【一〇五《砕けなかった存在》】:二

「カズ、愛想良くしろよ」

「なんで俺が栄次に愛想を振りまかないといけないんだ」

「だってカズ、店員だろ?」


 文化祭当日、執事喫茶開店直後に、爽やかな笑顔を浮かべて栄次が入ってきた。

 綺麗に手作りの装飾が施された教室内は、開店したばかりということもあるのか客足は少ない。

その少ない客の中の一人である栄次に、俺はメニューを指さす。


「ご注文は何になさいますか? ご主人様」

「カズにご主人様って言われると気持ち悪――」

「ご注文はっ! 何にっ! なさいますかっ?!」


 語気を強めて注文を催促すると、フッと爽やかな笑みを浮かべた栄次が指さす。


「コーラとクッキー。それから、希も」

「かしこまりました」


 栄次から離れて、仕切りの向こう側に行き、そわそわしている希さんに視線を向ける。


「希さん。栄次がコーラとクッキーと希さんだって。コーラとクッキーを持って行ってくれ」

「うん。ありがとう凡人くん」


 クスっと笑った希さんは、手早く注文の品の準備を済ませて、栄次のところに歩いて行く。


「ほら凡人、休憩するのは早いわよ」

「じゃあ、また行ってくる」


 凛恋に笑顔で見送られ、俺は再び座席が設置されているスペースへ出ていく。

 接客なんてやりたくはない。しかし、凛恋が頑張ってと言ってくれるし、みんなも頑張れと言ってくれる。

 愛想良くして人気を集めることは不可能だが、とりあえず無難な立ち回りで切り抜けることは俺にだって出来る。


 開店してしばらく時間が経つと、客足がそこそこ増えてきている。

 萌夏さんのクラスは本格的なコーヒーが売りの喫茶で、こっちは色物の喫茶店。

 喫茶店という点では被っているものの、どうにか差別化出来ているようだ。


「いらっしゃいま――」


 いらっしゃいませ、という言葉が、ほぼ条件反射で口に出来るようになった頃、俺は教室内に入ってきた人物を見て言葉を止めた。視線の先には、石川が居る。


「いらっしゃいませ、ご主人様。こちらへどうぞ」


 完璧な営業スマイルの筑摩さんが、入ってきた石川に接客をする。しかし、その石川の視線は俺に向いていた。


「あの執事に接客してもらいたいな」


 俺を指さす石川はニヤッと笑う。その笑みが何を意味しているかはなんとなく分かる。


「ご主人様、あちらの執事は少し忙し――」

「こちらへどうぞ」


 俺は石川の前に歩み出て、近くの席を手で示す。すると、石川はニヤニヤ笑ったまま椅子に座った。


「八戸を出してくれ」

「申し訳ありません。そのようなサービスは取り扱っておりません」


 石川の注文に、俺は即座にそう返答した。どうせまた、無茶苦茶なことを言って来るに決まっている。


「俺はお客様だぞ? お客様は神様だろうが」

「ご注文出来るメニューはこちらになります」


 石川の言葉を無視し、メニューを石川の前に突き出す。さっさと注文させて食うもん食わせたら出て行ってもらう。


「ホットコーヒーとクッキー」

「かしこまりました」

「そう言えば、ここに犯罪者の息子が働いてるって本当か?」


 教室の中がシンと静かになる。俺はそれに、表情を崩さず口を開いた。


「私がそうですが?」

「そうなのか。それで? 自分の親が犯罪者ってどんな気持ちだ?」

「すみません。親と言っても、物心付いた時には既に居なかったので、親という感覚がありません」

「そっかそっか。親に捨てられたって言ってたなー、そう言えば」

「そうですね」


 俺が真顔のまま答えると、裏から激しい音が聞こえる。その直後、凛恋の怒鳴り声も聞こえた。


「希、離してッ! あいつ絶対に許さないッ!」

「凛恋! 落ち着いて!」


 叫ぶ凛恋を希さんが制する声が聞こえ、俺は視線を石川から外して裏の方に歩いて行く。

 言ってることとやってることは、俺が今まで経験して来た悪口や嫌がらせと大差ない。それどころか、過去最低に幼稚なことだ。だから、いつも通り受け流して、石川が帰るまで我慢すればいいだけの話だ。


