第30話:魔王との決戦
5階に着くと、とんでもない光景が広がっていた。
アーリエ姫に跨る魔王。そして、アーリエ姫は気持ちよさそうな表情と声で魔王にされるがままだ。
「あーそこよ。そこ。うん。気持ちいいわ」
「ここがいいんですね。アーリエはここが弱いんだな」
「あっ、そこっ、いいわ!!」
俺はそれ以上見ていられなくて、魔王を付き飛ばそうとしたが魔王はアーリエ姫から降りることをしなかった。
「あっ、ロイやっときたのね!!」
のんびりした様子で言うアーリエ姫に俺は腹を立てる。とっても心配して君に何かあったらと思って怖い気持ちを押し殺しながらこの部屋に入ってきたというのに……
「アーリエ!! 君はどうして……心配したんだぞ!!」
俺は気付けば呼び捨てで呼び掛けていた。
「あらっ、嬉しいわ。これも魔王のおかげね」
「ちょっと、本当にどうしたんですか?」
アーリエ姫は嬉しそうに魔王の顔を撫でていたので、戸惑いを隠すことができない。もしかして、もう……
俺はショックのあまり座り込んでしまい床を叩いた。
「あぁ、このイケメン魔王が私の下僕だなんてちょっと快感だったのだけど……」
「えっ……それはどういう……」
アーリエ姫の意味深な発言に俺はどんどんと凹んでくる。
「サランジョア」
アーリエ姫はいきなりそう唱えると、魔王がガクリとうなだれる。
「えっ、なに? なに?」
俺は焦り過ぎてパニックを起こしてしまいおどおどしてしまった。
「ロイ、おっさんのあなたでもやっぱり私はロイがいいわ」
ア-リエ姫は俺に抱き着いて、耳元で言った。
「愛しているのはロイだけよ。いえ、秀一さん!!」
「うぉっ!! うぉっ!!」
俺のどこにこんな野獣のような雄たけびが出る余裕があったのだろうか。体全身が身の毛もよだつように力がみなぎるのを感じる。それと同時に今まで違和感があった下半身もなんだか熱い。
見るとズボンからポッコリしている。マジか。俺の股間が帰った来たのか。って待てよ。今アーリエ姫俺のこと秀一って呼んだよな。しかも、おっさんとも言った。確認しようとしたが、魔王が起き上がり、アーリエ姫を俺から奪い取るために腕を引っ張る。思わず引っ張り合う形になり、痛そうな顔をしたアーリエ姫に気づき俺は引くのをやめる。そして。力をつま先に集中して魔王のアソコを蹴飛ばしてやった。
「おりゃっ!! この変態が!!」
俺のつま先は炎のような赤い光が出ている。自分の足は全然熱くないのに手をかざしてみると、火傷しそうなくらいに熱い。たぶんこれかなり厚いどころじゃなく痛いんじゃないかと魔王が少しかわいそうな気もしていた。
「い……っ」
魔王は声も出ないくらい痛いのか股間を抑えてジャンプしている。
まぁヒットしたようで何よりだ。
「アーリエ!!」
俺は再びアーリエ姫を抱きしめる。異常に下半身があつくてズボンが窮屈だったが今はそんなこと気にしている場合じゃない。
「ロイ……なんかかっこいいわ。いつからそんな強くなったの?」
「わかりませんけど……それより早く魔王を封印しなくてはいけないんですけどこの鍵についてなんか知りませんか?」
俺はアーリエ姫に聞いてみると、アーリエ姫は顔をほころばせる。
「あぁ、それね。あのそこの金色の扉の鍵らしいわ。あそこで今まで封印されていたらしいんだけどね……なんかね」
「えっ、どうしてそんなこと知っているんですか? こんな鍵の設定とかなかったのに……」
俺は思わずゲームの設定と比べてしまう。
「あっ、それね。それなら簡単よ。襲われそうになったからあなたの言う通り『魅惑』と『傀儡』で私に従わせて色々聞き出していたのよ……」
「えっ……じゃあさっきはやってたんじゃなくて……」
「ふふふ。違うわよ。慣れないことさせられて肩や腰が凝ったからマッサージしてもらっていただけよ」
「もぉ!! なんか俺焦って損したじゃないですか」
「いいのよ。ロイが私をアーリエって呼んでくれたし」
「でも……今俺思ったんだけど、傀儡解くの早かったんじゃない? どうせなら自分であの金色の扉に入らせてこの鍵で閉めた方が……」
「あっ。そういえばそうね。ロイが来て嬉しくてこんな奴に魅惑なんか使いたくなかったから解いちゃったわ。それにあれ魔力量の消費が激しくて……もう一度使いたいとこなんだけど無理なのよね……」
「えっ……もしかしてなんですけど、途中で連絡途絶えたのって……」
「傀儡と魅惑なんかかなり高位の魔法だからロイの監視まで無理だったのよ。浮気していないわね。ハーレムも……」
「あぁ」
なぜだろう。悪いことしていないのに目線を逸らせてしまった。
「何今の間は……まさか」
「いや違う。確かにかわいいなとかは思ったけど、反応するのはこの通りアーリエだけだし。いや、さっきまで小さかったからなのかもしれないけど……俺が愛しているのはアーリエだけだ。俺と結婚してくれ」
俺は焦ったのもあったが思いのまま勢いに任せてプロポーズしてしまっていた。おいおい、俺場所とか状況を考えろよ。どう見ても今じゃないだろうよ。俺は一人自分のバカさ加減に呆れてしまう。
「……ロイ……嬉しいのだけど、後ろ!!」
振り返ると魔王が俺に近づいてきていた。やけにゆっくり歩いてきている。普通ならもう俺の首など吹っ飛んでいてもおかしくないはずなのだが……なんだか様子がおかしい。
