第6話 リヴァイアサン
《まずいよ、まずいよ。リヴァイアサンの周囲の水が立っている時はビッグウェーヴが来る前兆だよ。》
ビッグウェーヴ?大波か?
風が吹いたら回せ!ってか。
なんて呑気なこと考えている場合じゃなさそうだな。
「死ねぇ!」
リヴァイアサンの口から放たれる水。
俺たちのそばに都合よくあった岩場にぶつかった。
は?まじ・・・?
岩が木っ端みじんに。
こんなのアニメでしか見たことないって、無理無理無理無理!!!
アイツやべぇよ、まじで。
マールも目をまん丸くしている。こんなの見せつけられて冷静でいられるかって。
「なぁマール、魔物ってだいたいこんな強さ?」
俺は小声で聞いた。
「いえ、完全に桁違いです。」
あ、やっぱり…。
「ふはははは、我の水鉄砲を躱すとは、お主なかなかやるな。」
いやいやいや、動けなかっただけですから!
躱してませんって。
ってか水鉄砲とか可愛い名前してるくせになんだこの威力。
せめて横文字のネーミングとかにしてくれよ。
忠告受けたビッグウェーヴではないのにこの強さどういうことだよ。
ビッグウェーヴが来たら…。
これは本当にまずいな。
リヴァイアサンは攻撃を躱された(と感じているだけだが)ことに何やら楽しそうだ。
表情がないのに何故わかるかって?あの尻尾(尾びれ?)見れば一目瞭然だ。
ぶんぶん♪
めっちゃ振ってるし・・・!!!
やばい、ちょっと可愛いかも。
「マール、まだヤリースポートに人が残っているかもしれない。そっちを助けに行ってくれないか?」
「でも、それじゃカペラ様は…?」
「アイツは今俺たちと戦いたいみたいだからさ、ほら。」
リヴァイアサンを見るようにマールに促すと、
ぶんぶん♪
「あ、可愛い。じゃない、確かに戦いたそうですね。」
俺がアイツを引き付けておく。頼んだよ、マール。」
マールは頷き、港の中へと走っていった。
さてと、
「おい!リヴァイアサン聞こえるか!」
「なんだ小僧。」
「なんで港を襲ってるんだ?理由があるんだろう?」
まずは、話し合いで解決…できたらいいなぁ。
「なぁーに、簡単なことよ。宣戦布告されたから返り討ちにしてくれてるだけのことよ。」
宣戦布告って、この桁違いの魔物に…?正気か?
「なぁ、本当に宣戦布告されたのか?」
いくらなんでもあり得ないだろうと思い聞き返した。
『海を汚さないでね♡ リヴァイアより』
なんだこの標語…。
それに小学生が夏休みに書くようなクリーンアップの絵は…?
「こんなに丁寧に我がお願いしたというのに、返事がないどころかそのまま海を、自然を汚し続けておる。これはもはや宣戦布告と同等。」
リヴァイアサンは誇らしげに見える。このポスター会心の作なんだろうな。
波は非常に穏やかになっている。
こんなバカでかい奴がそこにいるってのに、逆に気持ち悪いくらいだ。
「俺は出来ることならお前と戦いたくないんだ。」
《あ、やっちゃった…。》
こんなタイミングで脳内少女?
「お前…?今、我に対してお前って言ったな?」
《リヴァイアサンは「お前」呼びがすごく嫌いなんだよ。これキレてるよー。こわいよー。がんばれー!》
他人事だな…。ってまじか・・・。
「いや、その、言葉のあやっていうかなんていうか。」
「我には神より賜ったリヴァイアという名があるのだ。それをお前などと呼びおってぇぇぇぇ」
「・・・ごめんなさい。」
「うむ、悪いことをしたら素直に謝る。それでいいのだ。」
話の分かる魔物で助かったぁ…。
《リヴァイアサンはねぇ、怒らすととても怖いから、みんな恐れて「さん」付けで呼んでるんだよ。覚えといてね!》
〝リヴァイア"さんなのね。
「で、あのーリヴァイアサン。できればあなたと戦いたくないんですがー…。」
「あぁ、そのことね、それは出来ん。宣戦布告をしたのは人間側だからの。」
「やっぱそうですよねぇ。」
俺はかなり下手に出ている。お前呼び以外にも逆鱗に触れそうで恐ろしい。
「まぁ、でもお前がそこまで言うのなら考えんでもないぞ。」
急に可愛い感じになったな。
「我を楽しませるのだ。そうすれば取り合えずは帰るとしようじゃないか。」
「楽しませると?」
「うむ。ここ200年ばかし激しく動いていなかったから体のあちこちが痛いんだよ。ちと楽しませてくれ。」
これって戦闘フラグ立ったよな。
やっぱ俺死ぬわ…。
港の外にマールが出てきた。両腕を頭の上に、大きく丸を作ってぴょんぴょん跳ねている。
避難完了したってことか。
にしても動きが可愛らしい。彼女はきっと男のツボを知っているのだろう。
にまぁってしちゃうじゃんか!
流石大学生、経験値が豊富だ。
「余裕な顔つきだな。そちらからかかって来ていいぞ。」
リヴァイアサンの一言を合図に俺は動いた。
えぇーい、こうなりゃもうやけだ!