「ホットコーヒーとクッキーをお願い」


 クラスメイトの女子に声を掛けた後、俺は凛恋の頭に手を置いて撫でる。


「ありがとう凛恋。さっさと持って行って、さっさと帰ってもらおう。ああいうやつには取り合うな」

「でもっ!」

「あいつには、凛恋が怒った顔を見せるのももったいないからな。ここで大人しく待ってろ」


 準備されたホットコーヒーとクッキーを持って、俺は再び石川の元に戻る。


「ホットコーヒーとクッキーです。ごゆっくり――」


 俺がテーブルに紙コップに入ったホットコーヒーとクッキーの乗った紙皿を置くと、石川はクッキーの上にホットコーヒーを掛けた。


「あっ、ごめんごめん。手が滑った。取り替えてくれ――」


 俺は醜悪に笑う石川の目の前にある紙皿を見る。

 明らかに意図的に紙コップを傾けた石川は、紙皿の上に盛られたクッキーにコーヒーを掛けた。その紙皿の上で、クッキーがコーヒーに浸っている。


「凡人くん!?」


 筑摩さんの驚いた声を聞きながら、俺はコーヒーに浸されたクッキーを食べる。そして、紙皿の上に残ったクッキーを浸したコーヒーを飲んだ。

 全部食べ終えると、俺は座っている石川に視線を落とした。


「帰れ」

「は? 俺はお客様だぞ? なんだその言い草は」


 俺は、俺を睨み上げる石川に、コーヒーで濡れた紙皿を手でさして口を開く。


「クッキーは、クラスメイトが手分けして一生懸命作ってくれたクッキーだ。それにこのコーヒーは、萌夏さんがメニューの相談に乗った時に、提供してくれたコーヒーを使ってる。それに、豆を挽いてくれたのも萌夏さんだ」

