第12話 歯に衣着せぬ

俺は、単刀直入に聞いてみた。

「なんで俺たちに関わろうとするんですか?キャナ座衛門2世さん」

「ふーん、そうだな。それを話すには、先に2年前の冬の朝の話からしようか」

ダメだ。この人すっごく、めんどくせぇや。

「いや、その辺の話は、全部はしょいでもいいです」

「早く話しなさいよ!豚野郎!」

「豚野郎ではない!キャナ座衛門2世であーる」

「名前がめんどくさいのよ。『キャナ座衛門2世』でしょ?何その名前、和風なのか、洋風なのか分からないぐらい中途半端なのよ。もう、縮めてキャナイツーでいいでしょ」

なんだその変な名前は!?

「別に構わないが」

『いいのかよ!自分の名前のプライドはそこまで高くないのかよ!』と心の中でツッコミを入れたがギリギリ声には出さなかった。

「じゃあ、キャナイツーて呼ぶわね。よろしくクソキャナイツー」

「呼んでもいいが頭にクソはつけるな」

「じゃあ、うんこつけるね。犬の糞がいいかしら?」

「大して変わっとらん!それに、汚いからレディーがそんな口の聞き方するもんじゃない!最近の女は、はしたない!」

話が変な方向に進みそうなので、ここで話の進路を修復しよう。とりあえず、この人のことは、キャナイツーて呼ぶことにしよう。

「あの、キャナいツーさん話を元に戻しますね。なんで俺たちに関わろうとするんですか?」

「面白そうだからかな」

その発言を聞いて俺は、心の中で無表情に近いような憐れみと怒りと時間を無駄にしたという気持ちを込めて思いっきり『ただの迷惑な人だ』と言った。あれだ、高速道路で煽り運転してくる人ぐらいめんどくせぇ。あと、映画館で携帯電話マナーモードにしてないぐらいめんどくさい。とにかく、迷惑でめんどくさい人というのが伝わればいい。

気持ちを切り替えよう。俺の堪忍袋はプッチンと切れた。

「今日は、もうご飯も食べたので帰りますね。それじゃあ」そう言いながら席を立った。

「行くよ」と北極姫に言うと満更でもなく頷いてくれた。席を同じタイミングで離れる。

「ちょっと待った!冗談だよ!ボーイ!マジで冗談だから!口からで任せ並べっただけだからね!お願いっちょっと待て!」

必死に食い下がる様子は、彼女に必死に『別れないで!』とせがむ哀れな彼氏のような醜態を晒していた。

横を見ると眉間に爆弾を抱えている様子の北極姫がいた。そして、彼女は、すぐに周りの目を気にせずに罵詈雑言を吐いた。

「うるさいわねっ!近寄るんじゃない豚野郎がっ!今の時間世界で一番無駄な時間

だったわ。私たちも帰るから、お前も早く家に帰って永遠に寝てていいぞっ!じゃあな。飛べない豚はただの豚だから、どこか手頃なビル探して、そこから飛び降りなさいね」

ひでぇ言い方だな。と思いながら心の中では、同意している。俺も、うんざりしている証拠だ。

「んんー」とキャナ座右衛門2世は黙りこんだ。


「じゃあな」と別れを告げて俺と北極姫は食堂から出た。今回は北極姫の度量に助けられたかな。北極姫のような、毒舌に近い、歯に衣着せぬ物言いは、めんどくさい奴から離れる時にすごく役に立つことが分かった。

しかし、この男との関係がここで終わるのではなく、長い付き合いになることを誰も考えていなかった。というか、考えたくなかった。

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