16年目の縁祭り 

この縁祭りはいつもと違う。屋台が違うわけでも、縁祭りの規模が違うわけでもない。理央の格好も白色のTシャツに膝上丈のズボンという普段の私服。ただ俺と理央の雰囲気と距離が違うことしか違いがない。理央との距離は腕を振るたびに手の甲が当たるぐらいに近い。恋人に最も近いけれど恋人ではない距離。「私たち、大分大きくなったよね」理央が言う通り小さい頃はここは大きな一つの世界に見えていたのに、今は小さな世界の一部にしか見えない。未知がないはワクワクも無ければ恐怖もない。変わらない、不変のもののようなものだと思っていた、去年までは。

「まあ、俺らも大きくなったてことだよなー。まあ理央のチョコバナナ好きは変わらないけどな」「別にいいじゃん。あれうまいんだもん。あと私の体はカロリーを欲してるの。部活の練習の後に自主練習やるの超きついんだからね?あと、こんぐらいでグチグチ言ってるとモテないからな。」「俺がモテないのは今更だろ。余計なお世話だ」俺より理央の方が圧倒的にモテているを知っている。

実際今だってすれ違った大学生ぐらいの男の人が振り返っていたからこれは身内票とかではない。

「昊誓はなんか食べたいものないの?せっかく、年に一度の縁祭りだよ。」「生憎、俺は理央と違って食欲がすべてじゃないんだわ」「は?現役JKに向かって何言ってんだし」

多分理央と縁祭りに二人きっり、それもこの横に少し腕を振れば当たる距離感でくることはないと思う。だから最後の思い出作りに理央とたわむれる。理央をからかったり理央と一緒になって楽しんだりした。気づけばいつも、俺たちが花火を見ていた神社に来ていた。


今日の昊誓は変だった。やたらと私に絡んでくるし歩いてるところも普段の距離の半分も離れてない。この祭りが始まるまで覚悟が出来てなかった。昊誓の幸せを願ってるとか言って私を思るために言い訳をしてるだけだった。昊誓の事を幸せにしてくれる人がいいな。この質問には今はこう答えられる。昊誓とずっと一緒にいた私以外に誰がいる。私がバスケで勝てるようになったのは努力をして、何度も試行錯誤したからに過ぎないだろ。何時から挑戦もなしに結果を悟れるほど頭が良くなった。今の私の格好は普段の私服。何も特別感はないけど私達の関係だとかしこまっても気まずくなるだけだからこれでいい。

「昊誓、ねえ。もし私が『ドン』」話を始めた所で花火がなった。いつも通り一拍花火がなり始める。「付き合えって言ったら付き合ってくれる」花火で昊誓の横顔が照らされる。花火の音はうるさいけど昊誓の声は不思議とよく聞こえた。



「昊誓、来年の縁祭りは可愛い彼女にチョコバナナ奢れよ。」「いやだよ。理央はチョコバナナ無限に食べるんだもん。一本は買ってやるから2本目からは自分で買え。」

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16年間夏祭り 牛寺光 @511150380031011075

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