「だからなんだ」


 相変わらず悪びれた様子もなく見上げる石川に、俺は堪忍袋の緒が切れて怒鳴った。


「俺の友達が一生懸命作った物を粗末にするやつは客じゃねえッ! さっさと出て行けクズ野郎がッ!」


 石川の胸ぐらを掴んで引っ張り上げ、教室のドアを開けて廊下に放り投げる。そして、ピシャリとドアを閉めた。


「あいつ、人を怒らせる天才だな。全く……」


 受け流そう受け流そうと心の中で唱えて努めてはみたが、目の前でクッキーにコーヒーを掛けられたことで我慢しきれなかった。

 流石にあんなことまでするとは想像していなかったから、俺を怒らそうとしていた石川に負けた形にはなる。


「凡人、大丈夫?」

「ああ、キレちゃったけどな」


 駆け寄って来た執事服姿の小鳥に答えると、俺は裏に戻ろうと歩き出す。

 その俺の横から声が聞こえた。


「あの!」

「はい?」


 ニコニコと笑う、俺と同い年くらいの女性二人組の一人に声を掛けられる。その人は手にスマートフォンを持っていた。


「写真、良いですか?」




「あの、写真良いですか?」

「は、はい……」


 もう何度目だろうか、写真撮影を求められるのは。

 執事喫茶を開店させてから、何人もの客を相手にして来たが、そのほとんどから写真撮影を頼まれている。しかも、女性ばかりからだ。


「身長高いですね。いくつあるんですか?」

「一八七ですね」

「凄いですねー」

「は、はあ……」


 俺は初対面の人と上手く会話なんて出来る能力はないが、なんとか女性に無難な返事をする。しかし、なんでこんな状況になっているのかは分からない。


「はい、チーズ」


 女性客のスマートフォンを持っている筑摩さんはニコニコと笑い、そう言って撮影をする。


「ありがとうございました。あの、連絡先の交換とか――」

「申し訳ございません、お嬢様。私には大切な人が居ますので」

「そうですか……」


 俺は左手薬指に付けた指輪を見せて、女性客の申し出を断る。


「はぁ~……」


 女性客を見送って大きなため息を吐き、俺は仕切りの方を見る。その仕切りの端から、凛恋が顔を出して頬を膨らませて俺を睨んでいた。

 テーブルの上を片付けて裏に行くと、ふくれっ面の凛恋が不服そうな声を出す。


「女の子にモテモテで良かったね~」

「ちゃんと断ってただろ?」

「そーだけどさー。可愛い女の子ばっかりに声掛けられて不安なんだもん……」

「凛恋が世界で一番可愛いって」


 凛恋は本気で不貞腐れているわけではない。軽い嫉妬心を見せて俺に甘えてくれているのだ。

 いつもだったら抱きしめてキスしているところだが、教室で凛恋のキス顔を晒すわけにはいかない。


「多野くん、八戸さん、赤城さん。切山さんが来てるよ」

「ありがとう」


 クラスメイトの女子が教えてくれて、俺は凛恋と希さんと一緒にテーブルの方に歩いて行く。

 すると、ニコニコ笑って手を振っている萌夏さんが見えた。


「繁盛してるじゃん! これも、クレーマーを撃退した執事さんの効果かな?」


 いたずらっぽくニヤッと笑う萌夏さんの言葉に、俺は頭を押さえた。


「石川の話、そこまで届いてたのか……」

「石川が揉め事起こして生徒指導部に連れて行かれたって聞いたあとに、うちのクラスに来たお客様が言ってたのよ。悪い客を撃退した執事さんが居る喫茶店ってここですか? って」

