第24話:どうしてこんなことに?※
俺は暗闇の中で、ある映像を見せられていた。
白い制服を着た男性陣を引き連れて俺が先頭に立っている。これは巨頭の名シーンではないか。そして、どこかの部屋に入ると男性陣にすごい形相で睨みつけ、怒っている。これは……まさか俺なのか?
場面は変わり、今度は明るい照明の中で眠っている人をナイフで切り刻み、お腹を開いている。そして中から臓器を出して縫っているようだ。まさか……俺は医者なのか?
すると、今度は車いすに乗った女の子から何か笑顔で言われている。なんとか声が聞こえないか必死で俺は耳を傾ける。
「田中先生ありがとう。これで学校に行って普通に暮らせるよ」
「そうだね。よかったね。元気でね」
俺を先生と言った女の子……俺は昔、医師だったのか?混乱して意味がわからない。まさか俺が医者なんかあり得ないぞ。そう思っていると、映像が急に途絶えた。
「ふふふ、やっと目覚めたのね」
「その声はアリア様? なんでここに?」
「いや、暇だったから彷徨っていたのよ。であなたを見つけたから」
「俺……医者なんですか?」
「おっさんは顔だけでなく、頭の回転も悪いのね」
「うっさいな。自分だってアラフォーのおばさんのくせに」
「そんなこと言うなら、ちゃんと記憶を思い出させてあげようと思ったけどやめとくわよ?」
「えっ……ケチなアリア様が無償とか逆に怖いですけど……」
「誰が無償って言ったかしら?」
「ならこのままでもいいです。別に問題ないしそれより早く戻してくれません。今から俺アーリエ姫とのいちゃこらの大事な場面なんですけど?」
「ふっ、これで決まりね。ちょっとピリピリとするけど人害ではないから我慢してね。ちゃんと私は無償ではないと言ったのに、あなたが戻してって言ったんだからね。あっ、でもおっさんであれだとマジで救いがないだろうから、サービスで記憶だけは戻してあげるわ」
俺の体に電流が走ったかのように痛みが俺を襲う。アリア様の発言が気になっていたが、何を代償として払わされたのだろうかと思ったのも束の間、耐えきれないほどの衝撃が走った。そして、俺は思い出したのだ。
45歳で若くして大病院の理事長を務めていたこと……だから、ある程度の医療の知識がわかったのか。さっきの映像は俺の回診の様子、手術、手術後の退院の場面だったのだろう。特に俺が得意だった中医学は、「気、血、津液」のカテゴリーに分けて考える五行説。いわゆる西洋学よりも、大病院では珍しい漢方に力を入れていたのだ。
「でも、おかしくないか。医者でハイスぺで高給取りなのに俺童貞だったのかよ」
「はいはい、思い出したみたいね。あんたバカなの? いくら条件が良くてもハゲでその見た目よ? 女は無理よ。じゃあね。ふふふふふ」
アリア様の奇妙な笑いが気になって仕方がないが、そのまま意識が遠のいてしまった。
俺はアーリエ姫の呼びかけで前世の記憶とともに目覚めた。
「あぁ、よかったロイ。急に動かなくなるからびっくりしたわよ」
「すみません……いい感じだったのに……」
「いや、いいのよ。でももう大丈夫なの?」
「えぇ、アーリエ姫、こんな俺を好きになってくれてありがとう」
俺はすかさずアーリエ姫を抱きしめる。早くやりたいのだ。
「……どうしたのよ……何かおかしいわよ。鼻の下なんか伸ばしてロイらしくないわね」
「すまない。ちょっと色々思い出してな」
どうしても顔がゆるんでしまうようだ。キスをしようとしたが、アーリエ姫はなぜか顔を背けてしまう。
「そう、ならいいけど……トーマスが魔力量が俺を超えてるって騒いでやってきたのだけど違和感ある?」
「えっ? 特には……あっ、でも記憶が蘇ったせいかも」
と俺は手や体を確認してみるも何も変化がなかった。それにしてもどれくらい俺は眠っていたのだろうか。腰が痛かったので、まずはやってみようと試しに腰を撫でてみる。手の中心に温かい光のようなものが集まってくるのがわかる。腰にその手を当ててみる。
「えっ、痛くなくなった?」
「どうしたの?」
「いや、腰をさすったら治ったんだ。俺治癒魔法使えるようになったみたいだ」
俺はなぜ急に今まで使えなかったはずの治癒魔法が使えるようになったか考えてみた。アーリエ姫とのキスをきっかけに前世の記憶が蘇ったこととアリア様に電流を流されたことが関係があるのかもしれない。
確かにアーリエ姫が前言っていたみたいに遺伝で俺だけ使えないということが起きるなんてまずあり得ない。考えられるとすれば、俺が前世の記憶を持っている転生者という特殊だったことが原因だったのではないだろうか。
しかし、その記憶も蘇りそのしがらみがなくなり、アリア様に解いてもらったおかげで治癒魔法が使えるようになったというわけか。
すると、頭の中に声が聞こえてきた。
(その推理間違っているわよ)
(アリア様……? どうやって話しかけているんですか)
俺は頭の中で会話を試みる。
(魔法力増えたからあなたもできるでしょ)
(はい。で俺なんで魔法が急に使えるようになったんですか?)
