第17話 男同士のココだけの秘密ね


 知らせを受け“見守り隊”のおばさんカーサンが二人、救急箱を抱えて丁度その時やって来た。

 事の次第が判らず、泣いてる未来花スエスエとシュンタロウになってる広輔コースケを“何があったの?”という目で交互に見てる。



「もうな、勘弁してやって。怪我は軽かったが、何かあるといけないから。怪我を手当てして貰って、終わったら今日はこれで帰った方がいい。中嶋先輩には俺がいま連絡する。久保のお母さん、消毒と処置をお願い出来ますか?」


「あ、ハイハイ、お願いされますよ」


「そこの水道で砂洗い流してからの方がいいじゃない?」


 もう一人の僕は知らない、ヤンママ風おばさんカーサンが言った。

 んんー何処の国の人だろう? うちのチームメンバーは国籍豊かだからね。

 最近マレーシアから来たって子が居たっけ?

 母さんカーサンがフィリピンから来たって子も居るし、韓国やカナダの国籍を持ってた子もいる。


 皆んな広輔コースケと同じ言葉で話してる。

 僕には何が違いなのか分かんない。

 顔つきやらは少々違うけど、僕と犬や鳥たちほどかけ離れてやしないんだもん。

 ヤンママ風おばさんカーサンは他のおばさんカーサン達より若くて若干、肌の色が濃いめかな?


 そう言えば恵梨エリに似た感じ?

 けど、恵梨エリ母さんカーサンは名前も顔つきもモロ日本人だったし――



「あそこまで僕が背負いましょか。恵梨ちゃん、お兄さんにおんぶされるか?」


「歩けるよ?」


未来花あすかさんも手伝ってくれるかしら? じゃあ後はやっとくから。中嶋君も西塚コーチと行って、帰り支度していらっしゃいな。それから、お弁当も忘れずに持って帰ってね」


「コレもコレも! 猫も一緒に連れてってー。ハイ! どうぞ」


「(なんだか手際がいい)ニャーニャー」


「猫。えとぉ、ドラだったか、鳴いてずにこっちに来い。お前も恵梨ちゃんと一緒に水浴びしたいのか?」


 (それは嫌なので黙って従いますょ)


「それでは後、お願いします。コースケ、行こう」


「……」


 広輔コースケは下を向いたまま歩き出した。

 コーチオニギリも無言で歩く。

 僕も右にならえで黙ってる。

 ……気詰まりな空気が漂っているよね。


 「ストップ」


 と、コーチオニギリが足を止めた。

 それから広輔コースケの頭をクシャっとして、その後に項垂うなだれてる背中をポンと叩いて言った。


「シャンとせんか。恵梨ちゃんと猫を連れて帰るだろ、元気ださんと。まっ! 俺も大人気おとなげなく言い過ぎたわ。あの人は……嫁さんは一寸あってな。俺は傍にいる間の盾になりたくて……。だからさ。コースケの“守ってやらないと”って、漢気おとこぎというかその勇ましい所も理解する。認めているさ」


「ごめんなさい……うっ、うううぅ」


「ぉぃ、泣くのはいいが格好よくないぞ? ここにいる間だけ。声は抑えてナ」


 緊張の糸が切れたんだな。

 しきりに目の当たりを腕で拭ってるのは、泣きべそかいてるからに違いない。

 でも、ちょこっとフォローをいれたりしてオニギリって案外良いやつ。

 流石、父さんトーサンがチームとメンバーを任せた人間、と思う。




「今日はありがとうございました」


「アスカお姉ちゃん、クボ君のお母ちゃん、アニアさん、えっとコーチのニシヅカお兄ちゃん、ありがとうございました」


 大好きなポンピーのカットバンを貼ってもらって、手の甲を満足気に眺めてる、ご機嫌な恵梨エリお嬢様です。

 アニアってさっきのヤンママ風おばさんカーサンが、秘蔵モノを特別に貼ってくれたらしい。

 “ご褒美シール”の代わりなんだってさ。

 ニオイを嗅がせてくれたけど変なのぉ!

 僕クシャミしちゃった。


「お疲れ様でした!」


「はい。おやっとさぁ」


「「「また今度な〜」」」


「恵梨ちゃん、また遊びに来てくれるかな……今日はごめんね」


 未来花スエスエがそっと手を恵梨エリの頬にあて、名残惜しそうに口元を綻ばせた。


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