「そうよ。キモい石川を撃退した格好良い私の彼氏兼執事の凡人」


 凛恋がそう言って俺の腕を抱く。その凛恋を見て、萌夏さんが呆れた笑みを浮かべる。


「また凛恋は妬いてるの?」

「だってさー」

「どーせ凡人くんは凛恋以外にはなびかないんだし、ドンと構えてれば良いのよ。さて、執事さん、案内してくださるかしら?」

「おかえりなさいませお嬢様。お席はこちらでございます」


 ニコニコ笑いながら気取った口調で話す萌夏さんに、俺もそれっぽい口調を意識して席を案内する。


「凡人くんの歌楽しみにしてるから」


 席に付いて早々、萌夏さんがからかうように笑って言う。

 俺が引っ張り出された出し物は、男子に人気のある露木先生がピアノを弾き、しかも世界レベルのヴァイオリニストのステラまで出るということでかなり注目されている。

 正直、今でも俺は要らなかったんじゃないかと思っている。


「露木先生のピアノとステラのヴァイオリンだけ聴いててほしいな」

「心配しなくても、凡人くんは歌が上手いから大丈夫だって」

「俺は全くそうは思わない。さてお嬢様、何になさいますか?」

「そうね。じゃあ、ホットコーヒーとクッキーをお願い出来るかしら?」

「かしこまりました、お嬢様。すぐにお持ちいたします」


 ニッコリ笑った萌夏さんにお辞儀をして、俺は裏で注文を待っている女子の元に歩いて行った。




 出番を待つ間、ステージの袖で俺は何度目かの深く大きなため息を吐く。


「多野くんが緊張してるなんて珍しいね」

「俺だって緊張くらいしますよ」


 隣に立っている露木先生がクスッと笑って手で口を隠す。


「凡人は格好良いから大丈夫」

「ありがとうステラ。大丈夫の根拠が全く分からないけど」


 ジーッと俺を見上げてステラが無表情で励ましてくれる。

 励ましの言葉としてはかなり弱いが、無表情でもステラが俺を励ましてくれる気持ちはちゃんと伝わった。


 ステラがヴァイオリンをヴァイオリンケースから取り出すと、ケースの中にイギリス国旗の柄をしたシルクハットを被った熊のぬいぐるみがあった。

 俺が凛恋達とロンドンへ行った時に、ステラへのお土産の一つとして買った物だ。


「多野くん、神之木さん、そろそろ出番だよ」


 そう言った露木先生に視線を向けると、露木先生が嬉しそうに笑うのを見て、俺も緊張が諦めに変わった。

 文化祭と言っても、ずっとクラスの執事喫茶で接客をしているだけだった。でも、目が回る忙しさというわけでもなかった。

 ただ、石川に崩された雰囲気が掻き消えるくらい忙しかった。


 接客中に小鳥が女性客に女子と間違えられ、男子だと否定して分かってもらった後に、今度は可愛い可愛いと騒ぎになった。

 小鳥は可愛いと言われて困っていたが、俺は自分の忙しさが減ってかなり助かった。


 筑摩さんは、相変わらずの愛想の良さに加えて男装した美少女ということもあり、男性客に人気があった。


 露木先生は、先生という立場ながら裏方を手伝ってくれた。

 表にも駆り出されそうになったが、露木先生は真っ赤な顔をして、見回りと言って逃げて行った。露木先生も接客は苦手だったらしい。


 希さんは、凛恋と一緒に裏方として注文された品の準備に奔走していた。

 栄次が来た時は、周りに冷やかされて顔を赤くしていたし、早めの休憩として栄次との文化祭デートに送り出した時は凄く嬉しそうに栄次の手を握っていた。


 凛恋は、裏方で仕事をしながら、時々俺の方を仕切りの陰から覗き見て頬を膨らませていた。

 裏に戻っていく度に、俺だけではなく他のクラスメイトにもちゃんとお疲れ様と声を掛けていた。そういう優しさは凛恋の良いところでもある。

 ただ、やっぱりまだ男は苦手みたいだ。


 文化祭まで色々あった。そして、文化祭でも色々あった。でも、終わりを迎えようとしている今、思い返せば一つの感想しかない。


 楽しかった。


 もう終わりで、楽しかったと過去のものにしてしまうことが惜しいくらい楽しかった。

 今まで、クラスメイトと一緒に文化祭をやるということが楽しいと思える日が来るとは思っていなかった。


 ステージ袖から歩み出て、俺はステージの中央まで歩いて行く。

 体育館の正面にあるステージから見える景色は、見慣れない景色が広がっていた。


 薄暗くなった体育館の床に、所狭しと沢山の人が座ったり立ったりして、みんながみんな、ステージに立っている俺達の方を見ている。

 それは、雰囲気が息苦しくお世辞にも気持ちの良い状況ではない。でも、視線が凛恋を捉えた時、俺の口元が緩んだ。


 凛恋は両手を組んで、まるで神に祈りを捧げるようなポーズをしている。

 俺は今から文化祭の出し物に駆り出されて歌を歌うだけなのだが、まるで凛恋は今から戦地へ赴く戦士を見送る人みたいだ。


「皆さん、こんにちは。音楽を担当しています、露木真弥です」


 隣に立った露木先生が代表して話し始める。


「今回は多野凡人くんと、多野くんの友人であり、天才ヴァイオリニストの神之木ステラさんと一緒に演奏をさせていただきます。演奏曲は、今ドラマの主題歌になっている、砕け、という曲を演奏させていただきます」


 露木先生がそう言ってピアノの前に置かれた椅子に座って構える。そして、ステラは俺から少し離れた場所でヴァイオリンを構えた。

 何で俺が、人前で歌を歌わなきゃならないのか?

