第10話 ソウソウ。痒いところに手が届くってのナ



「ねえドラちゃんはつれて行かへんの?」


「グランドは暑いの」


「アタシが影つくってあげるよ?」


「猫なんだよ、じっとしてる筈ないだろ」


「じゃあ抱っこしとく」


「ドラは抱かれるの嫌いだから」



 ちびっ子ふたりの問答がずっと続いてる。

 広輔コースケが爆発するのも時間の問題。


「ドラちゃんを一人でお留守番させるの? 淋しがるんとちゃう?」


 おう、よく分かってくれるじゃないか!

 家に誰もいないのはチョー孤独だしヒマwww


「ドラは猫だから慣れてるの。お前……じゃなくて恵梨えりは水筒入れていくカバンか袋ある?」


 あれ? セーフ? キレてな〜い。


「ポンピーのがある」


「”ポンピー”? それ、この水筒入る?」


「入ると思う」


「じゃあ持って来て。入るかどうか試してみるから、入らないならオレが提げて行くよ」


「入るよ、こんなに大きいもん」


「横にすれば入るか……重いかな? 恵梨えり、持ってける?」


「ゼンゼン大丈夫」


「(あのー僕のことはどうなったの?)ナォーン?」


「これがっていうの? タヌキみたいな名前してて。 どう見ても犬だよね」


 僕の話はムシかょ!


「えー、ポンピー知らへんの?」


女子じょしの好きなキャラなんて男子だんしは知らないよっ」


「ポンピーは男の子やのに」


「あっそっ」


「(ねえ僕の話はないの?)ァニャ〜ン?」


「水筒入れてもちょっと間あいてるし、ドラちゃんも入るかも?」


「連れてかないって言ってるだろ、可愛くないな。 ワガママ言うなよ」


「ワガママじゃ無いもん、ドラちゃんも行きたいよね? ここに入る?」


 (キタァー!!!僕もグランドに連れてって〜)


 お出掛けといえばアレだよな。

 『一家に一台、みんな知ってる持ち運べる猫のお家、楽ちんケージ』

 すぐ使えるようリビングの隅っこに、たたんで立て掛けてある。

 からだ全体をすりつけて、おねだりのポーズ開始だ!


「この中がいいの? こうすけ、こうすけ。 コレどうやって組み立てたらいいの?」


「指を挟んじゃうよ! あ~も〜オレがするから」


 広輔コースケったら、いつも父さんトーサンに言われてること恵理エリに言ってら。


「はい、お入り♪ アタシが連れてってあげるから。 うーん、これ重い」


「あのさぁ、持ち上げも出来ないのに連れてくったって、そんなの無理に決まってるだろ。 ドラもその気なの?」


「ミャ〜ン♪(ハイ行きたいです♪)」


 ケージごと僕を持ち上げて、上向いたり下向いたりしてた広輔コースケだったけど、壁の時計を見て急に早口になった。


「お弁当は要らないから……タオルとドラのおやつと水と水筒と濡れテッシュも」


「ウチのカバンは?」


「いいよそんなの、恵梨えりの分もリュックに詰めちゃえばそれ抱えられるから」


 僕、行ってもいいんだね!

 ヤッタ、ヤッタ〜

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