第3話 要塞都市ガラマーラ
《これが要塞都市ガラマーラだよ。おおきいねー♪》
着いた。長かった。
休憩等なしで行って片道半日。こんなに歩けんわ!
《しかもスケルトンにやられたもんね!》
うるさいっ!
ガラマーラの大きな門は閉ざされている。
まぁ、開けっ放しではこの城壁なんも意味なさないし普通だろ。
ってか、今の時代学校でも校門閉めてるしね。
そういえばこっちの世界に学校てあるのか?
門番の衛兵が一人一人身分チェックを行っている。
人…以外に多いな。
《人間からの目線でも魔物にもいい魔物と悪い魔物がいるんだよ。》
つまり、人と見た目が違うだけで目的は一緒。生活するために働いている魔物も多いってことか。
多文化社会ってとこか。
《よくわからないけど、たぶんそんな感じ。》
適当だな…。
「テポ村のカペラ=トラクトです。」
「テポ村出身だと!?」
「ざわざわ、ざわざわ………」
明らかに衛兵の顔が変わるのが分かった。それに伴い周囲も慌ただしい。
なんだ?テポ村だとまずいのか…?
「カペラ様、こちらへどうぞ。」
様?なんかやけに丁重に扱われるな。
一体なんだ?
「あのー、俺はどこへ連れて行かれるんですか?」
「陛下がカペラ様をお呼びです。」
国王が?俺何かやらかしたか?
通された部屋はレッドカーペットが奥まで伸びている。その横には石像、甲冑、石像、甲冑交互に並べー!男女男男女女男女男女みたいな感じか。この世界では誰にも伝わらないな。
なんて周りを見渡していた。
急に玉座に光が灯された。
「お主がテポ村から来たカペラとやらか。」
明らかにヤバいオーラを纏った男が話しかけてきた。
《ガラマーラのラマム王はいい人なんだけど嘘が大嫌いで、噓つきはすぐ処刑しちゃうんだよ!》
おい、そんな奴が国治めてもつのかよ!世の中嘘つきだらけじゃん。
ってかコイツはマジでやべえ。自分の登場にスポットライト使うくらいだよ。舞台か何かかよ。
玉座に座っているのでこいつが間違いなく国王だろう。
俺は、粗相があれば命はないなと本能的に感じ取っていた。脳内の情報が無くても同じ行動を取るだろう。それだけやべぇ。色々な意味でイッテヤガル。
「メグナの洞窟は知っておるな?」
メグナの洞窟は流石に知っている。ドラゴンが巣食うと言われる洞窟だ。
「最近様子がおかしいので是非腕が立つお主に見に行ってもらいのだ。」
え?
「腕が立つって…、俺はただの旅立ったばかりのペーペーですよ。」
俺は正直に答えた。
「いやいや、そんな武器も道具も何も持たずに旅に出る弱者はいないだろ。謙遜はいらん。」
ははは…、なんてったってスケルトンに全部持ってかれたからな…。
「軍を派遣したのだが、何も音沙汰がないのだ。これは最悪の事態も考えねばならん。
お主はテポ村出身とのこと。この件は恥ずかしながら強者に頼むしかないのだ。やってくれるな?」
王の目が冷たく、そして鋭くなった。
ここでノーとでも言えば俺の命は間違いなくないだろう。兵士に剣を構えられているからな。
「…わかりました」
俺の選択肢はイエスしかなかった。
そして、衛兵の剣は降ろされた。
「おお!引き受けてくれるか!では、カペラ殿頼むぞ。」
王は笑顔になった。
「さすがに他所の村の者を一人で行かすわけにも行かんのでコレを持っていけ。あとコイツも連れて行ってくれ。」
王はジャラジャラ音の鳴る袋をくれた。
中身はお金だろう。この場で開封するなんてことはしないけど。
《顔…満面の笑みがこぼれ落ちてるよ…。》
「お呼びですか、ラマム国王。」
現れたのは歳は俺と同じくらいか。可愛らしい顔立ちの少女だ。涙ぼくろがいい味出しているが、胸はほとんどなし。残念。
「マールリリーナ、このカペラ殿と共にメグナへ行き様子を調べて参れ。」
「は!かしこまりました。」
「カペラ殿よ、マールリリーナは女だが、剣も魔法も腕が立つ。旅の供として使ってくれたまえ。」
「マールリリーナ=ドルギオンです。カペラ様、よろしくお願い致します。」
マールリリーナは深々とこちらに頭を下げた。
「ああ、よろしくマールリリーナさん。」
俺はスケルトン(ごとき)にやられた事で強者認定されてしまった。
…それにしてもテポ村出身だからなんだっていうんだ?
「あの、マールリリーナさん。」
「なんでしょう?それとマールリリーナではなくマールで構いません。」
丁寧な返答であるがこの先もこれだと疲れるな。
「俺たちこれからどこ向かうの?」
「メグナの洞窟ですが、そこまでは険しい道になるでしょう。まずはここから北の職人が集うヤカ町に行くのはいかがでしょうか。」
《ヤカの町は腕利きの職人がそろっている町だよ。初めての人間は特に試されるから気を付けてね♪》
は?
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「マールリリーナ、死んだお前の父君、サムソンの遺志に捉われる必要はもうないぞ。」
ラマム王は私に諭すように仰った。
「いえ、陛下に仕えているのは父の遺志ではなく私自身の意志です。」
私は父が戦争で亡くなってから、父の代わりに私が強くなって国を守ると思い精進してきた。
今ではこの国の1.2を争える能力まできている。
「サムソンは優れた戦士だった、そしてお前もサムソンに負けず劣らずの力がある。」
王と父の話は小さい時からよく聞いている。
「しかしだ、サムソンの娘というのは我が娘同然。いつまでもこんな柵に捉われず、お前には自由に生きて欲しいのだ。」
王の目は家臣へ向けるものではなかった。私が娘同然という事は本心なのだろう。
もとより、王は嘘が大嫌いである。だから王のこの言葉にも偽りはないのだろう。
「間もなく世界を変える男がここに現れる。お前も感じてるだろう、この桁違いの力を。敵か味方かは正直わからんが、間違いなく世界を変える。お前はこの男と供に旅に出てみてはどうか?」
「…私の任務はなんでしょうか?」
「任務などない。世界を見て参れ。そしてその後の事は自分で決めるのだ。
ここに戻ってくるもよし、その男と一緒にいるもよし、全く違うところに行くもよし。
マールリリーナ、お前の人生はお前が開いていくものだ。」
「…わかりました。」
ラマム王…。無慈悲な人とよく言われるが決してそうではないと私は知っております。
マクドス王国との有事の今、戦力を一つ放棄するのは無慈悲な人にはできないでしょう。
私の葛藤は今に始まったことではない。しかし、外の世界を見てみたいという欲求も確かにあった。
王のこの計らいに心より感謝します。
そして、未来を、人生を前向きに捉えて歩んで参ります。
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