第2話 不機嫌のキゲン


 広輔コースケは朝、学校って所に行く。

 帰って来るのは、だいたい夕飯ヨルゴハン前。

 ラグビーっていうのをやってから帰って来るんだ。


 いつもどっかは泥だらけで汗だくで、そんなので僕に突撃タックルするんだ。

 こっちはたまったもんじゃないよ


(撫でるのは手の泥を流してからにしてよー)


「コラァ真っ黒コースケ! シャワー浴びて泥を落として来い。 レディ達にそんななりして会う気か?」


(ほーら叱られた)


 でも父さんトーサンはげんこつのフリをしただけで笑ってる。


「わかったよ。 でも俺は疲れてるから行かない」


「そういうと思ってたよ。 高城たかしろさんが気を遣ってくれてな。 娘の恵梨えりちゃんと夕食を用意してくれてるんだ」


 ギョエッ! 急に僕のお腹をムニムニする力が強くなったぞ。

 広輔コースケはチビのくせして何気に力が強い。


(そんなに抱き着くと息出来ないじゃないか、よ、ぐるじいwwww)


「どうして勝手に使わせるんだよ! 台所は母さんの場所だろ!」


「高城さんはな、お前が疲れていて外出するのが面倒だろうと……」


「そんなの俺の知ったことじゃ無い! 父さんの馬鹿!」



 広輔コースケがやっと僕を解放してくれたよー。 で、そのまま階段をダダダダダーって昇っていってドアをうるさく閉めた。

 どうしたんだ? また父さんトーサンと口喧嘩して。

 ここんとこ二人はしょっちゅう親子喧嘩げんかしてる。 何が原因なのかよく分らないんだけどね。


「しょうがねぇな……スンッ」 父さんトーサンが鼻息で溜め息をついた。


「ニャウ?(ねえ、なーんかこの頃、広輔は不機嫌なんじゃない?)」


「ドラ、こっちにおいで。 広輔は後で降りて来るさ」


 降りて来ないんじゃ無いかなぁ?

 さっき広輔コースケが僕を放す時、涙目になってたよ?


「ニャン!(ちょっと行って見てくるよ)」


 そう父さんトーサンに言って僕は階段を走り上った。






【只今の登場人物紹介】


―― 中嶋家 ――


・主人公 兼 語りべの僕『ドラ』

 ……全身がシルバーの長毛種ネコオス、瞳はグリーン

   父さんトーサンに拾われ中嶋家の一員となる

   誰に似たのかヤンチャくれ、ゴミ箱に飛び込みしばしば怒られる

   

・『中嶋なかしま 広輔こうすけ

 ……ドラの無二の友、小学五年生おとこ

   小学生対象のラグビーチームに入っている


・『中嶋なかしま 広樹ひろき

 ……広輔の父おとこ、ドラを拾って育ててくれている

   弁護士事務所を友人と共同経営していて四十歳

   数年前に妻を亡くしてからずっと子連れやもめ


―― 来客 ――


・『高城たかしろ 恵梨えり

 ……小学一年生♀︎おんな、メチャ大阪弁

   この頃よく家に遊びにきている


・『高城たかしろ 深雪みゆき

 ……恵梨の母♀︎おんな、介護士、二十八歳

   相談に行った法律事務所で広樹と出会い親しくなる


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る