思わず心配になってしまった俺は魔王に問いかけていた。
「おいどうしたんだよ。どこか痛むのか?」
「うっ……俺の……大事な……がない」
「えっ、何がないって?」
「俺の……たまが1個ないんだ」
「何の玉?」
「……玉に決まっているだろう。この童貞が!!」
一瞬本気で何の玉かわからなくて必死で考えてしまう。
「たま? ネコか? あれはアニメだ。たま? おかっぱ頭の友だちか? ちがう。あれは女の子だろ。たま……たま……えっ、そっちの玉?」
俺は魔王の下半身に目をやると。さっきのキックのせいかズボンの真ん中が黒焦げになっていてなかからは立派なものが見えているが、どうやらおかしい。片方がない。
「マジで? そっちの玉? ヤバいじゃん」
「俺……魔王だけどセクシー担当の魔王。玉無し魔王は魔王になれない。役割全うできない。制作者に怒られる。消される。別の魔王くる。俺死ぬ」
いきなり壊れかけた人形のように話し出す魔王。そして、その言っているのがゲームのこととリンクしているようにも思える。確かにこの魔王淫乱魔王だから描写でこそ裏しか出せないがあっちのテクでたぶらかしている設定だったはずだ。それを主人公になった俺が好きな女の子を救って魔王を倒すのだから、その設定が破綻することになってしまう。
ゲームとリンクしているとなるとこれはどうすべきか、何かが正解かを考えなくていけない。バッドエンディングだけは避けたい。悩んでいるとアーリエ姫が俺に言った。
「ロイ今治癒魔法も使えるのよね? 治してあげたら? そのかわりあそこに入ってもらうのよ。あと二度と出れないようにあなたが封印もかけて」
「治癒魔法って……残っているものは元に戻すことができるけど完全になくなってしまったものを復活は出来ないはずだよね」
「なら生やすことはできるんじゃないの?」
「アーリエ。生やすとか言わないの。それにどちらかと言えば増やすじゃない?」
「あらごめんなさい。つい」
「おい、どうなんだ。お前治せる? 俺封印される」
魔王のこんなヘタレな姿見たくなかった気もする……いい声でこんな無様な話し方なんかしないでくれよ。あの声優さんの無駄遣いだ!!
とはいえ、仕方ない。このままでは俺は人を傷つけてしまったことになる。いくら魔王とはいえ、治癒士、いや、医師として「救う命あれど、奪う命はない」とちょっとかっこいいことを想いつつ、治癒魔法をかけてみることにした。
「わかった。やってみる。もしかしたら潰されただけでものはあるかもしれない。薬草もいくつか持っているから渡すよ」
「ありがとう。ロイ」
魔王のたまを見るとやはり完全に潰されてしまっていた。といっても俺がやったのだが……
「けれど、さすがはスーパーテクの魔王様だ。持っているモノが違う」
「おい、そんな見るな」
「あっごめん」
俺は集中して治癒魔法をかける。豆くらいになっていた玉が、50円玉くらいにはおおきくなった。
「おぉ、すごいな」
「なら俺はアソコに入るから好きにしてくれ」
「なんだろう。今違う風にしか聞こえなかったんだけど……」
「お前も相当の変態と見た。同士になろうか?」
魔王はセクシーな表情で俺の頬をなぞる。これが噂に聞くボーイズラブ的要素なのだろうか。このイケボで囁かれたら、そんな気がなくても頷いてしまいそうになる。
ビリビリと電気が走る久々の感覚を受け正気に戻る。俺はアーリエ姫を一瞥すると鋭い視線で俺を睨んでいた。
「ゴホン。テクニックについてはご指導いただきたいけど……仲良くしているうちに他の女の子とハーレム生活とか送り出しそうだからやめておくよ。自己流で頑張る」
ずっと黙って聞いていたアーリエ姫が言う。
「自己流の方がいいわよ。慣れた手つきで触られるなんてごめんよ」
「うん。そうだね」
俺はそのまま魔王を金色の扉に導く。そして、痛み止めと塗り薬を渡した。薬が成功していてよかった。
「じゃあな」
「またな」
「いや、二度と出て来なくていい」
「そういうなよ。どうせまたいつか封印は解けるさ」
「そうさせないためにも、俺が封印を掛けるんだよ」
「お前にできるのか?」
そう魔王に言われて、魔力が上がったとはいえ、魔法の知識などこれっぽちも持っていない。火球はアニメで見ていたが封印系の魔法は見たことがなかった。どうしていいかわからず制止してしまう。すると、横からアーリエ姫が呪文を耳打ちしてくれた。
「では、魔王と。さらばだ!! バラン、コラン、スズラン、アイラン、インラン」
最後の言葉で思わず集中力が途絶えそうになったが、なんとか我慢した。俺の手から金色の鎖が飛び出し、魔王が入った部屋を完全に閉じ込めたのだった。
「俺……すげぇ」
「本当よ。ロイ。顔は老けちゃったけどその分、強くなったんじゃない?」
「あの……」
「ロイ……今私たちは二人きりよ。帰ったら忙しくなるわ。どうする?」
アーリエ姫の誘いに俺はもちろん乗った。アーリエ姫にも乗ったし、乗られたりもした。俺は今までにない最高の気分を味わったのであった。
「最高!!」
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