第20話 どっかに良い案を落っこちてないかな?


 広輔コースケがずっとウーンウーン唸っている。

 熱に浮かされてる訳でもなければトイレで力んでるってことでも無い。 例の件で良い案が全く浮かばないからである。



 僕を置き去りにしてのお三人さんディナーの夜から、広輔コースケ立案の何策かは試してみてるのよね。

 ご飯のおかずの好き嫌いでごねる案、

 恵梨エリは何でも食べちゃうから失敗。


 母さんを恋しがって夜に泣く案、

 毎晩スマホに電話が掛かってくるし、元来恵梨エリはヨソさんに泊まり慣れしてるってバレて失敗。


 二人が喧嘩とかして仲良くしないで泣かしちゃう案、

 父さんトーサンに『男たるものはうんたらかんたら』なるお説教とゲンコをくらって憐れ広輔コースケは涙目になって失敗。


 これに見て、恵梨エリに僕を追いかけ回させるって案はお蔵入りになったんで助かった。


 広輔コースケが腕組みして考え込んでる横で、恵梨エリは児童向け雑誌に集中している。 なんの事ない、お気に入りのポンピーのマンガが載ってるからだ。


 (あのさ、僕だって同盟の一員として悩んでるんだよ? 少しは一緒になって考えてあげてもいいんじゃないの? ほらこうやって作戦を書き込む自由帳の上に乗っかって温めたりさ。えっ、邪魔だからどいてって? そう? なら退かないコトもないけど……次は恵梨エリの本に移動かな)


「嗚呼もうムリー。オレもう作戦思い付かない。どうしよう」


「それよりね。このお家のテレビはポンピー見れないの? 恵梨の家のは毎週やってたよ?」


「それってアニメだよね? チャンネル設定で民間局は映らなくしてあるし、父さんはニュースしか観ないから」


「〇チャンだよ。火曜日の5時からするの」


「それは民間局だからダメだな」


「ええ〜見れないのぉ〜」


「……ポンピー絶対に見たいよね」


「見たい見たい!」


「見せないならトーサンは意地悪ってことになるな」


「オジサンの意地悪?」


「そう、その作戦でいこう!」


「どんなことするの?」


「ポンピー見れないと泣いちゃうゾ作戦! つまりね……」



 作戦会議が始まった。 今度こそ上手くいくといいんだけどね。


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