(10)大まかな現状

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 世界樹の中での邂逅を済ませた後は、そのままホーム(世界樹近辺)にある建物で一泊することにした。

 このままモルテに戻っても町に着くころには真夜中になってしまうので、それよりはこれまでユグホウラであったことや世界の情勢なんかの話をした方が実りあると考えたためだ。

 俺のために用意してくれた屋敷に入って席に着き、眷属全員が揃っているのを見て――ふと疑問を覚えた。

「――あれ? 眷属全員? ……って、なんでゴレムもいるの!? というか、ちっさ! その大きさはどうしたんだ?」

 一周目の俺が死んだときは、ゴーレムのゴレムはその巨大な体を小さくするなんてことはできなかった。

 魔法を使えば何とかなるんだろうという予想はつくが、一種目の人生でかなり努力してそれでもできなかった芸当だけにかなり驚いた。

 ふと横を見れば、同じようにアイが驚きの表情になっている。

 長い間眠りについていたアイも、このことは知らなかったようである。

 

 聞きたかった話からいきなり脱線してしまったが、ゴレムの小型化はやはり魔法によるものだった。

 最初は全くできなったようだが、数百年という年月をかけてようやく小さくなることが出来るようになったそうだ。

 といっても小さくなれる時間は最長でもまる一日ほどで、その後一週間はその魔法は使えないらしい。

 そのため一周目の時と同じように、ホーム周辺の警護という役目は変わっていないそうだ。

 ちなみに、帰還の時に使っていなかったのは以前と変わらないという演出をしたかったとか。

 

 そのままの話の流れで、現状の世界情勢も確認することにした。

 眷属たちが先を争うように話をしているところを見ると以前と全く変わっていないと思えるが、話が進むにつれてやはり大きく変わっているところもあると感じる結果となった。

 眷属たちの性格的なところはあまり変わっている様子はないのだが、時の流れによって強さ(特に戦闘能力)的なところが変わっているそうだ。

 加えていえば、眷属たちも時折アイのように十年以上の永い眠りを挟んでいたりしたようで、これまでの間ずっと活動を続けていたというわけではないらしい。

 

 そんな眷属たちの話を纏めると現在の世界情勢は、大きく変わっているところとほとんど変わっていないところがあるようだ。

 まずユグホウラの支配領域だが、全体で見れば俺が一週目を終えた時と比べて小さくなっているとのことだった。

 その理由として大きかったのは、ユーラシア大陸、特にヨーロッパ方面の準爵位持ち(ユグホウラの仲間的存在)だった魔物が俺がいなくなったということでユグホウラから独立してそれぞれ独自に領土を持ったようだ。

 そもそも俺が一周目を終える間際に眷属たちに伝えた言葉の中に、準眷属が独立を望んだ時には無理に止めなくていいと言ったからこそ起こった変化だ。

 

 その流れで、アフリカ大陸や中央アジア辺りも領域を減らしている。

 さらにアメリカ大陸の北大陸は以前のままだが、半分以上支配していた南大陸に関しては南北を分けるあの細い陸地にまで押し込まれているそうだ。

 ただこれに関しては、主に領域を統治していたファイが遊びも交えて敢えてそこまで後退していると話していた。

 なんでも俺が一周目を終えた後に南大陸で新しく魔物の爵位持ち候補が何体か生まれたらしく、その魔物がどう育っていくかを観察していたらしい。

 

 今のところアメリカ大陸の南側には三体の爵位持ちがいて、それぞれ領域(土地)の奪い合いをしている。

 ユグホウラの領域と接している魔物は一体だけだが、時折海を渡ってそれぞれ別の二体が領域を奪おうとしにくることもあるそうだ。

 ユグホウラのように船の開発をしているわけでもないのにどうやってと思わなくもないが、南側にいる三体は対ユグホウラのに関しては共闘することもあるそうで、陸地を通って来るそうだ。

 そんな共闘をするくらいなら最初からまとめて来ればいいのにと思わなくもないのだが、それぞれ思うところがあるのだろうとファイは笑っていた。

 

 ちなみにこの世界のアメリカ大陸とオーストラリア大陸、オセアニア辺りには人族が住んでいないことは以前の人生でも分かっていた。

 陸地に魔物がいる以上、海にも魔物がいて海での移動が簡単にできない世界だからこそだろう。

 その状況は以前よりは船の開発が進んでいる今でも変わらない――どころか地球の大航海時代のように新航路発見を目指す国や組織はほとんど現れていないらしい。

 自然災害による被害に加えて、魔物による襲撃があるだけに、そんな賭けに出ようとすることもないようだ。

 

 そもそも既存の航路でさえ安全とは言いがいた状態なので、まずはそちらを強化することに重点が置かれているとのことだ。

 それなら安全な航路を探すために大洋横断を目指してもよさそうな気もするのだが、今まで一隻も帰ってきてないことからユーラシア大陸の東や西側には陸地は『無い』というのが一般的な考え方らしい。

 もっとも長距離を飛空できるドラゴンを始めとした魔物は別に大陸があることを知っているだろうが、そうした魔物が人族と会話を行うこと自体稀なので知られずに終わっているようだ。

 たとえ魔物経由でどこかの国の王に話が伝わったとしても、魔物の戯言と片付けられて終わるだけという理由もある。

 

 勢力を減らしているこれらの大陸とは逆に、勢力を伸ばしている――というよりも新しく進出してすべてを領域化した大陸もある。

 それがどこかといえば、ある意味では世界の果てともいえる南極大陸だ。

 ただし俺がこの世界に転生させる前の世界では不毛の大地だった南極大陸だが、こちらの世界にはごくわずかに魔物が生息しているそうだ。

 そうした魔物は歯向かってこない限りは討伐しないようにして、なんなく大陸の制圧に成功したというわけである。

 

 結論からいえばユグホウラの支配領域は、単純な領土の広さでいえば減じている。

 ……のだが正直なところ予想よりは減っていないという感想を持った。

 俺が一週目を終えると覚悟を決めた時点では、もっと領域を減らしていてもおかしくはないと考えていた。

 それが今のような状況で収まっているのは、そもそも爵位持ちの魔物を仲間にしてこなかったからともいえる。

 

 もっとも、仲間にのではなく、仲間にといのが正しいのだが。

 基本的に爵位持ちの魔物は我が強く、他の魔物となれ合うということをしないので、こちらが見つかり次第敵対していくということがほとんどだったのだ。

 そういう意味では最初から話し合いに応じたタマモは、例外中の例外だったとも言えるだろう。

 勿論そうした魔物が他にいなかったわけではないのだが、それらの魔物のほとんどは今は国家の守護獣として収まっているそうだ。

 

 何故守護獣なんてものが生まれてきたのかと不思議だったのだが、ここで話を聞いてようやくその理由が判明した。

 その道が各自選んだ道だというのであれば、特にどうこう言うつもりはない。

 そうした守護獣とどう応対していくかも既にユグホウラの中にノウハウとして蓄積しているので、俺がどうこう言うつもりは全くない。

 もしここで俺がユグホウラの運営に口出しをし始めればそれは以前の人生と変わりがなくなってしまうので、余程のことが無い限り眷属たちに完全に任せるつもりでいる。

 

 そんなユグホウラと世界の現状を眷属たちと話した後は、広場にある温泉に浸かってからきちんと整えられたベットに入って就寝となった。

 ちなみに翌日はまたモルテの町に戻ることになるのだが、誰が俺と一緒に着いて行くのかということで眷属同士でひと悶着があったのだが、彼らの名誉のために心の中に秘めておくことにする。




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m(__)m

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