにはいかなかった。

 いずれにしても、場合によっては俺たちが新しいクランを作る可能性を考えて動き始めることになるのであった。




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m(__)m

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