第11話 ヤカの町

ヤカの町は異質だ。

鍛冶屋の隣に鍛冶屋。その隣に鍛冶屋。

大工の隣に…もういいや。

鍛冶屋が一番多い。おそらくこの世界で一番の金になるのが武器や防具を作ることなのだろう。


皆が皆仲間の集団というわけではない。隣よりも良い品をと競い合っている。だからか、ものすごく活気に満ち溢れている。

互いが互いを高め合いさらに消費者にとって良いものを。そんな感じがこの町からはする。


商店街って寂れてるものだと俺は思っていた。

シャッターが基本でたまにある店も客は殆どいない。そうじゃないの?すげーよ、ここ!


俺は職人たちの本気を目の当たりにしてワクワクしていた。しかし、マールは浮かない顔をしている。


この町に近づくに連れて表情が心なしか曇っていったんだよな。


「マールどうした?」

「…いえ、ここの職人は気難しい人が多く少し苦手なだけです。申し訳ありません。」


これはこのあと何かあるな。フラグが立った、そう思わずにはいられない返答だ。




船の職人はここだな。

『ヤカ唯一の船大工』

こんなわかりやすい看板漫画かよ!


俺たちが看板の前で立ち止まっていると、

「ん?客か?」

中から小さめのおっさんが出てきた。


「ああ、船を作ってもらいたくて」

「…お前らみたいなガキにやれるもんはない。そらに、人間だな。」

おっさんはジロジロと俺たちを見ながら言った。


「何言ってんだよ、おじさんも人間だろ?」

俺がいうなり、

「我らドワーフ族がお前ら欲望の塊の人間などと同等なものか!それにぺったんこなガキじゃねぇか!帰れっ!」

小さいおっさんは塩を撒いている。


これは地雷だ。どうやら俺は地雷を踏んだ。

踏んだ瞬間どかーんと。


《フラグ回収早くないかい?》


それと、マールがなんとなく乗り気じゃなかった理由もわかった気がした。

ドワーフはよく言えば自分に素直なんだな。

悪く言えばただのセクハラ野郎。


ってかマール胸の大きさ気にしてたんだ…。


《言葉に出さないだけで、君もなかなかだよ?もしかして自覚ない?》

うっ…少し反省しよう。



まぁドワーフはきっと大丈夫だ、漫画ならここから何やかんやあって結局は仲良くなるんだから。

そう、きっと大丈夫。




とは考えたものの、さてどうするかな。

そうだ、ドワーフの偉い人に気に入られれば、

「ドワーフたちの国王っていうのトップの人ってどこにいるか知ってるか?」

「カペラ様…、ドワーフは国を持っていません。それぞれが独立した種族なのです。町を形成して群れているように見えますが、それはただこの場所がドワーフ達にとって暮らしやすく都合の良い場所だから結果として集まっているだけです。」

撃沈。



いよいよ詰みか…。


「船なしで川を渡ることって…?」

「自殺行為です。死体も見つからないでしょう。」


ヘブンズリバー、ねぇ。

リアル三途の川ってことかい。



そういえばあのおっさん、さっき人間は欲望の塊みたいなこと言ってたよな。

欲望の塊じゃないって信じてもらえればいいんじゃないか?


RPGの基本だ。町の人から情報収集する。

すると、何か困っていることがみつかる。

それを解決。みんな幸せ。俺は船貰える。


絶対この流れのやつだ!

良し、

「マール!町の人たちから色々聞いて回ろう!」

俺はやる気が満ち溢れていた。

たくさんのゲームで経験値を貯めてきたからな。

ここは俺の腕の見せ所だ。


俺とマールは店や旅人等型片っ端に話をきいて何かあればその解決に向かおうと決めた。

手分けして話を聞くことに。


「…あ、そうですか、ありがとうございます。」

とはいえ、そんなすぐ情報なんて入らないよな。だいたい村長系から聞けるもんな。

ドワーフに村長はいない…。


「カペラ様ぁ!ドワーフ達が困っていることがわかりましたよぉ!!」

えぇぇ!?



マールが手を振りながらこちらへ走ってくる。


「はぁはぁ…、カペラ様…。あの山、ミスリル鉱山なのですが、強力な魔物が現れるようになってミスリルが取れなくなってきているそうです…はぁはぁ…。」


全力坂を駆け抜けたマールは新たなファン層を獲得したに違いないだろう。


「ミスリルぐらい代わりになるものいっぱいあるだろ?」

「ミスリルはとても希少な金属です。代わりになるものなんてそうそうありません。」

俺のミスリルのイメージは前半の半ばぐらいの街とかで売られている感じだったんだが、違うらしい。


「ドワーフの加工するミスリル製品は特に高値で取引されています。ドワーフに取っては死活問題であると思われます。」


「よし、行こう。」

「その魔物についての情報収集をしていきましょう。怪我したドワーフもいると思います。」

マールはいつも冷静だ。



【ミスリル鉱山の魔物の情報】

—大きな爪で攻撃してくる

—おそらく単体

—怪我した人の中で姿を見た人はいない

—唸り声がする


まとめると大型のタイプで不意打ちしてくるわけね。

ちょっと厄介だな。

なんたって俺はまともな戦闘ってした事ないに等しいんだから…。


でもまぁ、メグナの洞窟調査は約束しちゃったんだし、そのためにもここをクリアしないと。


なんかRPGっぽいじゃん。


《ゲームじゃないからね!死んだら死ぬよ!気をつけて!》




死んだら死ぬとか、意味フなこと言わんでいいわ。



ゲームじゃないか、アニメだったらこんな感じか?


次回!勇者カペラの大活躍!

明日に向かってバーニングショット!!

絶対見てくれよな!




《バーニングショットいいね!期待してるよぉ♪》


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