 別に俺は歌わなくたって良いはずだ。でも、誘ってくれた露木先生の気持ちはもちろん、俺を肯定してくれた人達のために歌わなきゃいけないんだと思う。


 俺は、ついこの間まで堂々と学校の校門を潜ることさえ出来なかった。

 そんな俺を、また学校の校門を堂々と潜れるようにしてくれたのは、俺のことを肯定して助けてくれた人達が居たからだ。

 だから、少し前まで堂々と学校にも来られなかった俺が、みんなのお陰で堂々とステージに立っても問題なくなったということを見せないといけない。俺は、そう自分に言い聞かせてマイクに近付いてた立った。


 落ち着いた露木先生のピアノ伴奏に、ステラのゆったりと流れるようなヴァイオリン伴奏が重なる。

 少し前まで、伴奏のやり方を宗村さんから厳しく指導されていたステラもすぐに伴奏をマスターした。

 露木先生も音大を出たピアノ技術もあるから、素人の俺では問題なんて指摘出来ない演奏を最初からやってのけていた。


 最後まで上手く出来なかったのは俺だった。


 人前で歌うことが苦手だし、そもそも人前に立つことが苦手な俺は、声を出そうとしても上手く出なかった。

 声を大きく出せば音程を外してしまうし、音程を意識すれば声が小さくなってしまう。

 そのジレンマに陥った俺を助けてくれたのは、諦めず何度も練習を重ねてくれた露木先生とステラ、そして凛恋や友達だった。


「言葉だけ知っていれば、伝えられると思ってた」


 曲調も歌詞も物悲しい。悲恋を題材にしたドラマに合わせて作られた歌だから仕方ない。でも俺は、そんな悲しい曲に不釣り合いな、感謝の気持ちを心に抱く。


「言葉さえ知っていれば、伝えられないことはないと思ってた。でもそれは、僕の勘違いだったんだ」


 言葉を話せれば伝えられることはある。確かに、通じない気持ちはある。

 特に誰かを好きだという気持ちは、一方通行で終わることだってある。でも、この歌はそういうことじゃない。


 俺はこの歌を歌うことが決まって、凛恋と一緒にドラマを見直した。

 ドラマでは、友達同士の男女の恋愛が描かれていた。男の方が、友達の女の子を好きになり、好きな気持ちを伝えることで友達関係が砕けてしまうのを恐れていた。

 その恐れに、俺は身に覚えがあった。


 俺も、ドラマの登場人物と同じように恐れたことがある。

 好きな気持ちを伝えることで、大切な友達を失うことを。大切な友達との楽しい時間を失うことを。


「言葉は知っているのに伝えられない。気持ちは確かに胸の中にあるのに伝えられない。伝えたら……あの楽しい日々が砕け散ってしまうのが分かるから」


 口にすれば、鮮明にあの時の恐れが蘇ってくる。

 友達を、やっと出来た大切な友達の凛恋を好きになってしまった。

 もし、好きな気持ちを伝えれば友達関係が砕け散ってしまう。だから、砕けてしまうくらいなら気持ちを押し殺した方が良い。そう思っていたあの時の気持ちを。


「君の笑顔を見続けるために、僕は言葉を伝えない」


 そう俺も決意した。

 ドラマの登場人物のように、伝えることを諦めて、恋心を諦めて、友情を保とうとした。でも、その時には友情と呼べるほど確かなものはなく、愛情に変わった友情を必死に戻そうと藻掻いていた。


「君と笑い続けるために、僕は気持ちを伝えない。この日々が砕け散ってしまうまで、僕は君に伝えない」


 でも俺は砕けなかった。俺と同じように恐れていた凛恋の勇気によって。それで、今ここに俺がある。


 歌を歌い終えると、スッと重荷が下りたように体が軽くなる。そして、体育館の中には拍手が鳴り響いた。でも、俺はその拍手全てを噛みしめる余裕はなかった。

 ただ、視線の先に、満面の笑みで手を振る凛恋の姿を捉えることに、俺の心全てを傾けた。

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