(5)合同探索①
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合同探索の日程は一週間後と決まった。
大人数でダンジョンを探索する場合は利益のことを考えて長期探索になるのが普通なのですぐに予定がつくのかと考えていたのだが、どうやらカールは初めからそのつもりで話を持ってきたらしい。
もしくはもともと合同探索を予定していたところに、俺たちが入るように調整したのかのどちらかだろう。
それはともかく、一週間後に向けてこちらも準備を進めなければならない。
……のだが、色々と問題が浮上してきた。
その中で一番大きいのは、例の馬車を使うかどうかというものだった。
あの馬車は明らかに突出した技術で使われているので、公になると色々と問題を呼び込むことになりかねない。
とはいえ長期探索でできる限り多くの素材を採取できたほうがいいのは確かなので、あの馬車はそういう意味ではうってつけともいえる。
「――さて、どうしようか」
「私はどちらでもいいわよ? あると楽になるのは間違いないけれど、ばれると面倒だというのも本当だからね。それに、このままずっと隠し通すことは不可能だと思うわよ?」
「そうなんだよなあ……。長距離移動するときは使うわけで、いずればれるときは来るよね。――よし。この際だからばれることを前提に使うことにしようか」
「そう。それは私も嬉しいわ。となるとそれ用に準備を進めないといけないわね」
「そうだね。といっても買うものって、消耗品とか食料とかになるかな?」
「そうね。いっそのこと、時知らずの魔道具も使う?」
時知らずの魔道具というのは物を中に入れると時間停止する魔道具の総称で、作った食料を保管しておくのに最適な道具のことだ。
勿論、そんな魔道具がありふれているわけもなく、国宝とまではいかなくとも各貴族で家宝クラスになりそうな魔道具になる。
「それは……いや、それこそ隠せないか。わざわざまずい食事をする気にはならないし。持って行くことにしよう」
こんな会話をしつつ準備を整えて行ったが、一週間の間、準備以外何もしなかったというわけではない。
例のモンスターハウスの調査をしたり、トムとの連携のために二度ほどダンジョンに潜った。
モンスターハウスに突っ込む際には、トムが「モンスターハウスに突っ込むなんて……」と呟いていたが、そこは慣れてもらうしかない。
ちなみに歪みは普通に発生していたが、フロアボス的な魔物は出現しなかった。
ただ以前と同じような状態には近づいていたので、もしかするとまた出現することになるかも知れない。
時間経過でそうなるのか、部屋の攻略状況でなるのかは不明だが、まだじっくりと調査する必要はあるだろう。
この一週間でトムはかなり慣れてきたようではあるが、まだ時折固まる時がある。
そのたびにヘリに注意されたりしているが、こればかりは擁護することはできない。
なにかあるたびに驚いて固まっていては、トム自身の命に関わることもあるからだ。
人によってはすぐに達観してしまって状況に流されるままに生きる出来ることもあるのだが、残念ながらトムはそこまでの人生経験は積んでいないようだった。
年齢でいえばまだ十五にもなっていないので、仕方ないといえば仕方ないのだが。
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そうこうしているうちに一週間が経って、俺たちはダンジョン傍にある少し広めの場所に集まっていた。
今回の合同探索は三チーム合同での探索になるので、全員が集まるとかなりの大人数になる。
しかも正規パーティだけではなく、それぞれのパーティでサポーターを連れてきているのでさらに人数が増える。
具体的な数は、正規パーティが三かける六人で十八人とサポーターが八人の計二十六人になる。
さらに俺たちが馬車を用意したように、他の二チームも同じように馬車がそれぞれ一台ずつあるので、かなりの場所を取っている。
もっとも馬車を用意している探索チームは俺たちだけではないので、馬車があること自体はそこまで珍しい光景ではない。
さすがにこれだけの人数がいるというのは珍しいようで、個別に探索するためにダンジョンに向かっている冒険者パーティからそこそこ注目されていた。
ただしこれだけいる人数の三分の位置がサポーターだとわかると、すぐに興味をなくすような顔になっていた。
俺たち以外の二つのパーティは、カールがリーダーになっている『朝霧の梟』と『夜狼』というパーティである。
『夜狼』のリーダーであるラウもまたヘディンで元孤児だったようで、カールと繋がりがあるのはその頃からのようだ。
当然のようにサポーターを経てから冒険者になっている組で、カールと同じようにサポーターの仕事にはかなり精通しているとのこと。
ちなみにカールの弁だが、冒険者ランクは今のところ『朝霧の梟』が勝っているが、サポーターとしての能力はラウの方が完全に上とのことだ。
お互いに軽く挨拶を済ませたあとは、ダンジョンに潜る順番を決めた。
俺たちはヘディンのダンジョンに潜っている回数が一番少ないのは勿論のこと、本格的に馬車を使って探索するのは初めてのことだ。
そのため馬車を使っての探索に慣れている他の二チームが前後に配置された。
そして『朝霧の梟』と『夜狼』では後者の方が探知が得意らしいので、『夜狼』が前を担当して『朝霧の梟』は後ろを担当することになった。
正直なことを言えば俺たちの馬車を引いているのは、レオともう一頭の馬系の魔物なのでそこまで気を使ってもらう必要もないのだが、今回は提案通りに動くことにした。
彼らは彼らで考えていることがあるのだろうし、実際馬車を使ってのダンジョン探索に慣れていないのは本当のことなので、先輩冒険者の言うがままにしておく。
レオであれば上層に出て来る魔物であれば遠距離攻撃を使ってすぐに撃退できるだけの能力はあるのだが、そこは敢えて言わずにおいた。
そもそも今回の合同探索は、オトとクファを含めた初心者サポーターの訓練も兼ねているそうなので、あまり「普通」から外れた行動をするつもりはない。
この辺りのことは事前にアンネリと話し合って決めておいたことなので、変にでしゃばる必要もなく決められたとおりに彼らのやり方を見て覚えるつもりだ。
そんなこんなである程度の話し合いを終えて、朝の混雑を避けてからゆっくりとダンジョンへと潜った。
馬車に関しては動かす担当がいるので、それぞれに一人ずつが乗り込んで御者をしている。
ちなみにサポーターは御者を担当することもあるそうで、俺たちはトムに御者を任せている。
さすがに馬車は縦に並んで進んでいるが、それでも周囲には十人以上の冒険者が歩いているわけで、横幅はかなり広くなっている。
それでも十分に動けるくらいの道幅がある時点で、このダンジョンが冒険者にとってはかなり余裕のある造りになっていることがわかる。
たとえ馬車で移動していても魔物は関係なく襲って来たが、それらの襲撃は前後の二パーティであっさりと撃退していた。
一度こちらに戦闘を任せられてすぐに撃退したのだが、それを見てすぐに自分たちだけで討伐するようになっていた。
戦闘に関しては、特に問題ないと判断されたのだろう。
勿論枝分かれしている道などで隊列の横から攻撃された場合は、こちらで対処することも何度か起きていた。
訓練用に着いて来ているサポーター(候補)は、戦闘が起きるたびに忙しそうに動いていた。
そうこうしているうちに中層にまでたどり着いたのだが、初日で着いたのはほとんど寄り道をしないで通ってきたからだろう。
何よりもサポーターの働きが良くて、戦闘後の処理に時間を取られなかったことが大きい。
これだけでもサポーターを入れる価値があるといえるが、本番は中層以降だと言われていたのでこちらも改めて気を引き締めることにした。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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