「…炎の精霊イフリートよ、汝の力我に与えたまえ…」
俺は唱えた。初めて唱えた。さっきのマールの真似だけど…
メラとかファイアとかは叫んだことあるけど、こんなセリフは初めてだ。
「いっけー!」
はったりの声。しかし、、、
はぃ・・・?
リヴァイアサンを中心にヤリースポート一帯が業火に包まれた。
アルマゲドンでも降ってきたかの如くの見たことのない火柱の数々。
マジ…かよ…。ははは…。
マールがこちらまで駆け寄ってきた。
「すごい!すごいです!カペラ様!」
興奮しているのか俺に抱き着いてきた。
しかしだ、まぁその、思春期の男子に女の子が抱き着くものではない。
「やったな、マール!」
俺は前かがみになりながら答えた。前かがみにならないと俺の成長した息子が激しい自己主張をしてしまう…。
「ぐわっはっは、いきなりそんな強力な魔法で来るとか殺す気か!」
リヴァイアサンは首の骨をバキバキと鳴らしながらさらに続けた。
「我に炎耐性がなかったら間違いなくお陀仏だったぞ。まぁ四天王の一人水をつかさどる我だから平気だけど。」
ぶんぶん♪
かわい…いや、楽しそうだ。
「まぁ約束だからな、今回は帰るとしよう。ただ海が汚されるのもあれだから、流れてくる下水を逆流させるとしよう。がっはっは!」
ん、今さらっと恐ろしいこと言わなかったか…?
「逆流って…」
「お前もあれだろう。見ず知らずの他人に自分の家を糞尿で汚されたら嫌だろ?」
「まぁ、確かに。」
そりゃそうだな。そんなことされたら発狂するわ。
「だから海に流れてくるものはしばらく持ち主のところへ返すだけだ。」
「そんなこと出来るのか?」
リヴァイアサンはにやりとし、
「四天王の一人、このリヴァイアに出来んことなどなーい!ぐわっはっはっは」
ぶんぶん♪
得意げだな。
「あとあれだ、その、なんていうか、カペラよ。たまには遊びに来てやっても構わんぞ。」
何だよこの展開!!
「今度は土産を持ってくるからなー」
そう言うなりリヴァイアサンは海中へ消えていった。
《リヴァイアサンと仲良しになったね!》
確かに、アイツは悪い奴じゃなさそうだな。
「カペラ様…。先ほどの魔法でヤリースポートが全壊でございます。」
港だけじゃねーよ。あれだけあった軍艦どこ行った?跡形もなくなっちまってるじゃねーか。
「俺らが乗る予定の船は・・・?」
「大変申し上げにくいのですが、焼失しております。」
「リヴァイアサンの報告も兼ねてガラマーラに帰りましょう。」
「帰りは休み休み行こう、マール…。」
行きとは違い帰りの足取りは物凄く重かった。
「なぁ、マール…」
「はい、何でございますか?」
「下水の件なんてあの王に伝えればいい?」
「ラマム王は嘘が大変嫌いであります。ありのままに伝えなければカペラ様の命が危ぶまれます。」
「そうだよな、はははは…」
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「カペラさまー!港はもう大丈夫でーす!」
私は大声を上げてカペラ様に伝えたが、リヴァイアサンの吐息?鼻息?の音が大きすぎて聞こえていないようだった。
どうしよう…。
私、テレパシーは使えないし。よし、こうなったら、
私は両手を頭上に持っていき大きな丸を作った。
それでも気づいてもらえない。私が小さいからか?
それなら、
ぴょんぴょん、、、ぴょんぴょん
少しでも大きく見えた…はず。
カペラ様気づいて下さい。マールは恥ずかしさで死にそうでございます…。
あ、いま目が合った!
チャンスだ、やった…。
私がリヴァイアサンとの戦闘にサポートに入ろうにも実力差がありすぎて邪魔なだけというはすぐわかる。
遠巻きに見ることしかできない。本当に強いものの中ではこんな弱いのか。
こんな足手まといでは旅の邪魔になってしまう。もっと強く、強く、強くならなければ。
そんなことを考えていると目の前に信じられない光景が広がった。
何これ…?炎の魔法…?
こんなの見たことない…。リヴァイアサンが炎に飲み込まれていった。
ということは、これがカペラ様の魔法?
すごすぎる…
わかってはいたけど桁違いの実力…。
私はカペラ様のもとまで走っていた。
「すごい!すごいです!カペラ様!」
あろうことか私はカペラ様に無意識に抱き着いた。
何やってるの私のばかーーー、あぁぁ恥ずかしい…。
その後しばらくカペラ様の動きがおかしく、何かもぞもぞしている感じ。
次の魔法の準備か何かかな?
リヴァイアサンはカペラ様の魔法を正面から受けたのにほぼ無傷だ。
四天王の一つだけあってやはり強い。
しかし、今の私は強いリヴァイアサンよりも可愛いリヴァイアサンが目についてしまう。
ぶんぶん♪
何あれ、すごく可愛い。持って帰ってペットにしたいぐらい。
でも大きすぎるなぁ。小さくならないかな?
魔法の鍛錬あるのみかな。時間が空いたらカペラ様に魔法の秘訣や魔力の解放など色々教えてもらおう。
今度出会ったら捕まえられるくらい強くなってるからね。
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