閑話1 露店風呂でのとある一幕

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「んあ~~~~。……やっぱり露天風呂はいいですねぇ……」

「完全同意だな。苦手という奴もいるにはいるが、そこは趣味趣向の範囲内か」

「ですね。無理に押し付けても入らない人は入らないので……というか、このサーバに風呂が嫌いな人っていますか?」

「どうだろうな? さすがに全員に確認を取ったわけじゃないが、確かにいなさそうな気はするな」

「ハルさんみたいに毎日入り浸ることはないにしても、少なくとも数日に一回は必ず来ているでしょう」

「だな。というか、木の人に言われたくはないな。二周目を開始するなり毎日来ているじゃねーか」

「ガハハ。そこはまあ、お互いさまってことで」

「うむ。風呂好きで悪いことはないだろうしな」


「――それにしても、広場に顔を見せるなり騒がれて少し驚いたんですが」

「そこはほら。有名人の役得ってやつだ」

「役得……なんですかね? そもそも百人くらいしかいないのに、有名人も何もないと思うのですが」

「確かにそうかもなあ。全員顔見知りみたいになっているからな。――そういや二周目、三周目になって顔を変えるプレイヤーは少ないな?」

「少ないというか、私は一人も知らないのですね。やっぱり広場での付き合いもあるので変えづらいのでは?」

「そうか。それこそ百人しかいないから名前と顔を変えてもすぐに特定されそうだしな」

「折角頑張って美形にしても、すぐに元の顔が知られてしまうという……」

「そう考えると、下手に顔を変えるのも考えものか」

「別にそれで揶揄されたりはないでしょうが、なんというか今更感はありますね」


「顔か……既に何十年と付き合い続けなきゃいけないと分かっているからなぁ。それを考えると下手にいじると違和感が凄いんじゃないか?」

「それもあるでしょうね。そういえば、掲示板では確認できませんでしたが、寿命の話はなにか変わりがありましたか?」

「いんや。特にないな。そのまま種族ごとの寿命と変わらないって見解だ。ヒューマンだと七十年くらいか」

「七十……長いか短いか判断に困りますね」

「元の世界の平均寿命を知っているとな。こっちだと食生活やら医療レベルの問題があってそこまで伸びないのは分かるが」

「それを考えるとむしろ長い気もしますが……やはり治癒魔法の存在は大きいですか」

「あとはポーション系だな。それを考えると王族やら貴族が腕のいい薬師を囲い込むというのも理解できるな」

「むしろそれをすると反発されると思うんですがね」

「こき使ったりするとそうなるだろうが、当人が満足していればそれも少ないんじゃないか?」


「完全に隠れるのも無理がありますか。それなら出来る限り良い条件でと思うのは人として当然でしょうね」

「ただ国に囲われると逃げるのも難しいだろうがな」

「それは薬師に限らずどんな職業でも同じではありませんか?」

「確かに。となるとやはり魔物の卵を買って獣魔を作ってから山に引きこもるというのはありか」

「強い魔物が引ければそれでもいいのでしょうが、折角の世界で人と接触しないというのも寂しいでしょうね」

「それはな。いっそのこと絶対防御できる建築物なんかが作れればいいんだが」

「それはそうでしょうね。となると魔道具系ですか。プレイヤーは少なかったですよね」

「ああ。もっとも広場ができたことと、二周目以降で技術スキルが発現しやすいというので生産系を選ぶプレイヤーも増えているみたいだな」

「戦う技術もある生産職ですか。確かにありといえばありでしょうね」


「ただ普通の生産職よりは戦えるというだけで、やはり本職には敵わないみたいだがな」

「それは仕方ないでしょう。それに、一周目で失敗したので二周目は生産職でと考えるのはわからなくはないです」

「それな。戦闘職と生産職両方につくとどっちつかずになるとも言われているが、その辺はどうなのか」

「一本に絞って極めるというのもありでしょうからね。結局は当人のやる気次第なのでは」

「やはりそこに落ち着くか。あとはお前さんのお陰でお勧めも相変わらず人気だからな。狙った職についたわけじゃなく生産職になったというプレイヤーも多いだろうな」

「それは逆のことも言えるのでは?」

「それもそうか。むしろ人外系が増えたという見方もあるな」

「人外系は、やり方によっては生産系にもなれますからね。問題があるとすれば初動の難しさですか」

「そうだな。最初は動くのも苦労するらしいからな。ただそれも魔力操作を鍛えればどうにかなるという誰かさんの助言のお陰でクリアできるらしいがな」


「魔物は人族より多くの魔力を持っているからこそという見方もできますからね。何よりも魔力操作は重要ですよ?」

「それは分かるが、やはり地道な訓練ってのはできる限り避けたいんじゃないか?」

「気持ちは分かりますが、それだとどの職についてもそこそこで終わりそうですね」

「そうだろうな。鍛冶系の俺だって魔力操作は必須技能の一つだしな」

「そもそもが魔力の有る世界ですからね。その扱いに長けていないと、どうしようもないというのは分からなくもないですね」

「確かにな」

「それに二周目を始めてわかりましたが、一周目の時の感覚を覚えているお陰か訓練が非常に捗りますからね」

「それな。まだ一周目の魔法使いたちが頭を抱えていたが、二周目に移った一部のプレイヤーは実感していたみたいだな」

「魔力操作の感覚を知らずに訓練するのと知っている状態で訓練するのでは、全く違うのでしょうね」


「――そういや木の人は二周目もお勧めみたいだが、どういう感じだ?」

「どうと言われてもまだ始めたばかりですからね。あまりよくわかりませんよ」

「それもそうか。これでまた活躍できるようならお勧めを選ぶぷれいやーが一気に増えそうだが」

「そうなんでしょうね? ただ今でも相当数いるようですが?」

「だな。体感的には六割以上はお勧めだと思うが、やはり思った職に就けずに苦労するプレイヤーも多いようだな」

「人外系と同じで初動で上手く行けばといったところでしょうからね。初動でつまずくときつい……というのはお勧めじゃなくても同じですか」

「確かにそうだな。それにしても一周目が上手く行っていたのに、よく自分で二周目を行く気になったな」

「それですか。……うーん。やっぱりまるで変化がなかったというのが大きいでしょうね。一言で言ってしまえば飽きてきたということになるのでしょうが」

「いや。それだけで人生を終わらせる決断はできないだろう? 木の人なら猶更だ」


「あ~。眷属たちには色々と迷惑をかけてしまいましたからね。そういう意味では、やはり心は痛かったです」

「だろうな。家庭を持っているプレイヤーも多いだろうから、その辺は今後の課題になっていくだろうな」

「そう考えると普通に寿命を迎えてというのが一番なんでしょうね。まああちらの世界では、冒険者がいきなり命を落としてしまうなんてことはよくあることでしょうが」

「まあな。だからこそ家庭を持った者はその時を覚悟しているというが……それはどの職についていても同じか」

「魔物がいる世界ですからね。そもそも人の命が安いというのもありますか」

「確かにな。田舎に行けば行くほど魔物の被害は大きくなるからな。何年かに一度はどこそこの村が消えたなんて話を聞くくらいだ」

「技術が発展していないというのもあるのでしょうが、人族に厳しい世界ですね」

「いっそのことプレイヤーが発展を促す……というのも難しいか。注目されるという点において」

「でしょうね。下手に耳目を集めるとそれだけで危険度が跳ね上がりますから」


「やれやれ。どっちにしても厳しいことには変わりないか」

「それはこの世界で生きていくと決めた時から分かっていたことでは?」

「それもそうだ」




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m(__)m

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