2021/07/04「僕は隠れる」
どこかのホテルの一室。
長方形の部屋で窓がいくつもあり、ベッドが5つほど並んでいる。
中学生くらいの同級生男子と一緒に泊まることになっているようだ。
(顔は分からない)
深夜になり皆が眠りについた頃、僕はベッドを抜け出し部屋の外へ出る。
赤い絨毯が敷かれた長い廊下。白い壁。他にも自分たちの部屋と似たようなドアがいくつも並ぶ。
何をしに部屋の外へ出たのか、自分でもわからない。
ただ、廊下を見回りしている先生に見つかってはいけないということだけわかっていた。
修学旅行的なイベントなのだろうかと思っていると、廊下の右奥から足音と懐中電灯の光を感じた。
僕はそれから逃げ出すように左側の廊下へと歩いていく。
抜き足差し足忍び足。
開かれたドアがあることに、ふと気づく。
そこに隠れよう。
暗い部屋の中。
造りはさっきの部屋と同じだが、何かが違う。
ここに泊まっている生徒は女の子のようだった。
なぜわかったかというと、女の子が一人布団から顔を出してこちらを見ていたからだ。
女子の部屋に侵入したところを目撃されて慌てるが、女の子はシーっと人差し指で口を抑えて僕に喋らないように伝える。
部屋の灯りがつき、女の子が布団から出て、ヒソヒソと話し始める。
話の内容は覚えていない。
ただ、少々騒ぎすぎてしまうほど盛り上がったようだった。
先生の声が聞こえる。「誰か起きているのか!?」
女の子は、慌てる僕の腕を掴みベッドへと引き入れる。
女の子も布団の中に身を隠した。
自分の身体は小さく丸まり、女の子が覆い被さる形になった。
先生が部屋に入ってくる。
その途端、部屋の電気が消えて、先生が持つ懐中電灯が部屋の中をわずかに照らす。
「息しちゃダメ」と女の子は、柔らかな手で僕の口を押さえる。
布団の隙間から、先生が部屋の中を歩き回っているのが見えた。
緊張感とは裏腹。僕は女の子の優しい香りに包まれていた。
だが、長時間息を止めるのは難しい。
耐えきれず、大きく息をした瞬間、目を覚ました。
時刻は午前3時。
自分の呼吸が荒いことに気づく。
ひょっとすると無呼吸症候群かもしれない。
そう思いながら、再び眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます