第13話 ちょこっとマメ知識を披露しませう〜


 やって来ました日陰。 夏の冒険には欠かせないオアシス、日陰ですよ。

 グランドを見渡せる建物の影にレッツら移動したよ。 多分、休憩所ヒルネバショなんだろってそこに陣取じんどってる。

 誰がって? んーと何といえば正解だろう。


 (キレイな? お嬢さんだっけ? お姉サマだ。ん? 合ってる?)

 (なんだって? 聞こえてやしないだろってか、じゃあ仕切り直して)


 ここはチームメンバーのお母さんカーサン達が確保した『見守り隊本部』。

 お母さんカーサン達が自ら『わたしらチーム見守り隊』って命名したそうだ。

 「まんまって意味ですよね?』ってのはオニギリが言ったこと。


 前に見たことあるおばさんカーサンが何人かいる。

 ドリンクポットにコップ、バケツやクーラーボックスなんかを、テーブルに並べて準備してる。

 ビニールシートに、各々のバッグとか水筒なんかが山積みにしてある。 その側に救急箱、と没収されたスマホが入れてある袋。

 お弁当を受け取りに行ってる二人だけ今いないって。


 僕はケースから出して貰って、今は恵梨エリの傍らで思いっきり伸びしてくつろぎタイム。

 首輪はしっかり、ケースの取っ手に伸びたラインで繋がってるけど、適度に伸縮するから苦しくない。


 この《お出かけ用》首輪は、お値打ちモノで、ムリに引っ張ったり、どっかしら引っ掛けたりして強い負荷ふかが加えると、バックルのところが外れる仕組みなのだ。 凄いくない? この機能を一度は確かめてみたい。

 押しちゃダメ!って貼られたボタンの誘惑、と同じだね。


 そうそうあのドリンクポット。

 中に何が入ってるか知ってる?

 メンバーの水分補給用のアルカリ飲料に、牛乳パックで作った氷が浮かべられてるんだよ。

 氷は冷やしながらとけて、メンバーが休憩で飲むときにはイイ感じに薄めてくれる。 濃い過ぎると病気になっちゃうからね。

 だから今すぐは飲めない。

 おばさん達が飲むのは、クーラーボックスの中のペットボトルのお茶。


 でも、お茶もあの中の水も僕は飲めないんだよな、別にドラ用を用意して貰わなきゃだ。 ノドを潤すイカしたドリンクはオアシスに絶対に必要だ。

 ――気のせいかさっきから痛い視線を送られているような。


「ンナァ〜(え〜ナゼに僕は睨まれてるの?)」


「あ、この子はまた。クーラーボックスに入る気じゃ?」


 クーラーボックスの側にいたおばさんカーサンからだった。 そしておばさんカーサンは急いで蓋を閉めた。


「ドラがそこに入ったの?」


「そうなんよ。 まえ来た時この中に飛び込んで、中に入ってる物、飲みもんもおしぼりも替えの氷も全部、毛だらけにしよって大変やった、ほんまに困った猫ちゃんやわ。」


 ナイナイ、それは無いっモーナイって。 もうその中は確認済みだからしないよ〜。

 この前はちょっとだけ知識欲が理性にまさっちゃってさっ、テヘペロ♪


「(スマナイコトでしたっ)ミャン」


 本来、僕はかしこい猫なんだ、デキル猫なんだよ。


「(……恵梨エリもなんとか言ってやってー)ニャッ ニャーン」


「ドラ、どうしたいの?」


「ンナァ〜(わかってくれ)」


 広輔コースケのリュックをカミカミ。

 これに僕のお水と器を入れてくれてる、多分。

 恵梨エリがリュックを開いて中を覗いてる。


「ノドがかわいたのかな? これオヤツ? テレビで見たことある。それとペットボトルも猫の絵だ」


「まあ猫の絵や、中嶋くんのカノジョはほんまさとい子やねえ。面倒見も良さそうやし」


「私はカノジョじゃなく従妹いとこいうんだよって、こうすけがね。ほんまは違うんやけど」


 その話は後でいいんじゃ?

 僕のお水の話がどっかいちゃう。


「コースケくんにもなんか事情があるのね。うん。そうか恵梨ちゃん、よく分かった。ドラにも用意してあげないとね」


 オニギリの嫁さんがそう言って、恵梨エリの頭をポンポンした。



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