第21話 君が浮かべる『残酷なこと』ってどんなのだろう


 近所の食堂屋さんが届けてくれた生姜焼き定食と肉卵定食をシェアして平らげつつ、作戦の最終チェックを終えて今や遅しと二人は、父さんトーサンの帰りを待っている。

 ポンピーが放映される曜日は明日なんだけど当日にじゃ遅いから今夜、決行するって決まりました〜。 僕はお出迎えも兼ねた伝令役を買ってで、玄関先にて鎮座しております。


 お出迎えしてあげると父さんトーサンは目を♡型にしてメチャ嬉しいがる。 『俺のことを覚えていてくれるのはドラだけだヨン♡♡』ってね。

 抱き上げてザラザラ頬ずりされるのは迷惑なんだけども、機嫌を良くすると酒の肴のおこぼれをくれたりする。 竹輪とかマグロ刺身とかカツオ節とかね。 なので気が向いた時はしてあげるの。 伝令役はどっちか言うとそのついで。

 門に靴音が止まるまで多分もう少し時間がある。 その間に我が家のテレビ事情をご説明しましょう。



 居間に大きいテレビが一台ドドーンとある。 有機ELってので父さんトーサンご自慢の美しい液晶画面。 これでアクション映画やカーレースを観るとド迫力なんだとか。

 確かに偶に見てる映画は凄いよ、音が。 ゴメンね、猫の僕の眼にはテレビ画面の優劣ってよく分かんないのよ。 因みに好きだ番組もアリマセン。


 そんでね、日常的に映されるのはニュース番組で、しかも某公共放送局オンリーで、稼働されるのは父さんトーサンが帰宅してから寝るまでの間で、朝は点けないの。

 民間局のチャンネル番号はね、真っ黒画面に数字ってのばっかり。 問題のチャンネル権ですが、家長のみが有す特権ってことでまかり通ってます。


 実は広輔コースケにも一日に30分だけだけど、友達たちと同じく流行りのアニメ番組を観ていた時があったんだって。 広輔コースケが見たいってお願いした番組は登録されて、放送時間になると勝手にテレビが点く、つまり予約制だったのね。


 ある日、早目に帰宅した父さんトーサンと一緒に某アニメを観ていたら、たまさか内容が悪かった。

 サブキャラの育ての母が、その子の見てる前で悪者達に無惨に殺されちゃう話だったから。 しかも周りの誰も救おうとしなかった悔しくて悲しい残酷な背景があったから。



 それがあってアニメ番組を父さんトーサンは見せてくれなくなったのさ……って広輔コースケが言ってた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕等たすゴマメがひとり同盟 ももいろ珊瑚 @chanpai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