第5話 ヤリースポートへの道


お!やっぱり似合う!

俺は自然と笑顔になっていた、と思う。


「あの…付けてみたんですが、どうでしょう…。似合っているでしょうか…?」

なんだこの初々しい表情、

「めっちゃいい!」

心の声が漏れてしまった。髪飾りもいいが、それ以上に表情がグッド!


「ありがとうございます。少し恥ずかしいですが…。」

うん、ベリーグッド!



「よし、行こうか。」

「はい、ヤカの町は方角としてはここから北なのですが、ヤリースポートからヘブンズリバーを遡上するのが良いかと思います。」

なるほど、土地勘なしだから全くわからん。


「港までは道も整備されているので夕刻までには着くと思います。」

また、行軍か…。一人でないだけナンボかましかな。




あと半分くらいか。それにしてもガラム平原はなんもなさすぎだろ。

こんな平らで広い土地日本だったら放っとかないよ、マジで。

右見ても地平線、左見ても地平線、なんなら前見ても地平線。後ろはガラマーラの街が見えるからまだ景色としてはいいけど。


三方の景色は変わらない。変わっているのは後方の街が小さく見えるのと、お天道様の位置ぐらいか。



石畳の道がなければ方向感覚死んでるな、完全に。

地図が読めないとかのレベルじゃなく、純粋に遭難できるレベル。人類の叡智が命を救ってるって実感できるわ。


道とか建物とか当たり前だと思ってたけど、そうじゃないんだな。



ってかさ、何回も馬に乗った人とすれ違ったり追い越されたりしてるんだが…。

ツノ生えていたから、ユニコーンか!?

あの王様、馬ぐらい寄越してもいいだろうが!!


《ユニコーンに乗るには免許が必要だから無理なんだよぉ。免許は18歳以上からだよ》


おいおい、マジかい。


俺がユニコーンを見かけるたび恨めしそうな視線を送っていると、

「来年であれば私でもユニコーンの二人乗りできたのですが、まだ免許取り立てでして。申し訳ありません。」

少しションボリした顔つきのマールだ………


ユニコーンもニケツするのに免許取得から一年とかあるのか、、、、、、



って、ぇぇえええ!!




「マール!今何歳なの?」

「私ですか?もう少しで19です。」


、、、、、19歳!!いや、まだ18か。ってそれでも!!


同じくらいだと思ってたのに歳上!?

俺まだ中学生だぞ。マールは大学生!?

まぁ、あっちの世界での話だけど。


それってすげー大人じゃん!

おいおい、今までタメ口聞いてたけど大丈夫なのか…?剣も魔法も腕利きっていうし・・・。


「あの…マール…さん…?」

「ん?カペラ様、どうされましたか?」

マールは笑顔で返した。いや、不敵な笑みに見えた。


「あの、その、舐めた口聞いていて、その、すいませんでした!」

俺は深々と頭を下げた。


「舐めた口・・・ですか??」

マールは目を大きく開いてキョトンとしている。

「だって、その、歳上に対して無礼でしたよね?」

「・・・!?あはは、カペラ様は今まで通りのカペラ様でいいんですよ。

年齢とか関係ないじゃないですか。先に生まれていても弱ければそれまでです。」

はぁー、そういうものなのか。


「それに…、いいえ、なんでもありません。」

マールの顔が少しだけ赤らめたように見えた。


何を言いたかったんだろう。

学生やってた頃はこんな発言があればウザ絡みしかしなかったけど、今の俺はそんな野暮なことはしない。

そう、俺も大人だ。



《なに?なにー?それに、なんて言おうとしたのー?気になるー!教えてー!ねえ、聞いてよー!ねぇってばー!》


そう、こんな感じに…っておい!脳内少女のくせに、ひとの会話を盗み聞きするな!

俺だってなんて言おうとしたか気になってるわ!





「カペラ様、ヤリースポートが見えて参りましたよ。」

やっと着いた。ん?


なんか様子がおかしくないか?

横をチラと見ると、マールも険しい表情になっていた。


俺でもわかるくらい何かまずいことが起きているに違いない。



「これは…急ごう。」

「…はい。」






…なんだあのバケモノ…。

ヤリースポートには軍艦なども多数停泊しているが、その全てが玩具に見えるほど巨大な海蛇?龍?とにかくシーサーペント系の魔物が港を襲っている。



「あの魔物は…、

リヴァイアサン!?」

《リヴァイアサンだよ》

マールと脳内少女がハモった。マールには聞こえてないらしいが。


リヴァイアサンだと?ハイレベルな召喚獣とか、ラスト前のボスクラスの奴じゃねーか。


どうする…?


やれる…のか…?



「…炎の精霊イフリートよ、汝の力我に与えたまえ…」

マールが唱えると、掌から火球を出しリヴァイアサン目掛けて飛ばした。


おおっ!これが待っていた魔法だ!

雨避けのアレはちょっと違う。うん。



リヴァイアサンに直撃したがダメージは微々たるものだろう。奴はこちらを睨みつけてきた。

と思うなりすぐ、

「我の邪魔をする者はお前たちか?」

脳内に響いた。いつもの少女の声ではない。凄みの効いた声だ。

チビったことはマールには内緒にしておこう。



リヴァイアサンの周囲の水が一気に迫り上がっていく。

間違いない、怒りを勝っちゃったな、コレ。

俺まだスライムしか倒した事ないんだけどな…。

最初のボスって大体その後ザコ敵で出てくるような奴じゃないの?

リヴァイアサンなんて絶対コイツしかいねーじゃん…。



あぁ、これ死んだな…。

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