【五《友達の作り方と確かめ方》】:一

【友達の作り方と確かめ方】


 ファストフード店に二日連続で来ることになるなんて夢にも思わなかった。

 ただ、今日、俺の前に居るのは栄次だ。


 相変わらず降っているしとしと雨が、昨日に引き続いて今日も地面を絶え間なく濡らし続けている。

 窓際の席であるここからも外の様子が見え、水滴の付いたガラス越しに傘を差す歩行者が何人も見えた。


「カズ、八戸さんが風邪で学校休んだって」

「風邪か。赤城さんが見舞いに?」

「ああ、朝、電話で連絡があったらしい。それで放課後は希が見舞いに行ってる」


 赤城さんと八戸は仲が良い。だから、八戸も赤城さんに見舞いに来てもらって嬉しいだろう。


「カズ、八戸さんと何があった?」


 その栄次の言葉に、俺は返答を迷った。何があったかと聞かれても何も言いようがない。俺だって状況を正しく理解なんてしてないんだから。


「希が、八戸さんの気を紛らわすためにメールで昨日カズに会った時の話を聞いたら、話題を逸らされたらしい。何かあったんだろう」

「何かあったんだろうって言われてもな。俺の小中の同級生らしき奴と八戸が知り合いだったらしくて、昨日帰りに会った。そいつがまあお世辞にも良い奴ではなかったな」

「何か言われたのか?」

「俺がどれだけ小中で情けない奴で、どれだけ人に嫌われてたかを話してたな」

「そいつ誰――」

「止めとけ止めとけ。体格は栄次より上だ。それにほっとけば良いんだよ。言わせたい奴には言わせて放置するのが一番だ」


 今日はジュースだけのテーブルに視線を落として、アイスコーヒーをストローで飲む。


 昨日俺はずぶ濡れになったが、八戸は雨に濡れてはいなかったはずだ。だから風邪を引く要素はなかったはずだが。

 ……まあ俺が考えても仕方がない。家に居るならちゃんと安静にして眠ってるだろうし。


「それで、八戸さんは何か言ってたのか?」


 その栄次の言葉に、俺は返答をするよりも前に、八戸の姿がフラッシュバックした。

 顔を覆ってただただ謝る八戸。そして、八戸は涙を流していた。


 八戸が何か責任を感じる必要はなかった。ましてや涙を流す理由なんて一つもない。

 でも確かに、八戸は俺に謝って泣いていた。その理由が俺には全く分からない。


「八戸がそのことについて俺に謝っていた」

「知り合いがそんな奴だったら、俺でも謝る」

「そうか、そういうものか」


 俺は知り合いが知り合いに会って揉めるなんて、そんな現場に出くわした経験がない。だから分からなかったが、あれは八戸の知り合いが俺に失礼なことをしたという意味での謝罪だったようだ。

 まあ、一日経って冷静に考えればそうかもしれない。でもそうだとしたら……。


「栄次。……八戸が、昨日泣いていたんだ。昨日八戸は何も悪くなかった。でも俺に謝りながらずっと泣いていた。どうしてだと思う?」

「どうしてって…………友達が目の前で傷付けられたんだ。女の子の八戸さんには辛いだろ」

「いや、俺は傷付いて無いんだが」

「カズが平気だからって、周りが平気だとは限らないんだよ。カズはそういうことが分からないからダメだ」


 ダメだと言われても、人間関係は俺の最も苦手なことだ。ましてや女子の気持ちを分かれなんて無理難題もいいところだ。


「とにかく、他には何もなかったんだな」

「ああ、特にはなかったと思う」

「カズの特に無かったは信用出来ないんだよな……」


 本人を目の前にして酷い言い様だ。まあ、栄次のさっきの話で、俺の物事の感じ方が他の人よりもズレているのは何となく理解した。


 話が終わってボケッとしていると、栄次がスマートフォンを取り出して俺に見せた。

 そのスマートフォンには、栄次と赤城さんが写った画像が表示されている。

 どうやら最近流行りのプリントシール機で撮ったようだが、その写ってる画像を見て違和感を抱く。

 恐ろしく、栄次が気持ち悪いのだ。


 目はパッチリというか、もうなんか顔のバランス度外視の大きさで、肌は陶磁器かと思うくらい真っ白。更には足が引き伸ばされて、もはや異形の怪物のようになっている。

 これは一体何なのか?

