第7話 250TR

「250T R?初めて聞く名前ですね」

「まぁ、S S(スーパスポーツ)が好きなお前からしたら眼中にないような力がなく、扱いやすさを重視したバイクだからな。知らないのも仕方ないよ。でもちょっと前は、こいつも人気があったんだぜ」

「おしゃれなバイクですね。なんというか、かっこいいよりもかわいいていう言葉の方が似合いますね」

「そうなんだよな。だから俺みたいなガタイのいいアメリカの男よりも日本人の方が似合うバイクだよな」

「このバイクの『KAWASAKI』のマークの会社てことは、北極姫のバイクと同じなの?」

「そうだよ!日本が誇るバイク会社「川崎重工業」のバイクよ!その精悍なデザインは世界中にファンがいるのよ!」

「その通りだ、本当に日本は、良い国だよな。世界に名を誇るバイクメーカーが四つもあるんだから。本当に日本は技術の国だよ」

「ゴンザレスさんでも素直に褒めることがあるですね」

「俺を何だと思っているんだ!」

「無鉄砲なアメリカ筋肉バカ‥」

「よし、表に出ろ、ハーレイでミンチなるまで轢いてやるから」

「やめて、二人とも!喧嘩しないで!篤士もそんなこと言わないで、これからお世話になるんだから!」

『ふん!』そう言って二人とも顔をそらした。

しかし、このバイクは気に入った。細身でスリムなボディーは、自分好みだし、取扱いやすそうなハンドルもいいし、何より値段が手頃なのが良い。

今の俺が買うなら、このバイクだな。てかこの店で買えるバイクはこれしかないんだよなー。

このバイクとの出会いは、神様からの贈り物だと思うことにしよう。

そんな、感じでゴンザレスにそっぽを向きながらも、目をキラキラとさせて250T Rを見ていたら北極姫が言葉をかけてきた。

「このバイク気に入ったの?」

「うん、中々良いと思っているよ」

「ふーん、良いんじゃないの。私もこのバイク気に入ったわ。特にこの「KAWASAKI」のロゴがいいと思う」

「「KAWASAKI」のロゴてそんなに良いのか?」

素朴な疑問を投げかけてみた。

「うん、人気は高いと思うよ。KAWASAKIのバイクは、特に男性に人気があるわね。私は女だけど精悍なデザインが気に入って今の「ninja」に乗ってるわ」

「『ninja』ってあの乗ってきたスポーツタイプのバイクのこと?」

何も知らないことが、ばれそうだがこの際知らないことは全部聞いておこう。

「そうだよ、あのバイクは世界で一番かっこいいと私は思っているわ」

「S Sと普通のバイクて見た目以外に何が違うの?」

その発言でゴンザレスがマウントを取りに来た。

「そんなことも分からねぇのか、仕方ない俺が教えてあげよう!」

「いや、あなたは良いです」

こんな時は、きっぱりと断る方が良い。

しかし、俺の発言を無視してゴンザレスは話を続けた。こいつ止まらない。

「S Sは、レーシングように開発されたバイクで、各バイク会社が至高のエンジニアを集め開発した、最先端なエンジンを搭載した最高の性能を持つバイクのことだ。新しいモデルが出る度に内容がアップデートされてるからそれを調べるのも楽しみの一つだな」

「ちゃんとバイク屋みたいなことするんですね」

北極姫は、失礼なことを何食わぬ顔で言った。さすがだ。

「あー、次にこのお前が今見ている250T Rみたいな『ネイキッド』て言われるタイプは、言ってみれば町を走るためのバイクだ。俺のアメリカンもそうだがスピードを出すことよりも、その操作性やデザインに魅力があるバイクと言えるだろう。あと、S Sと違って前傾姿勢じゃないから長時間乗ってても疲れないからツーリングに向いてるな。説明はこんなものだろう」

「ゴンザレスさんてちゃんとバイク屋だったんですね!」

「そうだよ、俺を何だと思ってったんだよ!」

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