昊誓・理央 13歳

「昊誓ー、縁祭り行こー」いきなりインターホンが鳴ったのに驚き、そのインターホンから聞こえてくる理央の声に驚くと言う驚き方をしたこの年の縁祭り。

俺の学校の立場は仲のいいい人がいないわけじゃないけどこういうお祭りとかを一緒にまわる時に誘ってもらえない。そのぐらいの仲の人しかいなかった。この年に中学に上がったと言ったイベントがあったとかいう言い訳はこの田舎じゃ通用しない。そもそも中学に上がったところで中学受験した人しか同じ学校だから。元々理央に依存してた。いつも俺のことを引っ張って外の世界に連れ出してれだしてくれた理央に。この年の縁祭りもそうだった。一人で縁祭りに行った時にクラスの人に会ってボッチじゃんとか思われるのが嫌でどうしても行けなかった縁祭りに誘ってくれた。

「ちょっと待ってて、着替えるから。」着替えながら俺の体を見ると脂肪も筋肉も最低限しかついてない体が目に入った。普段から動き回ってる理央に普段体育以外で全くと言っても過言じゃい程動かない俺が筋肉の量で負けるのは仕方のないことなんだけど悔しかった。


自分の体を眺めていたら思っていたより時間が過ぎてしまっていて焦って準備を終わらせた。時計を見ると5分程度過ぎてしまった。

「お待たせ。」急いで階段を駆け下りて、ドアを勢い良く開けたから外まで焦ってるのが聞こえたと思う。「いや、いうほど遅く無いから。」呆れた顔の理央がいた。

「じゃあ、行こうか」「昊誓、昊誓が仕切ってるとなんか悔しんだけど」不機嫌といった顔で膝の関節の少し下を蹴られた。痛かった。この痛みはよく覚えてる。今でもよくやられるし。「なんだよ、痛いな。」「だってなんか悔しかったんだもん。しょうがないよ。」文句を言う為に理央の方を見ると笑顔の理央がいた。今も怪しい女心を理解することがこの時はもっとできてなかった。「なんで人のこと蹴って笑顔なんだよ。遂にサイコパスになったのか?」今ならこんなことは言わない。自信がある。「は?違うし!」「なんで怒ってんの意味分かんないだけど。」言い合いながら歩いていると縁祭りの会場に着いた。

この年は特に縁祭りの独特のにぎやかさ、空気感が心地よかった。「あーなんかどうでもよくなってきた。」俺がそんなことを言い出すと理央も同調してくれた。「お詫びとしてチョコバナナ一個で許してやろう。」笑いながら、去年の気まずかった空気を無理矢理吹き飛ばすようにじゃれ合う。


結局花火が咲くころにはチョコバナナを五本奢らされた。そしてチョコバナナを美味しそうな笑顔で食べる理央を横目に花火を眺める。そんな久しぶりの充実した縁祭りの終わり。

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