(5)領土ボス戦
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レオの足と転移装置を使って移動した先は、こちらでは阿弗もしくは阿弗地域と呼んでいるアフリカ大陸だった。
阿弗地域は一周目だった時は、いわゆる喜望峰からごく一部だけ攻略を開始していたが、今でもゆっくりとその勢力を広げている地域になる。
もっとも本格的に攻略しているというわけではなく、その時々の動きによって変わっているようだ。
領域ボスだと勝手に向こうから突っかかって来ることも多いので、そうした領域が積み重なって流れで領土や公領を追加していっているとのことだ。
それでも五百年という年月があれば大陸すべてを攻略していておかしくはないと思うのだが、そこまで進んでいないのは敢えて必要以上に攻略する必要はないと止めているからだろう。
管理領域が広がればそれだけ運営していくのも難しいので、トップがいない組織としては混乱を避けるためにもそこまでの急拡大は望んでいなかったというわけだ。
俺がいない間のユグホウラは眷属たちの合議制のような体制で運営していたようなので、眷属一人だけに力を持たせるのを避けたというのもあるはずだ。
その辺りは、一周目の俺のこともそうだが、眷属トップと目されていたアイがすぐに眠りについてしまったことも影響しているのだろう。
一周目の時は世界樹の妖精だったのでシステム的に呼びだせばそれで良かったのだが、今はその時と比べて一歩離れた存在になっている。
ではどうやってボスを召び出すのかと思えば、なんと例の精霊樹からもらった枝を使って間接的に呼び出せるようになっている。
精霊樹からもらった枝だが、二周目に入って初めて世界樹と触れた時にその辺りもアップデートされていたらしい。
これまで必要なかったのであまり深くは確認していなかったのだが、転移装置を使って世界樹の元に行くとすぐにそのことが分かった。
というわけで何の懸念もなく、目的地へと向かって領土ボスを召び出した。
その領土ボスは人型で、サイクロプスとかギガンテスとかのような巨人系の魔物だった。
一つ目ではないのでサイクロプスではないと断言できるのだろうが、三つ目の場合はどう呼ばれるのか分からないのでサイクロプスの名前も浮かんだ。
そもそもこの世界の人族の認識ではサイクロプスもギガンテスもどちらかの亜種とか変化種と認識されているので、この巨人もその一種となるはずだ。
巨人系の魔物が相手ということは呼び出してみるまでは分からなかったけれど、ちょうどいい相手だったともいえる。
今のところ人族相手に戦ったことはないが、この先何かの拍子に戦いになることはあるはずだ。
ずっとヘディンのダンジョンに籠っていればそんなことも起こらない……と思いたいところだけれど、そうも行かないだろう。
いくら人型とはいえ、人と魔物では動きも違うと分かっているけれど、それでも何もしない状態でいるよりはましのはず。
――というわけで召び出した魔物を相手に早速戦闘が始まった。
戦い方はいつもと変わらずに、まずは緑の魔力を使って枝根動可を行う。
さすがに今の自分の強さで領土ボスクラスの魔物を相手にしてもすぐに動きを止められるわけではないが、動きが鈍くなるのは間違いない。
それに自分自身に枝が絡みついて来るというのは魔物にとってもいやらしく、まずはそちらの対処をするというのも大きい。
領土ボスを相手に一撃で仕留められるような魔法でもあれば別だけれど、残念ながらそんな魔法は今のところ身に着けていないのでやっぱりいつも通りに戦うことにする。
それに魔法を使って相手を絡め取ろうとしているのはいいけれど、相手もただ黙ってその魔法を喰らっているわけではない。
時には驚異的なスピードで近寄ってこようとしたり、遠距離の魔法を使ったりしてあの手この手でこちらの動きを制限して来ようとする。
そうした動きに対処しつつこちらも枝根動可を使っているので、中々思うようにいかないのが現状だったりする。
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< Side:ラック >
主が領土ボスと戦うと言われた時には驚きましたが、戦う様子を見てこれならなんとかなるだろうと安心しました。
勿論今の主では決して油断の出来る相手ではないのですが、少なくともあっという間に潰されてしまうほどの実力差はなさそうです。
むしろもしかしてこのまま行けるのではないかと思わせるくらいに戦えているほうが、私にとっては驚きです。
新しく生まれてきた主のこれまでの戦いを見ていた限りでは、ここまでとは思っていませんでしたから。
主の真骨頂は魔力操作そのもので、実力の見極めも難しくされているのは以前と変わらないということでしょう。
「――少し動きづらそう……かな?」
万が一のことを考えていつでも介入できるように見ていた私に話しかけてきたのは、主が領土ボスと戦うと聞いてやってきたアイ様でした。
「言われてみれば、確かに。ドルイドは神官職と聞いておりましたが、主はよく動き回られますから」
今の主の職であるドルイドは、基本的に魔法使い系だと思われますがそもそも今の主は自ら動き回られることを好んでいます。
以前の時も縦横無尽に飛び回っておられたので、その名残でもあるのでしょうか。
ですがその分ドルイドとして身に着けている神官服がいささか動きを制限しているように見えます。
これは格下を相手に戦ってきたこれまででは見つけることができなかった欠点と言えるでしょう。
アイ様も同じことを思ったのか、ご自身のあごに手を当てながら何やら考え始めました。
「――一度ご主人様に来てもらったほうがいいかもしれない」
「装備を整えられますか。ですが神官服を変えられるのですか?」
「見ている限りでは、別にあの形に制限があるようには見えない。むしろ魔力の通りが重要そう。それも含めて考えてみる」
「なるほど。そういうことなら確かにそれがよさそうですね。そうなるとこの場にシルクがいないのは少し痛手でしたか」
ユグホウラの布に関わる全般を担っているのは蜘蛛種のシルクになります。
そのシルクがこの場にいればまた違った意見も出て来るのでしょうが、残念ながらシルクは主の指示に従って別の場所で仕事をしています。
どちらにしても主の戦いが終わってすぐに服ができるわけではないので、この後アイ様と話し合って決まるのでしょう。
そんなことを話している間に、状況は僅かずつ変化していきました。
「――どうやら無事に主が勝てそうですね」
「ボスも悪くないけれど動きずらそう。あれだけの数の草とか枝を躱すのは至難の業」
「もう少しでも各が上ならどうにかできたのでしょうけれど、領土ボスクラスだとこの程度ということでしょう」
「昔は私たちもそうだった」
「全くです。今の私たちがあるのは、紛れもなく主のお陰です。――おや。完全に足を止めてしまいましたか。あれだけ絡みつかれるといかに力があってもどうしようもありませんか」
既に領土ボスは、大量の枝にその体を縛り付けられて動きを完全に止めております。
もう少しかかると思っていたのですが、主も戦いの最中にきっちりと学んでいたようです。
そういう意味では、力押ししかできない巨人系だったので相性が悪かったとも言えるかもしれませんね。
とにかく主の勝ちはもう確定したといってもいいでしょう。
ここで近づいて行っても主に怒られることはないはずです。
そんなことを考えて近づこうとしましたが、近寄ろうとしたその次の瞬間には主は領土ボスの首を落としていました。
さすがにその状態から回復できるような相手ではないので、これで見事に主の勝利…………?
――あ、主、一体なにが!?
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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