 ホラーの一種なのか?


「これ見てどう思う?」

「怖い」

「どんな感想だよ」

「だって、こんな目が大きくて肌が真っ白で足だけ長い生き物なんて怖いに決まってるだろう」

「これは機械の機能なんだよ。…………まあそんな話をしたいわけじゃなくて、希が同じ画像をみんなに見せたらしいんだ」


 なるほど、栄次はお互いにお互いの友人へツーショット画像を見せ合う仲であると言いたいらしい。

 いわゆる自慢、もっと言えば惚気、流行りの言葉を借りればリア充爆発しろ、という状況らしい。


「みんなに羨ましいって言われたってさ。八戸さんもいいなって言ってたらしい」


 確かに、プリントシール機の誰得機能によって異形の怪物のように仕立て上げられていることを除けば、画像に写る二人は楽しそうで実に幸せそうだ。

 それを見れば、女子は羨ましいと思うのかもしれない。八戸も女子だし、そう思うのも自然なのだろう。

 しかし、もし栄次が俺に同じ反応を求めていたならそれは無理な話だ。俺にはそんな純情さは一欠片もない。


「それで? この画像がどうした」

「カズも彼女欲しくないか?」

「八戸と同じことを聞くんだな。最近、それを聞くのが流行ってるのか?」


 俺が何気なくそう言うと、急に栄次が身を乗り出して俺に詰め寄る。


「なんて答えたんだ!?」

「俺はまだいいかなっ――」

「はああぁ?」


 俺の言葉を聞いた栄次は、心底ガッカリした表情で同じくガッカリした声を上げ、椅子にドサッと腰を下ろした。

 そしてコーラを飲みながら、俺を呆れた目で見る。


「八戸さん今週に入って三回告白されたらしい。一人は刻雨で他二人は他校の奴なんだって」

「すごいな」

「すごいなって……。それで、告白された理由は何だと思う?」

「知らん」

「ちょっとは考えろよ」


 唇を尖らせて不満そうに言う栄次。今日の栄次は何だか面倒くさい。


 八戸が告白された理由、ということは、男の側が何で告白したかということだろう。

 告白するということは、相手のことを、八戸のことを好きだと思ったからだろう。それ以外に理由があるとは思えない。


「八戸のことを好きだからだろ」

「まあそれもだが、他にもあるんだよ」

「……答えが複数あるなら先に言えよ。それに好きだから以外に告白する理由なんて無いだろ」

「八戸さんと希が仲の良いグループって、結構刻雨では有名らしいんだ。可愛い子が集まってるって」


 そう言われて八戸達と初めて会ったカラオケの時を思い出す。

 そういえば派手な女子が多いイメージだけしかなかったが、見た目は綺麗だったり可愛かったりする人ばかりだったような気がしないわけでもない。

 ぶっちゃけ覚えてないからよく分からん。


「それで、グループの人は大抵彼氏持ちで、今彼氏が居ないのは八戸さんだけらしい。それで八戸さんは社交的な人だったらしいんだけど、最近急に遊ばなくなったらしいんだよ。男が居ると」

