詩集 山脈原器
小林素顔
摂氏一兆度
摂氏一兆度のダイオードの施主は
ちょうど世襲によって太陽王とな
り、お隣から臭ってくるヨードチ
ンキに狂う崇徳帝とチークダンス
でくるくる回って箪笥にチキンを
ストックした。摂氏一兆度によっ
て一応どのメーカーにも対応せし
めた夜に界面活性剤を流し込んで
かつ政財界をガスコンロで加熱し
カエルの如く至らしめ革命を呼び
掛けてみたものの、三田―御成門
間をチャージできずナルシストも
ジャージで改札に立ち尽くす。摂
氏一兆度を観察してチフスに感染
するも関連書物には消耗するリッ
プスティックの事で充填されてお
りスローモーションをきっかけに
切符を終点まで買った。摂氏一兆
度によると大手町に寄ろうと神保
町で降りようと託宣は信じないほ
うがいいらしく鷹ファンらしく水
道橋で日本シリーズに随行しよう。
摂氏一兆度の日本に切り替えてい
く覚悟はあるか、各号にはキャス
トパーツが付属して創刊号は三百
円。まあつまり不都合が無い限り
惨状は変わらない。腐れ縁も切れ
ない。空想の綺麗事が薫る東京ド
ームで故郷のチームを応援するく
らい嗚咽が止まらないことはない。
遠回りな人生をそこはかとなく思
う。摂氏一兆度に触れてみて分か
ることは、無い。気がふれる前に
消えて無くなることだけ、分かる。
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