(アーリエ姫との口づけよ。く・ち・づ・け)
(なんですか。それ)
(よくあるじゃない。眠る姫が王子様のキスで目覚めるってやつ。あれと同類よ)
(だったら俺逆ですよね?)
(そうね。そこはあなたがおっさん童貞だから仕方ないじゃない)
俺はじりじりと耳に砂嵐がなったような気がして、耳を抑える。
「ロイ、どうしたの……今誰かと会話していなかった?」
「えっ……いえ……」
「私の目はごまかさないわ。女ね。もう浮気したのね。最低」
「いや……違います。俺が愛するのはアーリエ姫だけです」
「もうロイったら大胆ね。でも嬉しいわ」
アーリエ姫は俺の顔を愛おしそうに撫でる。
「もしかして、またからかいました?」
「ふふふ。謎の会話しているあなたが悪いのよ。だいたい相手は察するから何も言わないわ。それにしても魔法使えるようになってよかったわね。これでご家族にもバカにされないわね」
「そうだった。アイツら……」
「ロイ、これからもよろしくね」
「あぁ、アーリエ姫愛しています。ずっと一緒にいましょう」
俺はアーリエ姫に囁きながら、抱きしめ何度も口づけをしてしまう。拗らせまくった童貞は甘美なアーリエ姫の唇に抗うことができない。
「ロイ……このままだと唇が腫れてしまうわ……」
「腫れるほどキスしましょう。腫れても俺の治癒魔法で治せば……ちゅっ、いいだけ……ちゅっ……ですから」
「あぁ、もう……ロイのエッチ」
よしっ、このまま胸へと手を持っていく。鷲摑みにして揉んでいくと、アーリエ姫は魅惑な声を上げ始める。もう無理だ。俺はそのままドレスを脱がせる。
美しい胸が俺の目の前に現れる。偉大な山が二つ。この頂を俺がいただくことにするか。咥えようとしたそのときアーリエ姫の肩が小刻みに震えだした。
「ぷははは。何よ。ロイ、それ冗談か何かのつもり……いただきをいただくって……何よ。それ……」
やばい。思考が読まれていることを完全に忘れていた。完全に今のは親父ギャグだよな。やばいわ。記憶戻ったせいでおっさん臭がきつくなっているんじゃないか。もしかして、アリア様の代償ってこういうことか。
問いかけてみたけど、返事は帰ってこなかった。笑っているアーリエ姫の顎をジョイのようにくいっと上げてみるも、ちょうどいい角度がわからない。もういいや。そのままキスをして、押し倒しアーリエ姫に馬乗りになった。
「アーリエ姫愛しています」
「ロイ……ごめんなさい。さっきから1つ気になっていることがあるのだけど……」
「なんですか?」
「本当はずっと言おうか迷っていたんだけどね……傷つくかなって思ったし……」
「どうしたんですか? もしかして俺がハゲって……」
「えっ……それだったらまだ全然よかったのだけど……」
そう言うとアーリエ姫は俺の下半身に目を向けていた。まさか、知らぬ間に暴発して、アーリエ姫に粗相してしまっていたのか。それだったら俺最悪だろう。
俺はすかさず自分の下半身に手をやると……
「えっ、なぜだ……なぜなんだよ!! 俺の立派な相棒はどこいったんだよ」
全く役に立ちそうにもない3センチほどのポークウインナーがちょこんとあっただけだったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます