第8話 緊張すると女の子は可愛くなることがある

バイク屋でその後も話した結果、俺は250T Rを購入することに決めました。これでよかったと言えるのかな。まだ答えはわからないが現時点では満足している。なら良しとしよう。まぁ、乗るバイクも決まったから、あとは免許だけだ。

免許を取るまでの間に俺の250T Rの色々な手続きや車体の整備はゴンザレスがやってくれる。

その時に「ニトロを使えるスイッチ付属させるか?200キロ超えると人生観変わるぞ!」と言われ「ワイルドスピードじゃねぇんだよ!」とツッコミを入れたことを鮮明に覚えている。

さてと、こんなことを思い出しながら、俺は今何をしているかと言うと教習所で記念すべき第一回目の教習を受けている真最中である。

第一回目というのは、「適性検査を受けた後に軽くバイク跨ぎましょう」ぐらいのものだと北極姫から聞いていたのでそこまで身構えてなかったが、思ったよりガッツリバイクに乗ってるじゃねぇか!北極姫よ!

結構初めからガンガン乗らしてくれるのは嬉しいが、「僕まだ初心者何ですけど!!」と言えるわけもなくビクビクしながら教習用のバイクに跨った。

「はい、じゃあ、ハンドル握った後にまた降りて、始めからもう一度ノルマでの動作を通してやってみましょう」

『はい』と俺を含めた今日初めてバイクに乗る人たちは心もとなく返事をした。大丈夫か俺‥。

俺は、緊張を解すために、周りを見て見ることにした。すると、自分以上に緊張している人がすぐ隣にいることに気づいた。

「ううううううううううううううう、私は死なない、私は死なない、私は死なない、大丈夫こんな所で、私は死なない!」

俺よりも5センチぐらい背が低いショートカットの女の子がそこで発狂しかけていた。これは、見ていて面白いやつだが本人は真剣なんだよな。

「はい、じゃ次、小鳥遊紗羅(たかなしさら)さんと兎和篤士(とわあつし)さんバイクに乗ってください」

『はっ、はい』と初心者丸出しで二人して情けない声をあげてしまった。この子もそうだろうが頭が真っ白になっているだろう。

こんな時に僕には、必殺技がある。それは‥

「あれ、どうしました兎和さん?」

俺は、息を少し吸い込んだ後に声を出した。

「すいません。全部頭の中が空になったのでまた教えてください!」

必殺「また聞く」だ。恥のへったくれも無く分からない事があったら人に聞く。これが一番手っ取り早いし確実だと18年間生きてきて導き出した答えだ。小さなプライドを捨ててどうにかなるのなら安いものだ。これは、賢く生きていくための処世術である。

「仕方ないですね。それではまた教えますね」と20代後半ぐらいの見た目の女性の教官は優しく言ってくれた。全く楽勝だぜ。

「小鳥遊さんは、大丈夫ですか?見るからに緊張してますけど‥」

見てみると顔面蒼白でヘルメット中で目が泳ぎまくっていた。これは、こっちが心配して緊張しそうになるようなほどだ。だけど、なぜだろう緊張して困っているのにその姿が可愛く思っている自分もいる。

俺は、新しい性癖を開きかけたのかもしれない。どんなのかは自分でも分からないが、新しい萌えポイントを見つけて少し嬉しい。

「あ、あの、私も頭が空になったのでまた教えてください‥」

「仕方ない、また教えますので二人とも一緒にやりましょう」

俺の第一回目の実習はこんな感じで始まり、無事終わった。

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