第7話 ガラマーラ改善計画

俺たちは2日かけて要塞都市ガラマーラに帰ってきた。

たったそれだけの間で街の空気が変わっていた。ってか肥溜めのような鼻につくこの…

臭い…。




「おお、あのリヴァイアサンを退治してくれたんだってな。ご苦労。」

ラマム王は俺とマールそれぞれに声を掛けた。

リヴァイアサンのことは既に知られていたが、何があったかなど詳しいことは知られていないようだった。


「ヤリースポートで人的被害がなかったのは何よりだ。」

人的被害〝が"と言っているのは普通に損失はでかかったのだろう。

道中マールと話していたが、港修繕費が約700億ピール。軍艦5隻で約1200億ピール。

ざっとこれくらいは俺が吹っ飛ばした。

さらに貿易港としての顔も持つ港だ、経済的損失は計り知れないだろう。


「あの、そのことなんですが王様、それ俺が…」

俺は自分の放った魔法がすべてを焼き尽くしたこと。リヴァイアサンがブチギレた理由。

そして、下水逆流のこと。全てを包み隠さずに話した。


「ある程度はわかってる。リヴァイアサンを退治するのに犠牲はつきものだ。もしその場で追い払うことが出来ていなければもっと甚大な被害になっておった。カペラよ、其方の働きに感謝するぞ。

なぁに、壊れたものはまた作ればよい。」

おうさまぁ・・・ありがとう!


てっきり莫大な損害賠償とか求められるんじゃないかと、生きた心地がしてなかったんだよ。



「ラマム王、よろしいでしょうか。」

マールの報告タイムが始まった。


「軍艦と軍港を失い我が国の戦力は相当な痛手を負っています。」

「そうだな…。」

「今一度マクドス王国と停戦を結んでみてはいかがでしょう?」

「確かに今の現状は他国にまだ気づかれてはいない。ここで先に動くのも悪くなかろう。」

「停戦協定を結んだ上で、すぐ破棄するようなことがあれば国際的に痛手を負うのは向こうです。」

「わかった。ただちにマクドスへ使者を出せ!」

王が声を上げるとすぐに使者がマクドスへ向かい出発した。


馬…に翼、ってペガサスまでいるんかいっ!


使者は高らかと飛び去った。


「それと、王もう一つだけよろしいでしょうか?」

「まだあるか、マールなんだ。言ってみろ。」

「リヴァイアサンによる下水逆流は公衆衛生の面で非常にまずいです。このままだと疫病などが蔓延すかもしれません。」

「・・・そうだな。」


「魔導士を総動員し浄水に当たらせるのはどうでしょうか。停戦が結ばれれば工面することも可能であると思われます。」

マールはすごい。俺では考えつかないような問題点を挙げては解決策まで用意している。

頭までいいのか。


あと胸が大きければ文句なしなんだけどぺったんこなんだよなぁ。もったいない。


マールの進言によりガラマーラは動き始めた。

俺も何か言わなければ…。


「王様、浄水がしっかりできるようになったらまたリヴァイアサンと話してみるよ。」

「なんと、そんなことが可能なのか?」

「あぁ、だって俺とリヴァイアサンは仲良しだからな!」


ジャイアンの横で威張っているスネ夫の気持ちってこんななんだろうな。

今の俺からは無敵オーラが漂っているに違いない。


「カペラ様、そのような事まで考えられていたなんて流石です。」



俺たちは謁見の間から出ようとした。


「ちょっと待て、マール。」

王の声が響いた。


「マールよ、たった数日見ない間に雰囲気が良くなったな。その髪飾りも似合っておるぞ。」

「お褒めに頂き光栄です。」


マールは俯き加減で答えたが、顔を赤らめているのが横にいた俺からははっきりと見えた。






「なあ、さっきリヴァイアサンと話すって言ったけどさ、普段アイツどこにいるの?」

「ミカゲ海溝付近の海底寝殿にいるとの伝説がありますが。」

海底寝殿ってこっちから行くのは無理だな。どうすっかなぁ。


《リヴァイアサンを呼びたいなら大丈夫だよ!リヴァイアサンは呼ばれればどこにでも行くよ。そういう人なの。》


久しぶりの脳内少女がまともなアドバイスをくれたじゃないか。

なるほどね。


「まぁリヴァイアサンの件は俺に任せとけって!」






程なくして要塞都市ガラマーラとマクドス王国の停戦協定は結ばれることとなった。

調印式はまだ先らしいが、これでラマム王もガラマーラの事だけに目を向けられるだろう。


魔導士が集まって浄水を完了させれば、リヴァイアサンも海に流す事を許してくれるだろう。




《ねーねー、キザ男くん!君はマールの事どう思ってるのー?》


脳内少女が全く関係ない事をほざき始めた。

バカか。異性として人を好きになってしまうとその先にあるのは絶望だけだぞ。

俺の経験がそう言っているんだ、間違いない。


でも、そう聞かれると何故か意識してしまうのは悲しいかな。男の性なんだよ。


俺は頭を左右に振って両頬をパチンと叩いた。



《可愛いし仕事も出来るし凄く良い子だよねー★》


そう、あとはおっぱい大きければ言うことなしだったのにね。

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