第13話:チートの開花?

 朝起きると、なぜか頭がスッキリしていた。どうしてだろうか。それにしても、誰がオリビアに媚薬を飲ませたんだ。いや、ジョイって言っていたけど、アイツはいったい何がしたいんだろう。不老不死なんぞ作れもしない薬を作ろうとしているし。


 まぁいい。今はアーリエ姫のためにも鎮痛薬を作る必要がある。机へ向かい、引き出しに入ってあった紙とペンを準備した。この世界で錠剤など作ることは難しい。できるのは、煎じ薬、塗り薬である。何か他にないだろうか。薬草を利用して作れそうな薬はなかったか。俺よ。なんか前世の記憶とか思い出せよ。チートよ。あるのならば発動してくれよ。いつ思い出しますか。今でしょ? って古いわ。おっさんの知識は古い。最近の若者なら切り返しがポジティブな芸風でいくべきなのか。それとも、アゲアゲ的なチャラ男風が受けるのだろうか。そんな意味もないバラエティ番組の芸人ばかり思い出すのに、肝心の薬はちっとも思い出せない。


 俺は両手を組み、キリスト教徒でもないのに天に向かって祈ってみることにした。空から神様とか降って来るのではないかと期待したわけだったが、もちろん、そんな簡単な話ではない。そういう展開にはならずに、俺の祈りは終了した。


 これは地道に試行錯誤して考えるほかなさそうだった。本棚へと向かい、「薬の作り方」という大きな本を取り出して、座って読んでみることにした。ペンで色々と書き込まれていた。ここの前任者はかなり几帳面で、頭脳明晰だったことがわかるほどの書き込みの分量だった。それに、なぜか薬草以外のことも書いてあるというのになんだか理解できた。今気づいたがここの文字って日本語なのか。それとも、得意の勝手に翻訳していますというご都合主義なのだろうか。そんなことを考えつつも、興味深い記述内容に気づけば夢中になり、熱心に読み進めていたのだった。あと残り3ページのところで一枚の紙が挟まっていた。


 その紙には、薬草から作り出す「ガンヤク」の開発について書かれてた。俺はガンヤクってなんだろう。開発ってことは治療に使用するものなのだろうということだけはわかる。「ガンヤク」と何度も呟いてみることにした。


「ガンヤク、ガンヤク、ガンヤク、コンヤク、コンニャク、蒟蒻」


 違う。俺はなんで言葉遊びを始めているんだ。これだからおっさんは嫌になる。スキさえあれば親父ギャグを考えてしまうのだから。


 そう思っていた時に、蒟蒻というあの読めるけど書けない漢字を思い出した。ガンヤクを漢字だとどう書くんだろう。俺は出していた紙に漢字を書き始める。


「眼焼く、違う。眼を焼いてどうするんだよ。癌役、癌の役なだけだ。玩訳、こんな漢字などない。雁って鳥だしな。願、岩、岸もガンって呼ぶけど薬っぽくないし。そうか。ヤクは薬だよ。ってなるとガンは岩か。違う、岩の薬なんかないだろう。そうだ。丸だよ」


 書き出していた文字を見つめて、いかに俺はバカなのかということが垣間見れた気がして、どんよりしてしまった。


 ガンヤクとは、粉末状にした生薬に蜂蜜などを加えて丸く固めたものを服用するものと書き出す。なぜだかわからないが無意識でそんなことを書き出していた。それに、なぜか作り方もわかる気がする。


 俺どうした。やっとチートが開花したのか? まぁそんなことは後でわかるとしてこの感覚があるうちに作らなければいけない。絶対忘れる。


 ウドの根を採取し乾燥したものを散剤にして、蜂蜜などで固めて粒状にすれば、頭痛薬ならぬ鎮痛薬が作れるかもしれない。こ れがもし、成功するなら腹痛、胃痛、下痢止めといったざまざま症状に応用できるかもしれない。確か、昨夜取ってきた薬草の中にあった気がする。これは早く作れという神からのお告げだ。


 ただ薬を作るだけではいけない。必ず臨床試験が必要なので、まずは副作用の少なそうな疲労薬からにしておくか。そうだ。ニンニク注射の変わりのガンヤクを作ってみて、カーターに飲んでもらうことにしよう。同じ管理士だし、効能とか副作用とか教えてもらえるかもしれない。俺は1人テンションが上がっていた。





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