三千世界特急

三千世界の全盛期に燦然と

特急は怪異を乗せ

回送では妹兄いもせの逢瀬

一等級の米と六文銭を取引して

公明正大なる最前線での俸禄

こめかみでトークンを回転させる


三千世界特急の車窓から

シャガールの想像力を罵倒する

バリトンのショーガールの粗相で

アイデンティティ問題の幕が上がる

平身低頭に平時のモルダウへと

投身して零時のトレンドを飾る


三千世界は特急の加速度におのの

仁王の過不足ない応答に

懊悩する過労死の亡霊

老子の教えがほうれい線をふさいでも

生前の負債の帳消しでは風采は上がらず

特急の風圧で粉砕される霊魂と後悔


三千世界特急は燦然と行く

悠久の時間を時給無量大数で

汲汲と働く牛頭と馬頭

心配するなと皇帝が

業を珍しく肯定するも

小遣い程度の口頭で終わる


それにしても残念

三千世界の特急は

人の世のことわりの外である

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る