第15話 スーパーライダー一花様

「こんにちは!教習所で会いましたよね。ここで何をしてるんですか?」

「くた‥」

俺は、咄嗟に手を伸ばして北極姫の口を塞いだ。

「ん、んんー!ぷふぁ!いきなり何すんのよ!?」

「お前が、いきなり『くたばれ』て言おうとしたから止めたんだよ。女の子に言うような言葉じゃないだろう」

「幼気な女の子の口を掌で押さえるのはやっていいの!?あと、『くたばれ』て言おうとしてません!」

「じゃあ、なんて言おうとしたんだよ?」

「く、クタクタに煮込んだ後に美味しくいただいてやるよ!てな」

「苦し紛れだな」と俺は、馬鹿にするように言った。

「う、う、うるさーい!」

北極姫は、大きな声で顔を少し頬を赤らめさせながら言った。

「あの、取り組み中だったんですか?」

小鳥遊紗羅は、上目遣いで少し小さい声で俺の方に向いて言ってきた。北極姫のほうを向かなかったのは、何か危機を感じたのかな。何にしろ彼女は正解を選んだんだ。じゃなかったら、バイクで轢かれていたかな。いや、気のせいか。

そう思っていると北極姫は、小鳥遊紗羅に向かって、重い口を開き目を大きく開きながら冷たく言った。

「あなた、そんな所に突っ立っていて轢き殺されたいの?」

気のせいじゃなかった。こいつは、本当に轢き殺しそうだな。

小鳥遊紗羅は、一瞬何を言っているのかを考えた後に、自分の言う事を考えている。

「えーと、冗談ですかね?」

普通は、そう思うよねー。でも、多分北極姫は、本気だと思うよ。とそっと心の中で呟く。そして、北極姫の頭を後ろから『ベシッ!』と叩いた。

「痛い!何するのよ!」

「優しくしろ!」

「あの、私なら大丈夫ですよ」

「いや、こいつが失礼な態度で悪態をつくのが悪いから謝らなくていいよ」

「悪くないやい!」

「もう、毎回めんどくさいな!お前は!」

「ふふふ」

俺と北極姫のやり取りを見た小鳥遊紗羅は、クスクスと笑っていた。

「どうしたの?」

「いえ、やっぱり仲がいいんだなって。二人の息があっていて面白かったです」

「そうなの?」

見ていて面白いという感想は意外だった。外から見たらそんな風にこの会話は、聞かれているのか。

横を見るとつまらなさそうな顔をしている女がいた。笑っている時は、可愛いんだけどな。勿体無いなと思った。

そう思っていると、つまんなそうな顔をしている北極姫の口が不服そうに開いた。

「それで、あなたは何しにここに来たの?」

「あ、今日は学校で授業があって、今はその帰りですね。そっちは、何をしていたんですか?」

「このスーパーライダー一花様がこのネクストスーパーライダーの男にバイクの座るポジションや姿勢についてレクチャーしていた所よ!」

自信満々で鼻につくような言い方で喋っている。こいつたまに、カタカナ言葉多くなる時が多いな。どこかの都知事の全盛期みたいだ。その内『密です!』とか言い出しそうかな。いや、それは、ないか。

「そうなんですか。もう篤士さんは、買うバイク決めたんですか?」

北極姫は、『そうなんですか』の七文字で軽くあしらわれた。北極姫よ冷たくされる気分はどうだい?

「あー、一回こいつとバイク屋でバイク見てきたんだよね。その時に何個か目星をつけて置いたんだよ。小鳥遊さんは?」

「私は、もう決めていますよ!知りたいですか?」

「知りたくないです!この世で最高のバイクはninja一択デス!」

北極姫は頑なに断ろうとしている。

「あー気にしないで応えていいよ」

「ふんっ!」

そうして、北極姫は、腕を組んで頬を膨らませた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る