第10話 幸せの道草
ガラマーラの街に平和な匂いが戻ってきた。
これも魔法で浄化されたウンコなどを飲んだラマム王の功績だろう。
いや、だってあれは可哀想。
まぁ一番の功績は俺だけどね!
リヴァイアサンに頼んだの俺だし!
でも、街の人の話題はあのイカツイ国王がウンコ飲んだってー。ばかりだ。
解せぬ!!
あぁー、でも平和だなー。
「カペラ様、そろそろメグナのドラゴンの様子を調べに行きませんか?」
あ、忘れてた!?ヤカの町だっけ?
「でもあれじゃん?ペガサスでひとっ飛びって。」
「ペガサスは一人乗りで専門の訓練を受けた者しか乗る事が許されていません。だから天馬騎士ペガサスナイトは王直属の部隊なんです。」
王直属でカッコいい乗り物。ちょっと違うけど白バイ隊員みたいなものか?
ま、やっぱり歩きますかなぁ。だりぃ。
《もうわかってると思うけど、君は15歳、移動手段は基本徒歩だよ!》
あー、わかったよ!歩けばいいんだろ、歩けば!
《そうそう、歩けばいいのだよ!若いんだから、ファイト!ファイト!》
「マール、港吹っ飛んだけどどう行く?」
メグナの洞窟は周囲を大河に囲まれていて、渡らないと行く事ができない事は知っている。
ってかどういう無茶苦茶な地形なんだよ!
「船がないと結局のところヘブンズリバーを渡る事は不可能です。まずは船を作ってもらうところからですね。」
マールは神妙そうな面持ちで続ける。
「ただ、川を渡るとなるとそれなりの船が必要となります。国で作ってもかなりの日数が掛かってしまうと思います。」
「それまでまだ足止めか?」
「いえ、早く作る方法がないわけではありませんが…」
「方法があるなら大丈夫だよ。」
「はい、ヤカの町の気難しい職人にお願いすればすぐ出来ると思います…。」
マールの表情が気になるところだが…。なんだ?
頑固親父を口説けるかってところか。
まぁやるだけやってみるか。
俺たちは、ここ要塞都市ガラマーラではリヴァイアサンをも操る凄腕の勇者パーティとしてこの街では見られている。この先何百年も伝説として語り継がれるだろう。
そんな街の英雄が新たな冒険に出るとわかれば放っておくわけがなく…
「勇者さまー!!」
「こっち向いてー!!」
「マールリリーナちゃーん!」
「きゃーーー♡」
街を出るまで黄色い声援の嵐だった。
時々野太い声も混じっていたが、その大半はマール向け。そう大半はね………。
「カペラ様、凄い人数でしたね…。」
マールは旅立つ前に疲れきっている。こんな時は翼を授けなければ、
「ポーション飲む?笑」
「カペラ様…ありがとうございます。でも…
私はまだまだ若いつもりです!」
マールが膨れた。この顔も良き。
《君って好きな子にら嫌がらせして喜ぶタイプでしょ?で嫌われる。》
心当たりはあった…。色々な表情が見たいだけなんだけど。そうか。
「なあ、俺たち勇者なのか?」
「勇者とは勇ましい者の総称です。カペラ様はリヴァイアサンと対等な立場、紛れもなく勇者であると思われます。」
マールのよくわかる解説だった。
「勇ましい者か。」
俺は自分自身で勇者を名乗るのは絶対にしないと心に深く刻み込んだ。
自分で言っちゃダメなやつだわ。
「カペラ様。ここより道が整備されていない未舗装路になります。」
「ん?ああ、見ればわかるけど、それが?」
「はい、未舗装路では今まで現れた魔物とは強さが違うのでお気をつけ下さい。」
道路に結界でも張っているのかな?
「そうなんだ、わかった。でもさ、マール、」
「はい、なんでしょう。」
「俺たち一緒に行動してから結構歩いたけどさ、魔物ってリヴァイアサンしか現れてないよな?」
こんな魔物の現れないRPGは糞ゲー認定されるだろう。
「そういえば、戦闘どころか何も見てませんね。それだけカペラ様の魔力が強いという事ですね。」
俺自身がクマ除けの鈴みたいな存在なのか。
「知性のない魔物は魔力の感知が弱いので実力差無視で襲ってきます。気をつけるまでもないとは思いますが、不意をつかれないようお気をつけ下さい。」
ははは、俺その知性のない魔物スケルトンに殺されかけてるんだよね。絶対に言えない。死んでも言えない。
勇者ってチヤホヤされてる奴がスケルトン相手にゲームオーバーとか…。
《おお!カペラよ。死んでしまうとは情け無い。》
って脳内少女はドラクエ知ってんのかよ!
《これだけ長い間生きてると色々と詳しくなるんだよ♪》
…お前いくつ…?
道中は長い。そして魔物も出ない。
疲れたら休憩。
「お、あった、あった!」
「カペラ様なにを見つけられたのですか?」
「四つ葉のクローバーだよ!」
正確には白詰草ではないのだろうけど、似てるから同じということにしておこう。
「それってなんですか?」
マールが興味を持ったらしい。
「ほらこの辺りほとんど三つ葉だろ?中に四つ葉になってるものがっあって、
それを見つけると幸せになれるって言い伝えがあるんだよ。」
「カペラ様、物知りなんですね!」
いや、俺から見ればマールの方がレベちだけどな。
「はい、マール。これマールにあげるよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
マールは溢れんばかりの笑顔で四つ葉のクローバーを分厚い本に挟み始めた。
「…その本なに?」
「押し花にして大切にしようかと…」
なんだこのピュアな女の子は!!
「いや、そうじゃなくてそんな重そうなものいつも持ち歩いてるの?」
「あぁ、この本ですか?これは魔法の教本です。時間がある時はいつでも勉強しておかないとカペラ様の足手纏いになってしまいますからね。」
少し申し訳なさそうに言っている。
「カペラ様と一緒にいると街の外でも普通のお散歩で楽しいですね!」
俺はもうちょっとRPG満喫したかったけど、これはこれでいいかもな。
「あぁ、マールは勿論。世界の、みんなの平和のらために俺がやるから。大変な旅になるかもだけどよろしくな!」
《くっさーー!!街の臭いが君の心に染み付いちゃったんだね。臭いよ!臭い臭い!刺激臭!》
ヤカの町が小さく見えてきた。
そういえば人間は試される的な事を脳内少女が言ってたな。
《あ、そうそう。よく覚えてたね!偉いエライ!》
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