「そうか」

「そうかって……」

「そうは言われてもな」


 八戸に彼氏が居ないとか、交友関係に変化があったとか、そういうものを俺に報告されてもどうしようもない。

 そして、それに対して何か感想を抱くことも無い。


 八戸のことは八戸だけのものだ。

 周りがあれこれと考えることでも無いし、ましてやそれに対して俺が何かを言うなんてあり得ない。

 それにそれを聞いた俺にどうしろと言うのだ。

 非社交的な俺が八戸に「もうちょっと男とも遊んだ方が良いぞ」そんなことを言えというのか。

 それは客観的に見て滑稽としか言いようがない。


 コミュニケーション能力皆無の人間がコミュニケーション能力の大切さを教えるなんておかし過ぎる。ましてや相手はコミュニケーション能力の高い八戸だ。

 そんなの、ずぶの素人がプロ野球選手に野球を教えようとするようなものだ。


 それに、俺は八戸の涙の理由をまだ知らない。あの涙の原因が分からない。栄次は友達が傷付けられたからと言っていた。でも、それだけだったのだろうか……。


「八戸さんに告白が増えた理由は、周りが思ってるからだよ。八戸さんに好きな人が出来たんじゃないかって」

「何で八戸に好きな人が居るって思ったら告白するんだ? それに八戸は居ないって言ってたぞ」


 そう言い切って、八戸の言葉を思い出す。そういえば八戸は『好きな人は居ない』ではなく『好きな人が居ないということにしてほしい』という曖昧な言葉だった。

 それはやっぱり、好きな人は居るが、そっとしておいてほしいということだったのかもしれない。


「本当に八戸さんに好きな人が居るのか居ないのかは関係ないんだ。周りがそうだと思って、それで八戸さんのことが好きな奴等が焦ってる。このままだと八戸さんが何処かの誰かと付き合っちゃうって。だから告白が増えてるんだ」

「でも、好きな人が居るって分かってて告白するものなのか?」

「ダメで元々もある。他には八戸さんの好きな人が自分のことかもしれないって思うのかもしれない」


 ダメで元々で告白するものなのかという疑問の前に、自分のことかもしれないと思える底抜けのア――ポジティブな奴も居たものだ。


「希が言ってたけど、八戸さんは全部断ったってさ」

「そうか。ところで、何でそんなに八戸の話をするんだ?」


 最初の話は確かに八戸の話だった。でもその後も何かと八戸についての話をしている。

 まあ八戸は俺と栄次の共通の知り合いではあるし、話題に上げやすいのも分かる。しかし、話題に困る間柄でもない。


 俺の疑問を聞いた栄次はコーラを飲む手を止め、俺に視線を向けて口を開いた。


「ただの世間話だよ」


 そんな栄次の反応を見ていると、栄次の後ろから駆け寄ってくる人影が見えた。


「ごめん、栄次。待たせちゃって」

「いや、八戸さんの所に行ってたんだから大丈夫だって」


 駆け付けた赤城さんは息を切らしながら、手に持っていた飲み物を一口飲んで一息吐く。俺はそれを見届けると席を立った。


「じゃあ俺は帰――」

「待てって」「待って!」


 せっかく二人きりにしてやろうと思ったのに、二人共同時に俺を引き止める。


「まだ何かあるのか?」


 立った椅子に再び腰を下ろすと、栄次の隣に座った赤城さんが勢い良く頭を下げた。


「多野くん、ごめんなさい!」


 俺はいきなり頭を下げた赤城さんから栄次に視線を向ける。そして、この状況を説明しろという視線を向けた。しかし、栄次も困ったように笑って首を横に振る。

 どうやら栄次にも、この状況に陥っている理由は分かっていないらしい。


「さっき凛恋の所に行って来て、何があったのか全部聞き出してきたの。全部私が無理矢理聞き出したことで、凛恋が言いふらしたわけじゃないから、だから凛恋のことは怒らないでほしいの。多野くんが小学生中学生の頃にどんな酷いことをされたとか、それから……家庭のこととか、そう言うことを言われたのは自分のせいだって、凛恋……すごく自分のことを責めてて……」


 どうやら八戸は、昨日あの宇治屋から俺が言われたことを赤城さんに話したらしい。それを面白可笑しく言いふらした訳ではないと弁解して、俺の許可無しに聞いたことを謝っているのだ。


