(2)久しぶり

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 二周目の生活が始まった翌日からは、まずは自分自身の能力を高めることを目標にして活動を開始した。

 一周目では適当に外を歩き回っても油断さえしなければ命を落とすようなことはないくらいにまで強くなっていたが、二周目が始まったばかりの今は何ができるのかさえ分かっていない状態だ。

 そんな状況で魔物が闊歩している町の外を歩き回っても、あっという間に二周目の人生が終わりとなりかねない。

 そのためにも、まずは自分の能力を高めるということが第一に目標だと前日のうちに決めていた。

 その能力を開発をするために、まずは冒険者ギルドへと向かう。

 冒険者ギルドでは、冒険者の仕事の斡旋をするだけではなく、冒険者が活動を続ける上で必要な施設が揃っている。

 二周目が始まった初期の町――ノルテは人口一万人ほどのこの世界では中規模都市で、多くの冒険者がいるのである程度の施設も備わっている。

 その施設の中に訓練施設もあるので、きちんと申請をしたうえでそこで訓練をするつもりだ。


 ――のはいいのだが、訓練を始めてから一時間ほどで二周目の難しさを実感することとなった。

 何しろドルイドという職業と森羅万象というスキルで何ができるのか、皆目見当がつかない。

 本能的な何かやシステム的な事象に期待したりもしたのだが、突然何かがひらめいたりするような素敵な偶然も起こらなかった。

 こうなってくると何をどうしていいのかわからず、このまま闇雲に進めても無駄だろうと判断してギルドの訓練場から出て行くことにした。

 

 ギルドの訓練場はただで借りられるわけではなく、しかも他に使うべき冒険者もいるはずだ。

 それに、折角の職とスキルが活かせる訓練ができない以上は狩り続けていても仕方ない。

 それよりは訓練場を使わなくてもよくて、絶対に出来るはずの部分の能力を伸ばしたほうがいい。

 その訓練であれば借りている宿の中でも出来るので、わざわざお金を払ってまでギルドの訓練場を借りる必要はないと判断した。

 

 さて。そういうわけで、宿に戻った俺は魔力操作の訓練を始めることにした。

 魔力操作が魔法を扱う上で基本中の基本の技能スキルであることは、他のプレイヤーからの情報でも分かっていることだ。

 何よりもプレイヤーとして一段上の存在である解放者になるためには、必須の技能であるともいえる。

 前の人生では既に解放者になっているためそのあたりの情報はもう手に入っているので必要ないのだが、技術に関してはきちんと一から訓練しなければならない。

 これも他に死に戻って二周目を始めているプレイヤーからの情報で分かっている情報だ。

 

 これなら最初から魔力操作の訓練をしておけばよかったと反省しつつ、まずはトライも必要だろうと考えてギルドで行った訓練については考えないことにした。

 そうして始めた魔力操作の訓練だったが、一度コツさえつかめばあとは順調に進んでいった。

 この辺りの感覚は前の人生からの経験があるからこそわかっていることで、何もない状態で始めるよりははるかにやりやすいと言える。


 こんな感じで順調に始まった魔力操作の訓練だが、何も障害にぶつからなかったというわけではない。

 以前の人生は世界樹もしくは分体の妖精という特殊な状態で生まれたため、ヒューマンの体とはやはり構造が違っている。

 その構造の違いが魔力操作にも影響を与えているようで、所々で以前とは違った感覚で進めなければならないこともあった。

 前世と今世の違いを実感しつつ、それでもその差を埋めながら二日目は魔力操作の訓練だけで終わることとなった。

 

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 順調に進んでいる魔力操作の訓練だが、さすがにそればかりだと飽きるということもあって三日目はちょっと趣を変えて違う場所へと行くことにした。

 その違う場所というのは、プレイヤーたちが直接集まって商売などを行っている『広場』と呼ばれているところだ。

 広場に向かうためにはこちらに世界に出入り口を作らなければならず、下手なところに作ると他の住人に見つかってしまう恐れがある。

 宿も突然従業員が入ってきたりすることが無いわけではないが、泊っている宿には今日の清掃は必要ないと伝えているので入ってこられる心配はないはずだ。

 それでも可能性はゼロではないのだが、もし今の状態でゼロを求めるのであれば家を買うなりしなければならない。

 さすがに今すぐに家を持つつもりはないので、多少のリスクは承知の上で広場への出入り口を作ることにした。

 ちなみに入口はいつでも設置と撤去が可能なので、ずっと同じ宿の同じ部屋に泊まらなければならないというわけではない。

 

 別次元の空間を繋ぐための出入り口ができるまでは少しだけ時間がかかるので、待っている間は変わらず魔力操作の訓練をして時間を潰した。

 そしてできた道を通って、目的地である広場へと向かう。

 広場側の出入り口は一周目の人生で購入してあった建物に繋げているので、誰かに邪魔されるような心配はない。

 一周目の人生と二周目の人生は一か月ほどの期間が空いているのだが、広場にできている建物に出現しても特に懐かしいなどの感情は浮かんでこなかった。

 

 広場にある家には以前の人生で貯めておいた魔石などをため込んでいたので、その魔石の幾つかを握りしめてからとある場所へと向かった。

 そのとある場所というのは広場の中央付近にあるひときわ大きな建物で、見た目的にも役割的にもデパートとしての機能がある。

 プレイヤーにはそれなりの数の生産職がいるため、彼らが他のプレイヤーに向けて様々な商品を売っているのだ。

 広場を作った当初は一つ一つの店舗を持つことにこだわりを持つプレイヤーもいたが、今ではほとんどの生産職がデパート内にテナントを持っている。

 

 デパート内に多くあるテナントの中で俺が真っ先に向かったのは、一周目の人生で仲良くさせてもらっていた鍛冶師職人のところだった。

 生産職は基本的に店に立っておらずに工房で作業をしていたりすることが多いので、目的の鍛冶職人――ハルがいるかどうかはわからなかったのだが、ちょうど店の中で作業をしているところを見かけたので声をかけることにした。


「やあ。お久しぶりです」

「――うん? 久しぶ……り? ……その姿ってことは、キラか。キャラメイクはしなかったんだな」

「折角一周目もお勧めだったので、今回もそうしようかと。それに顔形を変えても違和感がありませんか?」

「確かにな。それにしても、木の人が妖精の大きさじゃないってのは違和感があるな。身体的には違っているのか?」

「やっぱり違っていますね。魔力操作も違いがあるので少し苦労していますよ」

「ふうむ。キラでも苦労するのか。……いや、待てよ? 二周目を始めてまだそこまで時間が経っていないだろう?」

「ちょうど今が三日目ですかね」

「……それは苦労しているとは言わなくないか? 普通はそんなにすぐに魔力操作なんてできないはずだぞ?」

「そうなんですかね。そこはやっぱり昔取った杵柄ということではないでしょうか」

「そうなるとやっぱり人外系で魔力操作を学んだ方が良いという推測は当たっているのか」

「どうでしょうね。私の場合は人族スタートじゃないのでよくわかりません」


 会っていきなり検討が始まってしまったが、プレイヤーにとっては必要な情報交換なので珍しいことではない。

 ハウスで使える掲示板に上げられる情報は、広場でのこうした個別のやり取りで検討されてからというのも一般的な流れになっている。

 俺としても人族で異世界を暮らしていくのは初めてのことなので、確認も含めた情報収集を続けるのであった。




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m(__)m

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