第12話 ここにもアタマが上がんないひと発見っ


 広輔コースケたちが話てるうちにグランドに着いたみたい。

 練習をみに連れてきて貰ったことがあるけど、その時と違うグランドなのかなぁ? 前の時は父さんトーサンの車に乗ってたしすぐ着いた気がしたよ?

 長く歩いてたけど、ここで合ってる? 大丈夫? 道を間違えて迷ってない?



「ここが、こうすけの学校? おっきいいね〜」


「オレの小学校は別んとこ。 地域の野球大会で使うから、って来月まで小学校のグラウンドが取れなくなっちゃってさぁ。 ここはコーチが行ってた大学の中にある中学校のグランド。 練習する為、時々借りるの。 わかるかな?」


 そいうことだったか、焦ったぞ。


「よう、コースケ。 中嶋なかしまセンパイが言ってたの、その美少女よかおごか。 抱えてるのも一緒だったの? トリマなんがなし、子守り呼ぶわ。オーイ、嫁さん、ちょっと来て」


 顔がよく見えないけど、このどっかユルいイントネーションはオニギリだな

 オニギリとは期間限定でラグビー教えてる山崎やまざきたつきのこと、鬼のようにしごく、通称鬼ざきオニギリ


 父さんトーサンとは大学の先輩後輩の間柄で出身は鹿児島。 ラグビーするために大阪に出てきたんだって。

 某企業所属のリーグチームにいたんだけど怪我が元で脱退。

 この前おいしい竹輪オツマミを手土産持参で家に来て、泣きべそかいて延々と愚痴ってたのを聞いてたから、そらで言えちゃう。

 因みに今は父さんトーサンの事務所で手伝いしながら就職難民ちぅ。



「遅れてすみません。 こちらコーチしていただいてる山崎さん。 ほら、コーチに挨拶して」


高城たかしろ恵梨えりです。 小学一年生です。 今日はよろしくおねがいします。 それから、この子はドラちゃんです」


お利口だてんがね〜、恵梨ちゃんっていうんだ。 僕はコースケにラグビーおしえてる山崎っていいます。 コースケは練習があるから、悪いけどね終わるまで、おばちゃん達と一緒に日陰で見といてくれるか」


「“オバチャン達”って言った? 『キレイな』の聞き間違いよね? 小学一年生なら六歳かな、しっかりしてるね」


「すまんが、この恵梨ちゃんと……ドラちゃんだったか猫の面倒も頼むわ」


相分あいわかった。 ついでににもそう伝えとくっ」


「嫁さん! ! ははは、何卒ご配慮お願いします……」



 これ何の図?

 オニギリがペコペコしてるこのひとって何者?


「お姉さん、コーチさんのお嫁さん?」


 よくぞ聞いてくれた。 恵梨エリ


「ン〜、“嫁さん”と呼ばれてるけど、お嫁さんじゃないのよね。 私は末廣すえひろ未来花あすか、ヨロシクね」


「未来花さんはコーチの彼女で、未来のお嫁さん候補、なんですよね?」


「オイちょっと待て! 俺、候補なんて言っった? 言ってないよね、何を聞き間違えたんだろなコースケ君、あはははは」


 反応早っ! でも危機管理としては穴だらけだな。


「アンタ、私の他に何人かいるワケ? “候補”ってそういう意味よね。 それは聴き捨てならないわ」


「ちーがーうー。 嫁さん候補はスエスエだけに決まってるだろ。 今度さ、鹿児島に連れ帰っちゃるが、な?」


 広輔コースケはヤブヘビ発言しちゃったみたい。

 オニギリだけじゃなく見てる僕らまでオロオロだ。


「あすかお姉ちゃん、怒らないで」


「そうねぇ〜恵梨ちゃん、ここで怒ってても暑いだけだし。 るゅう! この前の土曜日の合コン疑惑も含めて、話は帰って部屋でしましょ。 さぁドラちゃんも一緒に涼しいとこに行きましょね〜」



 優しげな言い方が寒気を呼ぶ__ゾゾゾ



======


――ちょっと長くなりますが――

生まれた土地を離れ、今時の若者がどこまで、どんな時に、どういった種の方言(言語変種?お国言葉?地域言語?)を使うのか。

(生まれも育ちも現在暮らすのも『なにわ』の)自身の住む土地にしても、地域差や環境・年代等々が影響しますしね。

別の土地だと調べてみるだけじゃ皆目、です。分からない。

不自然な箇所があれば訂正も考えます。


私的には、そのイントネーションやら派生ルーツが魅力的の思えるのですが、その響きのことを“なまり”と称して「それ差別用語で失礼ですよ!」と叱咤され、意識の低さを恥じたことがあります。


ふざけて多用している訳ではない(本当に真摯に考えて)ので。念のため。

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