「別に気にしなくても良い。実際、俺自身が気にしてない。それに俺は今回の件で赤城さんが悪いとも八戸が悪いとも思ってない」

「……ありがとう」


 赤城さんはそう俺にお礼を言う。だが、その表情は晴れやかなものではない。まだすっきりしないものが心の中を淀めいているような、そんな暗い表情だった。

 しかし、赤城さんのフォローは彼氏である栄次の役割だし、そもそも俺に誰かをフォロー出来るほどの対人スキルはない。


 それにしても、赤城さんにしろ八戸にしろ、今回のことを大事と捉えているようだ。まあ、あの宇治屋という男のように、面と向かって露骨に言ってくる奴は少数ではある。でも、遠巻きからとか、言葉にしなくても態度で、俺へ嫌悪を示す人間は腐るほど居る。

 それこそ毎日学校でそういう人間の前に曝されている。だから、俺は特に気にしているなんてことはない。


 栄次は理解しているとは思うが、多分、赤城さんや八戸には俺の感じ方は理解されないだろう。


 そもそも、悪口を言われれば人は傷付くものだ。俺もそれこそ小学校低学年までは傷付いていた。なんで自分がこんな目に遭わなければいけないんだ。

 そう、この世の理不尽さを恨んでいた。でも、そう恨んでも、悲鳴を上げても、結局変わらなかった。


 そうなると、現状を変えることに注力しても意味がない。だから、俺は自己防衛に切り替えたのだ。


 他人から悪口を言われても、気にしない気にしないとひたすら心の中で念じて耐えてきた。その耐えのおかげで、俺は相手に仕返しする余裕を持った。


 仕返しと言っても、目には目を歯には歯をと悪口を返す訳ではない。昨日のように心の中で相手を見下すのだ。

 それだけで、今まで傷付けられてきた悪口が、ただの喚き声に聞こえる。


 そういう生活をもう何年も続けてきたから、俺には悪口に耐性が出来て、悪口を自分の中で処理することが出来ている。だから、今回のことで傷付いた人は誰も居ないのだ。


「カズ、もし今回のことで誰も傷付いてないって思ってるなら、それは大間違いだからな」


 真正面に座る栄次が重たい声で言う。


「確かにカズは昔から人に誤解される奴だ。良い奴なのに、ちょっとぶっきらぼうだからって嫌われる。そういう生活にカズが慣れてるのも分かる。俺は小学校六年間カズを見てきたしな。でも、その俺でも未だにカズが嫌な奴みたいに言われるのは嫌だ。昼休み、いつも俺が帰った後に色々言われてるのも知ってる。そういう陰湿なやり方も、本当に嫌で仕方がない」


 昼休みのことを栄次は知らないと思っていた。それに栄次が俺のこと、俺に向けられた悪意について俺に話すのは久しぶりだ。それこそ小学校の頃以来じゃないだろうか。


「多野くん……栄次の言う通り、多野くんが大丈夫でも、私も嫌なんだ。凛恋はすごく嫌で辛かったみたい……。多野くんに言われた通りすぐに帰ってたら、こんなことにならなかったのにってすごく後悔してた」

「それは結果的にそうなっただけだろう。八戸が責任を感じる必要はない」


 俺の言葉に、赤城さんは一度だけ深く頷く。


「うん……多野くんの言う通り、凛恋は悪くない。でも……それでも、凛恋は考えちゃうんだ。凛恋、本当に多野くんを大切な友達だと思ってる。そんな大切な友達が傷付けられてるのを見たら、悲しくなる。その原因になっちゃったかもしれないって、悩んじゃう。多野くんは傷付いて無くても、栄次も私も凛恋も、みんな傷付いてる」


 赤城さんはキュッと唇を噛んだと思ったら、手の甲で目をゴシゴシと擦った。


「私と凛恋は、栄次と比べたら多野くんとは付き合いが短いよね。でも、私と凛恋は多野くんのことを大切な友達だとちゃんと思ってる。凛恋は栄次に負けないくらい、ううん、栄次よりもずっと多野くんのことを大切にしてる。凛恋の親友だから分かる。絶対に絶対」

