第9話 フェチとは言わない迄もイチオシのニオイって誰にもあるよネ?


 ニオイってのは一人一人違う。

 広輔コースケ広輔コースケの、父さんトーサン父さんトーサンの、僕のは僕のニオイがある。

 父さんトーサンなんて、家にいるのと帰ってきた時とで、ぜーんぜん違う。

 まあ当然なんだけどね。 で、何が言いたいのかって言うと、からだの部分部分にも個人差? 各々特有? そんなのが言えない? って話。


 頭のニオイ、足のニオイ、息のニオイ、耳のニオイ、と各種あって、強烈なのは手のニオイな。

 でも、どうなんだろ。 違って感じるのは誰でもなのかな? たんに僕が優秀なだけとか? 『違いのわかるオトコ、その名はドラ』なんちって。


 で、その僕が一番好きで推奨するのが、膝っ小僧のニオイ。

 父さんトーサンより広輔コースケの方が強くて好ましい。

 そして、それより推しをみつけて今スンスンと酔いしれている。


「いい子やね。仲良くしよね」


「(仲良くすれば広輔コースケにバラさないでくれるのか? なら仲良くしてやってもいいぞ)ミャーオ♪ゴロゴロ……」


「ドラ忘れたのか!なにヨダレたらしてるんだよ!」


 腰にタオル巻いて広輔コースケが出て来た。


 オッといけねえ、ついヨダレが。

 えっとそれで、忘れたって何の話?


「そんなに怒らんであげて。ドラちゃんは可愛くていい子やん。なぁドラちゃん」


「黙れ。いい子なんて今は猫かぶってるだけだからね。ドラとオレは昨日、同盟を組んだんだから敵チームにスカウトの権利なし」


 そうそう! 思い出した”ドウメイ”だ。

 スカート? 女の人が履くやつよね?

 なら権利無いのは男の子の広輔コースケの方じゃないの?


「なに、それ?」


「お前には分からなくていいの、関係者じゃないからな」


「オマエじゃないの、恵梨えりだよ?」


「……恵梨は関係者じゃないの」


「お名前の後ろにとかをつけなアカンよ、ってお母ちゃん言うてた。知らなかった?」


 あぁあぁ、それ言えるんだけど、広輔コースケに言っても絶対ムリな。 子どもにしてるの見たことないから。

 なんせオレ様系だからね広輔コースケ。 諦めてやって。


「お前は一年だろ、オレは五年なの。だから呼び捨てしてもいいの」


「んーじゃあ呼び捨てでええ。こうすけさん早く練習しにつれて行ってえ」


 引き際、早っ!


とか女子みたいでキモイ。オレも広輔でええ……じゃなくていいから」


「ええのん? お母ちゃんとおじさんに怒られへん?」


「いい、オレが許す。だからあっちへ行っててよ。服を着るから座って待ってて」


「うん。わかった」


 女の子が立ち上がって台所の方に移動した。 この子は恵梨エリっていうのな、了解。

 恵理エリが呼んでいるけど、広輔コースケと一緒じゃなきゃ僕は行かないさ。

 例えやさしい声で呼ばれても。

 例えすごく美味しいゴハンをくれようとも。

 例えどんなに魅惑的なひらひらしてる紐の動き……にしっぽピクピク。


「ニャニャニャーン(なぁにっかな〜♪遊んでぇー)」




 結構チョロい子でスイマセン。

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