(3)色々準備
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ついつい本来の目的とは違った話で盛り上がってしまったが、ここに来たのは今の自分に見合う武器防具を手に入れるためだ。
そのことをハルに伝えると、何やら難しい顔をして腕を組んでしまった。
「――おや。どうしましたか?」
「いや。話を聞いた限りでは、今の職業はドルイドということだっただろう?」
「そうですね」
「掲示板でも一時盛り上がっていたから確認してみたんだが……」
「見たんだが?」
「正直、ドルイドがどんな装備をするべきか、よくわからん。あっちの世界でも見たことが無いしな」
「……となると?」
「はっきり言ってしまえば、キラがイメージするドルイドの装備を選んでもらったほうがいいかも知れん。もしくは、あれそれだったら使えそうだと思った物とかだな」
「あ~。やっぱりそうなりますか。私もドルイドがあまりイメージできなくてここに来たんですが」
「だよな。掲示板の皆も同じだと思うぞ。まあ、資料を漁って定型文的なイメージを持つことは出来るかも知れないが」
『ドルイドとはケルト人社会における司祭のことであり、森や木々と大きな関係を持っていた』
――というのがドルイドをごくごく簡潔にまとめたものになるが、正直なところ地球でのイメージがこちらの世界でも同じなのかすら分かっていない。
初めて出てきた職業に掲示板でも盛り上がってはいたが、結局どんな攻撃手段があるのかすら特定することができなかった。
これは別にプレイヤーにドルイドがいないからというだけではなく、各プレイヤーが存在するそれぞれの世界全体で見ても見かけることがないからだ。
「木や森に関係しているというのは前職から考えても納得なんですが、何をどうすればいいのか分からないというはお手上げですねぇ」
「いっそのこと、その前世の本拠地にでも向かってしまったらどうだ? その間に何か見つかるかもしれないだろう?」
「そうしたいのは山々ですが、護身すらおぼつかない状態で旅に出ていいのかすらわかりません」
「あ~、それか。確かに、『旅に出られるだけの資金がある』と思われるだけで危ないからなあ」
前世のお陰で主に資金面において『強くてニューゲーム』の状態で始まったのは嬉しい限りなのだが、それが理由で身の危険を感じるのはどうしようもない。
それに何もできない状態で旅をするよりも、ある程度何か出来る状態になってから気ままに旅をしたいと思っている。
ハルの言うとおりに真っすぐ前世の
とはいえずっと何も装備がない状態で過ごすのもどうかと思うので、ここは素直に今自分自身でイメージするドルイドのままの装備を注文することにした。
「――仕方ありません。司祭というイメージを大事にして、杖や神官服的なものを装備することにしますか」
「ああ。お前がそれでいいと思うならいいんじゃないか? ただどっちもうちの店にはおいていないが」
「それはわかっています。一応採取用のナイフとか最終手段の護身用なんかに使えるものはありますか?」
「ああ。それならあるな。別に用途別に分ける必要はないから一つで十分だろうさ」
本職の勧めに従って買ったナイフは、初心者が持つにはあり得ないほどの機能がついたナイフとなった。
正直なところそのナイフについている機能だけでその辺のごろつきなんかはあしらえるのではないかと思えるほどだったが、本当に最終手段になりそうなので最後の最後まで隠しておくことにする。
もっといえば、武器の機能だけに頼ったところでいずれ行き詰まることは分かっているので、頼り切りにするつもりはない。
そしてナイフを買った後は、別の店で今の状態でも目立たないレベルの杖と神官服をそれぞれ購入して、再び異世界の宿へと戻った。
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広場で装備を手に入れたあとは、再び情報収集と魔力操作の訓練に戻った。
魔力操作の訓練をしている最中は、装備の能力に頼らないように全て外してある。
情報収集に関しては、住人と話をして大体の場所が分かってきた。
今世で転生した初期位置は、地球の地理でいうところの北欧辺りに出現しているらしい。
何故それが分かったかといえば、北の方に万年雪があってそこでは『冬の植物』が多く自生しているとの情報を得たからだ。
冬の植物は俺が世界樹の妖精だった時に創った植物で、雪の積もっている場所でしか育たない。
その冬の植物の勢力範囲がちょうど今俺がいる国で終わっているという情報で場所の辺りをつけたわけで、これまでの情報と合わせてもほぼ間違いないだろうと確信している。
ちなみにちょっとした話が脱線したことで、前世の俺が終わってからどれくらいの年月が経っているのかも判明している。
何故分かったかといえば、ちょうどその辺りに魔物の活動状況が変わったということと各国に『守護獣』なるものが出てきたという話を聞いたからだ。
守護獣というのが何かはよくわからなくて話をよくよく聞いてみれば、それぞれの国を守る存在として話のできる魔物と協力関係にある状態のことを言っているらしい。
守護獣にとっては人族に邪魔されずに好き勝手できる土地ができるということで、国と守護獣どちらにとってもメリットがあるのだろう。
考えてみればユグホウラも似たような形態をとっていたと言えなくないので、そこから参考にして発展してきたのかもしれない。
たった五百年でそこまで変わるのかと言えるくらいに様変わりしているように見えるが、そもそも守護獣と国家の関係の実態が見えていない以上はあまり迂闊に褒めるべきではないだろう。
それにたとえ守護獣がいたとしても国家同士の争いがなくなっているわけではないので、そこは以前と比べても何の変化もないと言える。
そんな情報を仕入れつつ魔力操作の訓練に明け暮れること一週間。
ようやく町の外に出て活動してもいいと思えるくらいに魔力操作が上達していた。
より具体的にいえば、特に意識せずとも普段から体内で魔力を循環させることができるようになったともいえる。
これができるようになるとある程度の防御ができるようになり、通り魔的な不意打ちを喰らっても致命傷にならないくらいには防ぐことができる。
俺自身の感覚ではこれができてようやく一人前の魔法使いと言えるくらいの技術とも言えるのだが、実際にはそこまで意識して魔力操作を行っている魔法使いは見た感じでは少ないように見える。
たまたま話の流れで掲示板でも報告することになったのだが、一周目で魔法使い系の職についていた一部プレイヤーの嘆きが見られた。
曰く『自分が一周目の時は二、三か月以上かかったのに』と。
もっともそんなプレイヤーも二周目の時には今の俺と同じようなことができているので、一周目の経験が生きている事例だといえるだろう。
とにかくこれで町周辺をうろうろ出来るくらいにはなったので、翌日からは冒険者ランクのことも考えて簡単な採取依頼を受けようと考えている。
これで完全なニート状態から脱することができるようになったともいえるが、内心でニートを辞めるためにも必要な期間だったとどうでもいい言い訳をしていた。
そんな心の葛藤はともかくとして、ようやく初期の町から外に出ることが出来るようになったので、今は遠足前日の小学生のような気分になっていた。
そしてそんな興奮が続いたせいで、夜更けまで寝付けないという状態になるまでがワンセットなのであった。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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