「カズ、俺の彼女を泣かせるな」


 俺に言葉を言い終えた赤城さんがワッと泣き出し、その赤城さんの背中を栄次が撫でる。そしてその栄次が俺に文句を付ける。


「これで分かったろ? カズの友達はみんなカズのことを大切に思ってる。それで八戸さんは責任を感じて落ち込んでる」

「分かった。八戸に責任を感じる必要はないと説明する」


 その言葉を聞いた栄次は満足そうにニヤリと笑った。そして俺は赤城さんに向かって口を開く。


「赤城さん、正直に言うと俺は赤城さんと八戸を友達だとは思ってなかった。それは二人が自分の友達に相応しくないとか、そういう身の程知らずな理由じゃない。逆に、俺が二人の友達として相応しくないと思っていたのが理由だ」


 赤城さんは目を丸くして俺を見て、赤城さんの隣に居る栄次はクスクスと笑っている。

 人が真面目に話をしているというのに、不謹慎な奴だ。


「栄次からどの程度まで俺の話を聞いているか分からないが、俺は小中といじめを受けている。高校でもまあ同じようなものだ。当然、俺の友達は栄次しか居なかった」


 昨日、八戸が泣いた。

 そして今日、赤城さんも泣いた。

 人の涙は人の心を動かすと言うが、俺はその言葉通り動かされた。


 人の胸の内を知るなんて不可能だと、俺は思っている。だから、人は言葉を話すのだと思っている。

 もし、人に人の胸の内を知る能力があれば、言葉なんて必要ない。だけど、人間は言葉を話す。

 それは人が話さなければ伝えられない生き物だからだ。


 だから、俺は話すしかない。

 正直に、伝えなければいけない。

 察するとか感じるとか、不明瞭な何かで誤解をさせるわけにはいかない。


 友達には、ちゃんと俺を理解してほしいから。


「そういう、人から悪意を向けられてばかりの俺は、赤城さんや八戸みたいな、人から慕われるような人達と仲良くなれるとは思っていなかった。住む世界が違う。そう思っていた。だから、そんな雲の上の人達の赤城さんと八戸が、俺と友達になるわけがない。そう思っていた。でも、赤城さんと八戸は俺のことを友達だと思ってくれていた。友達だと思ってくれていたから悲しませてしまった。それは本当に申し訳ない」

「多野くんが謝る必要なんてないよ! 一番傷付いたのは多野くんなんだから」

「ありがとう赤城さん。でも冗談も強がりも無しで、本当に傷付いてない。あの宇治屋って奴の存在も、会った今でも小学校に居たのかどうか思い出せないくらいだ。それに言いたい奴には言わせておけばいい。その代わりに、俺には友達が二人も出来た。正直言うと、その嬉しさしか感じてない。念のために聞くが、友達がこんな奴で良いのか?」

「ああ、俺も希に聞いとかないとな。カズは捻くれてるし、基本鈍感で超が付くほど察しが悪い奴だ。友達としては大変だぞ?」


 俺は栄次を睨み付ける。好き放題言いやがって。捻くれてるは否定しないでおいてやるが、鈍感と察しが悪いなんてことはない。

 常に教室の空気を感じて察して、目立たないようにしてきた俺に限ってそんなことはあり得ない。栄次の方がそういうものには鈍感で察しが悪いだろう。


 俺がムッとしていると、赤城さんがクスクスと笑って目を二度手の甲で擦る。そして、真っ赤にした目でニッコリと微笑む。


「大丈夫。多野くんがどんな人なのか、大体栄次に聞いてるから。それに、多野くんは栄次と私のキューピットだもん! 嫌な人なわけない」


 赤城さんはニッコリと笑った笑顔を隣の栄次に向ける。栄次は少し顔を赤くして、赤城さんに微笑み返した。


「…………なんだ。結局、俺は二人の惚気けた姿を見せられるためにここに居たのか」


 素直な感想を友達二人に放り投げると、顔を見合わせた二人は顔を真っ赤にして俯いた。

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